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#14 装備を準備する。 その3

#14 装備を準備する。 その3


一回落ち着こう。


何を持って、こんな事をしてきたのかが、分からない。


脱出するのは容易いが、無駄に警戒されても仕方がないので、とりあえず、流れに身を任せよう。


「えっと、引っ張り上げて貰いたいのですが、その前にあなたがシールさんですか?」


「そうじゃ。じゃが、質問に答えるまでは助けてはやらんぞ。」


「いや、シールさん。こんなことされなくても質問ならいくらでも答えますが。。。」


「いや、それでは信用ならんからな。あとワシのことはシール爺と呼べ。敬称はむず痒いんじゃ。」


ということで、シール爺からいくつか質問を受けることになった。


自分が何者なのかというところから始まり、たわいもないことまで聞かれたが、どうやらシラユキの事が心配なおじいちゃんといったところだ。


まぁ、孫のように可愛がっている子供を、見ず知らずの、どこぞの馬の骨か分からないようなやつに背中を預けさせるのは不安なんだろう。


言えないこともあるので、多少はぐらかしながら答えていくが、そういう時にシール爺の耳が動くのでどうやら嘘だとバレているのかもしれない。


「ふむ。まぁ良い。おぬしが、隠し事をする理由には興味があるが、シラユキへの悪意は感じられん。最後に聞くがお主の夢はなんだ?」


「夢ですか?そうですね。うーん。強いて言えば楽しく生きたいになるんですかね。」


「ふん。随時低い野望だな。だが、これは嘘を言っているようには聞こえん。お主が醸し出す雰囲気は普通とは違うから、もしや魔王を討伐したいとか言うのかと思ったぞ。」


「!魔王がいるんですか?」


そういえば、神が新しい魔王がいるとかそんなことを言っていた気がする。


「当たり前だろう?かの有名な召喚勇者。ちょうどお主と同じ名前だったが、暗黒の魔王を倒して平和になったとはいえ、魔物がいなくなる訳ではない。頭がすげ替わって新たな魔王が誕生するのは歴史が物語っておろう。」


「そうですか。。。」


うーん、今回はそういう所にあまり首を突っ込みたくないけど、一応は調べるぐらいはしておいたほうがいいかもしれないな。


「はっ!田舎者と聞いていたが、そんなことも知らんとは先が思いやられるのぅ。最初はそこそこやるやつな感じがしたのが勘違いかのぅ。シラユキ、本当に、この男と組んで大丈夫なのか?」


「もう、シール爺は心配し過ぎです。それに、私たちみたいな底辺の冒険者が、魔王とかそんな危ないことに首を突っ込んだりするわけ無いです。」


「普通はそうじゃな。」


「何か引っ掛かることがあるんです?」


「そりゃあ。。。ユウキとやら、お主はこの世界の人間ではないだろう?」


「「!?」」


シラユキは何を言っているの?といった顔をしているので、自分がポカミスしたわけではなさそうだが、召喚者とバレると、めんどくさくなりそうなので、なるべく隠すつもりだったのだがなぜかバレてしまったようだ。


「...気づかれましたか。」


「否定をしないということは、やはりそうなのか。」


「そうですね。確かに北の田舎者というのは嘘で、違う世界からやってきました。」


シラユキはあまり良くわかってなさそうな顔をしているが、とりあえず放っておこう。


「確かにそれなら、いろいろと隠そうとしていたのも納得だな。召喚勇者で名前がユウキだと名前負けだろうからな。」


本人なのだが、そこはバレていないようで、実力を見抜いたとかではないようだ。


「ひとつ聞きたいのですが、どうして召喚者だと分かったんですか?」


バレてしまったとは言っても、なるべくオープンにしたくは無い。気付かれた原因は知っておきたい。


「まずは匂いだな。」


「匂いですか?」


「そう、お主からは聖騎士団の香水の匂いが、微かじゃがするんじゃ。それに幾つか質問したが、普通は知っていることをお主は知らなさすぎる。あと決定的なのは言葉じゃな。」


「言葉?」


「そうじゃ。言葉がキレイすぎる。そんな喋り方になるのは召喚者しかおらん。」


どうやら、神によってかけられた翻訳魔法によって翻訳された言葉は、いわゆるネイティブの人がしゃべる言葉に変換される。


正確にいえば、近くにいる人の頭の中で考えるときに使う言語をトレースしているらしい。


町中であれば、もっとも使われている、共通言語になるなのが、ここでは2人の獣人しかいないので獣人語に変換される。


獣人語を普通に使えているし、言語的には正しいのだが、喋り方が素直すぎるとことだ。


獣人の喋り方は性格に影響されやすく、もっとアクセントが乱れるらしい。


「うーん。それは難しいです。別に誤魔化す方法を考えないといけないかもしれないですね。」


「いや、知らなければ分からないようなことだし、こんなことに気づけるのはワシぐらいのもんじゃ。それに匂いはもう消えかかっておるから、下手をうたなければバレることはないじゃろう。」


「そうなんですね。それは良かった。」


だが、気をつけておくに越したことはないだろう。


「じゃがなぜ、召喚者が聖騎士団に属さずにこんなところにいるんじゃ?」


まぁ、バレているならある程度ホントの事を言っても良いだろうと、神によって森のなかに召喚されたことを話す。


「ふむ。嘘は言ってなさそうじゃな。確かに噂では聖騎士団以外にも召喚を行おうとしている連中がいると聞く。そいつらの召喚が召喚場所を固定出来ずに、それがたまたまそこの森だったということだろうな。」


なにやら、召喚に関していろいろキナ臭い話もあるようだ。


その辺りもそのうち調べておかなければいけないかも知れない。


「あの、それで出来れば召喚者であることは秘密にしておいて欲しいのですが。」


「まぁそれは、お主の今後の行い次第だな。シラユキを悲しませるようなことがあれば、問答無用で聖騎士団に突き出すがな。」


聖騎士団以外が行った召喚で呼ばれた召喚者は異端者認定される可能性があるらしい。


まぁ、世界を救う程の力がある可能性を持つ人が自分達に従わないのであれば、排除しようとするのは仕方がないのだろう。


召喚者であることが、バレるとややこしいことになることは確実みたいなので、今後はより注意しながら生活しなければいけないな。



ということで、召喚者であることがバレてしまったが、何とか信用してもらえたみたいだ。


色々と問題は出てきたが、それは追々考えることにしよう。


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