#25 精霊ジャスミン
#25 精霊ジャスミン
ランクが通常よりも上のジャスミンには、もしかして精霊が宿っているかもということだが、他の二人にはランクの違いがわからないので、とりあえず回復薬を作ってみて違いを探ろうということになった。
「まずは何をするんですか?」
「そうねぇ。使う部分は花だけだから、花と茎の部分をわけて、それから。。。」
ということでウィズの指示に従って作業を始める。
茎と花を切断し、花から成分を抽出するために花弁を取ろうと手を触れた瞬間。
『痛ったーい!!』となにか小さな光が花から飛び出してきた。
「「「!?」」」
『ちょっと何すんのさ!』と言うと同時に光が一瞬大きくなると小さな精霊の姿を表す。
「光の珠が喋ってるです!?」とシラユキが言っているので、俺以外は精霊の姿形までは見えていないようだ。
「えっと、あなたは精霊さんですか?」
『そうよ!せっかく人が気持ちよく寝ているところだったのに、花弁をちぎるなんてひどいじゃない!』
プンプン怒っているが、可愛らしい。
「すみません。まさか本当に精霊がいるなんて思っていなかったので。」
『って、あれ?ここどこですか?』
とようやく自分がいる場所が森ではなくなっていることに気づいたのか慌て出す。
「あー、俺が採集して持ってきたんだよ。ここはジャニュアの町のウィズさんの家だよ。」
『な!私を採集したですって!そんなバカな話。。。人には見えないようにしていたのに。』
と話を聞くと、普通の人には見えないように魔法をかけていたので、それで安心して寝過ごして、気付いたらここだったと。
「もしかして、それはランクAになると効かないんでは?」
『えっ!あなたランクAなの!?そんな、ここ数十年そんな人いなかったのに。それにもしかしなくても、私の姿が見えてます?』
「それは、まぁはっきりと。宝石のように透けて煌めく羽がキレイですね。」
『うー。どうやら本当に見えてるようですね。。。ということはあなた精霊眼もランクが高いんじゃないんですか?』
「精霊眼?初めて聞きましたけど、たぶんランクAです。」
『?よくわからないけど、それなら納得だわ。うーん。でもそっちの二人は見えていないのよね?』
「ほぇっ!?はっ、はいです。」
とあたふたとシラユキが答える。
そんなに慌てなくてもとは思うが、精霊というのは九十九神のような物で身近にいる神聖なものとして扱われているから、そんな存在から話しかけられたなら仕方がないのかもしれない。
『ふーん。まぁいいわ。それで私に何か用かしら?』
「いえ。。。」
と、単にランクSで珍しいから取ってきただけで、回復薬にしようとしていたことを伝えると。
『なっなっ。バカじゃないの?そんな事していいと思ってるの?』と散々怒られた。
「まぁまぁ、仕方ないではないですか、我々は薬草に精霊が宿るなんて知らなかったのですから。」
とウィズがフォローしてくれる。
いや、むしろ回復薬にしようと言ったのはウィズだから、お前も怒られろよと思うが。。
『ふん。人属も無知になったものね。』
いや、100年前も精霊に会うことなんて無かったのだが、この精霊は何歳なんだろう?
「ということは、昔は精霊と交流があったりしたんですか?」
『そうね、人属と交流があったのは500年ぐらい前になるのかしら?確かに交流は無くなったけど、私たちの力を借りて魔法を使ってるでしょ?』
そう言われたらそうだ。自分もサラマンダーの力を借りて[ファイヤーボール]を使った。
「そうでした。でも実際に精霊に会うことなんて無かったし、実在しているとは思っていませんでした。」
『だから、無知というのよ。そんなんで、良く精霊眼を身に付けられたものね。』
「それは、色々とありまして。。。」
精霊に遭遇して、認識しただけでランクAにまで達したなんて言っても信じてもらえないだろう。
『ふん。まぁいいわ。なら私に用はもう無いのかしら?』
「はい、質問があるです!」とシラユキが話に入ってくる。
『なんですか?』
「私も精霊を見ることが出来るようになりたいです。」
うん。まぁそうだよな。せっかく目の前に精霊がいるのにそれがただの光る珠でしかなかったら、俺でもそう思うだろう。
『そうですね。それなら、精霊眼の身につけ方をそちらのお兄さんに教えてもらえばいいのでは?』
「あぁ、ごめんなさい、自分もどうやって身に付けられたか説明は出来ないです。」
『ふーん。そんなことあるのかしら?ランクAなのよね?それなら精霊王に会ってるはずなんだけど。。。』
「ごめんなさい。知らないです。。。」
どうやら、本来Aランクにまで上げるのであれば精霊王の加護とかが必要みたいだ。
『まぁ、いいわ、なら姿を見えるようにしてあげるから、私を元いた場所、、、いや、精霊の楽園に連れていってもらえるかしら?』
「いいですけど、それってどこにあるんですか?」
『霊峰ジーフは知っているかしら?』
「まさかそんなところにあるんです!?」とシラユキが驚いているが、それもそうだろう。
霊峰ジーフは聖騎士団が、修行に使うための険山として有名だ。
普通の冒険者が簡単に近づける場所ではない。
『ええ、そこの山頂にある神木が楽園への入り口なの。』
「そこに行けるかは別として、そんな大事な情報を教えてもらっていいんですか?」
『本当は駄目だけど、精霊眼の持ち主になら問題ないわ。それにあなたを精霊王に会わせてみたいもの。』
うーん。出来れば聖騎士団に関わりのある場所には行きたくないのだが。
それに、薬草の作り方を学ぶだけのつもりが話が大きくなりすぎだ。
本当にどうしよう。。。




