#1 再召喚されたのでとりあえず町へ行く。
世界観をつくりながらなので、しばらくは説明っぽくなります。
不都合があったら変えるかもしれませんし、読まないとわからない、話の内容にする予定はないので流し読みで大丈夫です。
ユウキが目が覚ますとそこは森の中だった。
死んで神に出会い、異世界に召喚されて魔王を倒して神に再召喚され、自分のことながらここまで慌ただしい生活だったなと思う。
しかし鳥が囀ずっている森の中にいると気が抜けるなとか思っていると。
『グルルルル』という声が辺りから聞こえてきた。
「ちっ、いきなりかよ」
どうやらこの辺りは魔物が生息する領域みたいだ。
教会に召喚されて再び勇者として担ぎ上げられるよりはマシではあるが、もっと良い場所があるだろうとか思うのだが、召喚なんて珍しいこと、それも異世界人をなんて、教会以外で行われることはないので、人目につかないような神なりの配慮なのだろう。
まぁいきなりだったので不満には思ったものの、この状況はこれはこれで都合が良かったりする。
神によって与えられた魔法の力を試す良い機会だからだ。
はじめて使う魔法がどれほどのものになるのか、神に与えられた力を図りかねているので、貰った時から一回は使ってみないとなと思っていた。
人目につかず魔物を相手にテストが出来るのだからまさに好都合である。
「よし、いっちょやってみるか」
ユウキは早速魔法を使うために詠唱を始めることにする。
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ちなみにこの世界の魔法の発動方法はいくつかあるので簡単に説明すると
[詠唱魔法]
その名の通り詠唱を行うことで、精霊や神の力いわゆるマナと呼ばれるものを周囲から集めて発動する。時間がかかるが、自身が持っている力以上の威力を使え、また魔法の発動にはイメージの力が大事なのだが、詠唱を行うことでその必要は無くなる。ちなみに今、ユウキが使っているのはこの詠唱魔法の中で、公式と呼ばれる基礎詠唱に名称を加えたもので、使いやすく威力も押さえられるので、練習にはちょうど良い。
[名称魔法]
詠唱を省略し魔法の名前のみを発動の触媒とする魔法。発動する魔法のイメージと理を理解していなければ使えないが、加えるイメージの違いによって、威力の強弱が調整できるので、レベルの高い魔法使いはみな名称魔法を扱うことが多い。
[固有魔法]
種族によって使える魔法。詠唱だけでなく、名称すら必要とせずに使うことができる。純血種であるほど、強い威力を発揮できる。混血の場合は薄くなれば使えなくなるが、複数の固有魔法を持つことも多い。また一般的なスキルとは違い魔力を消費する。魔物が使う魔法も固有魔法と呼ばれているので、魔界の最大種族である[真人族]には忌避するものも多い。
[記録魔法]
魔力を溜めることができる魔石に魔法を発動する陣を刻んであり、そこに魔力を加えることで発動する魔法。一般の生活に広く広まっており、もっとも多く使われているので、生活魔法と呼ばれることもある。しかし強い威力の魔法は刻む魔方陣が大きくなるだけでなく、溜めれる魔力の量が多くなければいけないので、それだけ魔法石の純度と大きさが必要となるが、そんなものは上位種の魔物や伝説級の魔鉱石が必要となるので、滅多に見ることはない。また魔方陣を刻むことができる錬金術師もユニークスキルによるものであり、まだまだ研究段階の代物である。
ここまでがユウキが知っている魔法の知識である。
何分、興味はあるのでいろいろ勉強したが、使えないので深いところまでは知ることは出来なかった。
普通は魔法の適正やらがあって使えない魔法も多いのだが、そこは神が与えてくれた才能であるので何でも最初から使えることを知るのは後々になってである。
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「我、火の力を求めるもの、火の精サラマンダーの力をもって敵を打ち払う力を与えたまえ[ファイヤーボール]!」
詠唱が終わると同時に手から火の玉が打ち出された。
そう思ったのもつかの間、爆発音と共に爆発に巻き込まれてしまった。
何が起こったのか分からず頭が真っ白になりかけたが、かぶりを降って冷静さを取り戻す。
いや覚えている、確か自らの手から本当に火の玉が出たのを見て感情が高ぶった気がする。
そのせいなのか刹那的に火の玉が膨れ上がり爆発したのだ。
なにぶん初めて自分の力で魔法を使ったのだから制御方法など身に付いておらず、高揚して失敗するのは致し方ないだろう。
「あちゃーこれは、制御できるように訓練しないと魔法を使っちゃだめだな」
残念だがこんな制御できない魔法を使うのは危険だし、それもこの威力のものなどほとんどの人が使えないから、あっという間に注目されてしまうので仕方がない。
しばらく爆散した魔物の死体を眺めながら、煤けた体で、さてこれからどうしようかな、と佇んでいると、爆発の音を聞きつけたのだろうか、遠くから何かが近づいてくる気配がする。
普通は察知できる距離ではないのだが、ユウキはこれまでの経験から、魔物の領域に入ると、[気配察知]のスキルは常に解放するようにしていて、近くに生物反応があれば常に敵なのか確認する癖がついているので、今も警戒をしているのだ。
さらに[聞き耳]などのスキルを活用して音から確認するが、どうやら近づいてくるのは、魔物ではなさそうなので、臨戦体制に入らず、しばらく待っているとガチャガチャという音が近づいてきた。
森を掻き分け出てきたのが、狼ベースの獣人族だったので、顔を見て一瞬ビックリしたが、獣人族に会ったことがない訳ではないので、直ぐに冷静さを取り戻す。
「おい、すごい音がしたが大丈夫なのか……ってうお! なんだお前、真っ黒じゃねえか! 生きてるのか?」
とりあえず敵ではなさそうだが本当の事を言う訳にもいかないので、軽い感じで上手く返してみることにする。
「いや、生きてますよ! 誰かが落とした魔法石に記憶魔法が刻まれてたみたいで、それを魔物が踏んだら爆発に巻き込まれちゃって本当にビックリしましたよ」
「そりゃあ、災難だったな!まぁ魔物と遭遇して黒こげになるだけで、無事だったんだから儲けものだろうけど、そんな威力を仕込んだ魔法石を落とした人は泣いてるだろうがな!」
『くっくっくっ』と笑っているが、どうやら上手いこと勘違いしてもらえたようだ。100年前はまだ個人には記録魔法は浸透していなかったし、この威力の魔法石は珍しかったので、100年の間に技術進歩があったのだろう。
実際に使ったのは初級魔法の[ファイヤーボール]だが、威力は通常の中級魔法レベルだった。それを仕込んだ魔法石となると、とんでもなく高価な物であったのはずなので心配したが、泣くぐらいで済むのであれば、今は値段が下がっているのだろう。何はともあれ、自分が使ったとはバレずに誤魔化せたみたいなので良しとしよう。
黒こげになってるから、無事ではないだろうとか言ってみるも、魔物相手に大きな怪我無く生きているなら無事だそうだ。
「ところでお前さんはここらで見ない顔だがどこから来たんだ?」
口では笑ってはいたが、警戒を怠らず、こちらに常に注意を向けてくるところを見ると、それなりに腕の良い冒険者か衛兵といったところであるのだろう。
まぁあくまで今回は初心者冒険者として生きるつもりなので、召喚者であるとかは言わないで都合の良いように、誤魔化そう。
「いやー、私はユウキという者なのですが、実は北の方の田舎から冒険者になろうと思って出てきたんですけど、どうせならセントラルでと思って来たものの、門前払い。相手にされなかったので、困った挙げ句に南に来たものの道に迷ってしまってこの様ですよ。ははは」
「ほぉーそれはまた、遠くから来たもんだな! 迷子になって魔物に襲われたのに、落ちてた魔道具に救われるとか、英雄の加護だろうな! まぁ名前が英雄と同じでも、ただの田舎者でそれも通行証もない北の民なら門前払いだろうな!」
そう言うとすんなりと警戒を解いてくれた。
北の民というのが聞いたのだろう。
魔物の領域、それも魔王が住まうのは世界の中心都市から南方になる。なので南側には人と物が必要となり、物流量が増えればそれだけ町が発達している。
結果、南側は発達していき、北方は発達が遅れているので、北の人間は田舎者という認識がある。
また北の領域は魔物の量が少なくて、冒険者の質も低いのでナメられるのは仕方がない。
部落差別に近いものもあるのだが、今は都合が良いのでそれを利用させてもらうことにした。
こうも露骨に警戒をとかれると、それはどうなんだろうかとも思ったりするが、爆発に巻き込まれてボロボロの服装で、大した装備も身に付けていない風貌し、北の民だと卑下するやつを警戒するのもアホらしくなったのだろう。
因みに魔王討伐の時に身に付けていた装備は全て神に交換してもらった。
神聖剣やらの神の名前がつく装備を身に付けていると、直ぐに神官につれていかれそうなので、もったいなかったが仕方がない。
代わりにに貰った装備は、物としてはいわゆる初期装備なのだが、そこは神がくれたもの、全てが神の加護が付与されている。
なので見た目はウサギ中身はライオンのようなものなので大抵の装備より性能は上だ。
神官に詳しく調べられないかぎり、祝福がかかっているかはバレないとはわかっていたが、見ただけで、ここまで下に見られるのも考えものだなと思う。
今後の生活を考えるとその方が楽だろうという考えのもとだったのだが。
「まぁ災難だったろうが、このヴェルズ様が近くにいて良かったな! 俺はCランク冒険者だが、タダでこのまま近くの町まで案内してやろう」
「Cランク冒険者だったのですか! すみません。お察しの通りお金もないので、悪いのですが案内をよろしくお願いします先輩!」
前は聖騎士団に所属していたので、一緒に戦うのは騎士団のメンバーだったし、たまに共同戦線を張るときはAランク以上の冒険者しかいなかったので、Cランクの実力のほどは図りかねるが、なんにせよ先輩であり、自分は初心者として一から始める身なので下手にでるに越したことはない。
それに普通は他人にかまける余裕などない冒険者が多いのに、ソロでいて、戦力になりそうにない他人を守ることができる自信があるのだろう。
もし一人で村を探すのであれば、それなりに自分で戦闘をしないといけないので、人目に付く可能性もあったので有難い。
高笑いをあげながら、『いいってことよ!』と背中をバシバシ叩かれているが、これから楽しい冒険者生活をするには必要なことだから我慢しよう。
それにヴェルズの雰囲気がそうさせるのか、そんなに悪い気はしない。
こうしてユウキは冒険者の第一歩となる町へ行くことになったのだった。
魔法を使ってみたら爆発した。
スキルを活用してます。
Cランク冒険者ヴェルズとの出会い。
爆発は魔道具によるものだと誤魔化した。
田舎者で、都会で冒険者になることに憧れている設定にした。
ヴェルズが近くの町へ案内してくれることに。