#0プロローグ
初投稿。
しばらくは世界観を作りながらなので、長くなります。
読んでられなければ、後書きに要点をまとめてますのでそちらを見て下さい。
成瀬佑樹は10歳の時に不慮の事故で亡くなったのだが、そこで彼の人生が終わることはなかった。
意識が遠のいてからしばらくすると再び意識が戻ってきて、目を覚ますと影の無い真っ白の空間にいた。どうやら神様に召喚されたみたいだ。
魂の世界とでも言うのだろうか、肉体がなく意識だけがはっきりしている場所で、現実離れしていたのだがそこは現代っ子、適用が早くゲームの世界のような話に心が踊る。
死んだことは悲しいし、元の世界に戻りたい気持ちはあっても、それを上回る未知の世界への興味が克己心を越えていた。
親も既になくなっており、身寄りの無い孤児だったことも、悲しみが少ない理由である。
動揺していないか確認した神に対して、「腫れ物を扱うような親戚の中でも、優しくしてくれた人もいたっけな」と、あっさりとした受け答えに神が逆に調子が狂わされた様子だった。しかし、「こっちとしても心が痛まないから都合がいいよー」とか言っていたを切り替えが早いに越したことはないのだ。
適当な神だなとかいう風にも思うが、つづく神の説明を聞くとなんとなく心が痛まないといった理由も理解できる。
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神曰く、質量の保存の法則しかり、魂の総量にも限界があって、ユウキのいた世界は、技術の進歩による人間の欲望という精神的な敵に対して、微妙な均衡状態を保っていて、決壊せずに魂の総量が増えすぎていると。
その結果として別の世界の魂の総量が減少し、具象的な敵である魔物がいる世界(魔界)で冒険者が足りずに困っていると。
冒険者が減って、レベルが下がった為に、定期的に倒されるべき魔王が勇者を倒して、存命し続けた結果、魔王の力が増して、魔物が増えるという負の循環に陥っていると。
そこで困った神は、世界の秩序を正常なものに戻すために、ユウキのいた世界で15歳に満たずに亡くなった未熟な魂を、召喚や転生によって力を与えて魔界へ呼び寄せているのだと。
もちろん、元の世界で転生することも選択できるのだが、増えすぎた魂の循環によって転生が滞っており、その場合はいつになるかわからないし、数千年先になることも珍しくないし、人に生まれ変われる保証も無いとのことだ。
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転生の話は、異世界にいってもらうための詭弁なのかも知れないが、確かに普通の子供にいきなり親元から離れて、命懸けで、魔物と戦えって言われてもすんなりとは受け入れられないだろう。
死んだばかりの人にこんな話をするのだから、切り替えが早くて助かるという話になったのだろう。
だがユウキは元いた世界への未練はあまりなかったので、迷うことなく異世界へ行くことに決めた。
すると『君ならそう言ってくれると思ったよ』と言って、神の説明は続く。
神なのに軽いノリなのは突っ込んでみても良いのかなと思ったが、止めておいた。
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異世界に行くのには二つのパターンがあり、それは転生と召喚である。
転生者は魔法の才能を高める施しをした上で、純粋にその世界の者として生まれ直して、生きていく。
現地人としてリセットされて転生するから、魔王を倒すとかを使命付けられるわけではないので、たとえ魔王を倒すまでに至っても褒美はあげれないけど、直ぐに戦う自信がないならこっちがオススメらしい。
使命はなくても力があるから、結局は冒険者になって戦ってくれるし転生の方がすんなりと溶け込んで貰えるので、直ぐに死亡するリスクが低く神にとってもオススメとのことだ。
召喚者は、生きていた頃の知識はそのままに、魔界へ召喚され、勇者として生きていく。
とは言っても、戦う訓練のしたことがなく、魔物を見たことがない人間をそのまま魔界に送っても無駄死にする可能性が高いので、召喚者にはいわゆる聖剣と呼ばれる武器とユニークスキルを与えてくれるらしい。
聖剣をくれるのは、魔物を倒すには、魔物の素材由来や魔鉱石の武器が必要であり、魔の力をもってなければ、ただの刃物では傷をつけることが出来ないので、武器が無くて直ぐに死なないように与えてくれるのだ。
聖剣なんてチートアイテムを最初からくれるなんて、素晴らしい!と思ったが、そういうものではないらしい。
与えられる聖剣の性能は高くなく、刃こぼれせず、魔に犯されないので壊れないぐらいしか取り柄の無い便利アイテム扱いの程度で、特に強い力があるわけでは無い。中級冒険者までは問題なく使えるがいずれは使わなくなるらしい。
与えられる聖剣と違って、魔界で造られた武器に神の最上位の加護を与えたものは神聖剣と呼ばれ、魔王を倒せる業物であるから頑張って手にいれてねとも言われた。
ユニークスキルをくれるのは、魔法のかわりにらしい。魔法は幼少期に訓練していなければ魔力が増えないし、魔力を放出する機能が働かず、使えない。なので、召喚者は変わりにユニークスキルでなんとかしてね、ということらしい。
ちなみに、スキルとは魔力をコントロールすることを必要としないシックスセンスのようなもので、戦闘向きのものから生活に役立つものやらで様々である。
ただのスキルは魔法によって再現可能であるが、ユニークスキルは一種の才能で、そのスキルによってしか体現できない。
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一通り説明を受けて、どちらにするか選択することを求められた。
転生されて魔法を使えるようになるか、召喚されて生きていくかという選択だ。
補足すると、転生の場合は魔界の人として生きていくので、必ずしも魔王に挑む必要はないが、召喚の場合は神殿に召喚されるので、勇者として生きることが義務付けられる。
とはいえ、ただの子供達が魔界に召喚されて放り出されても、魔物を倒す動機がなければ戦いはしないので、魔王を倒せば願いごとを何でも叶えてくれるらしい。
ユウキは少しは考えはしたが、直ぐに召喚を選んぶことにした。
魔法を使えるという魅力は捨てがたいものがあったが、ゲームのような世界を今までの生活と違うという、驚きを味わう経験をしたいという気持ちが勝った。転生では、その世界が当たり前でそんな感情は生まれないし、楽しむことが出来ないからだ。
かくしてユウキは魔界へ召喚されることとなった。
召喚は一瞬で、ただでさえ真っ白な空間がホワイトアウトした。
「頑張ってねー!」と軽い感じの受け答えをしていたのに、再び意識を取り戻すと、薄暗い部屋で、いきなり強面の爺さんたちに囲まれた場所に召喚されたことに若干チビったことは後々のいい思い出だ。
異世界の姫様に召喚されるというようなご都合テンプレは用意されていなかった。
それでも、どこを見ても見たことのないものばかりで言葉も聴いたことがない言語だったが、理解できるのはありがたい。
コミュニケーションをとれないままで、魔王討伐など流石に無理ゲーである。
その後ユウキ、聖騎士団の一員として魔王を倒すために、日がな一日、己を鍛える日々を送った。
端から見ると心配するほどに無理をしているように見えるが、ユウキにとっては、勉強は嫌いでも、ゲームは好きだったので、見るもの為すこと全てが新鮮でゲームの世界なので、何をやっても楽しく、強くなっていく実感もあるので、苦痛ではなく喜びのほうが上回っていて無理だとは思っていなかった。
ゲーム好きとしては、もっとお決まりのイベントやら異世界ライフを楽しみたかったのだが、神官に常についてこられて、そんな暇はなかったのが残念でならなかった。
擦り傷程度でも、直ぐに魔法で治してくる過保護レベルである。それでも親の愛をほとんど知らなかったので、鬱陶しいというより、誰かが心配してくれる嬉しさが心地好かった。
また自分に期待してくれる人たちが、早く魔物の脅威から解放されるためにも、自分が頑張らなければと思えたからこそ、強くなるために努力し続けることが出来た。
そんなこんなで、5年の月日を費やしたが、どうにか持てる全ての知識と力を使って、魔王を討伐することに成功した。
魔王はどこか満たされていたのか、倒す直前には笑っていた。どこか本気を出されていない気もしたが、勇者殺しの魔王と呼ばれる魔王を倒すことで得られた経験値がもたらしてくれる影響は少なくないだろう。
死闘を終えて、これまでの苦労を顧みて、仲間たちと感動を分かち合っていると、目の前がホワイトアウトした。
再び召喚され、神の元へ召喚されたのである。
初めの召喚時の落ち着いていた時と違って、なんだよこれ!とか喚いていると。
約束通りに願い事を聞いて叶えてあげるためだよ、忘れるなんて酷いなーと言われてしまった。
神のことなんて、すっかり忘れていたし、せっかくこれからゆっくりと異世界ライフを楽しもうと思っていたのにと文句を言うと。
「ごめん、ごめん、でも魔王を倒したら、願い事を叶える約束だったからねー」と軽い感じで返された。
相変わらずの軽い態度だったが、素直に謝られたので怒るに怒れないし、戦いの疲れもあって、気が抜けていると。
「じゃあどうする? このまま魔界で生きていくのも良いし、元いた世界に蘇生して上げても良いよ」と言われた。
元の世界に未練があれば、戻りたいとかかもしれない。でも、もう魔界での生活のほうが大事になっていたし、今さら、元いた世界へ帰りたいとは思わない。
「僕は魔界に帰るよ。魔界が僕の住む世界だから」
「うん、そうだね。今の君にとっては愚問だったね。なら願い事は何にするかな?」
魔界に戻るを願い事にするとかいうことはなく、ちゃんと願い事を聞いてくれるらしい。
願い事のことなんてすっかりと忘れていたので、すこしばかり、考えてみたが、これといって神に叶えてもらいたい願い事が思い浮かばない。
欲しいものはだいたい手に入れれるし、最高の武器も手にいれてきた。自分で言うのはアレだが、冒険者としては行き着くところまで行ったといって言いかもしれない。
だが神官が常に側にいて、普通の道のりを歩んできたとは言いがたい、当たり前のように下積みを蔑ろにしてきた。
やりこむことこそ、ゲーマーとしての矜持だとも思っていたユウキとしては、物足りなさがあった。
ということで願い事がきまった。
「異世界を冒険者として一から満喫したい」
神官に付きまとわれるので、戦うことが日常の日々だし、魔法があるのに使えない。
確かに異世界の生活だったが、欠けていることがあまりにも多かった。
一歩外に出れば、異世界の生活が溢れているのに、勇者として神官に束縛される生活では意識はしてなかったが、生殺しでもどかしい日々でもあった。
だからこそ、異世界ライフを楽しむことこそ、ユウキにとっての最大の願いだった。
神にとっては、そんなことでいいの?というぐらい、想定外に低い望みだったので笑いながらも、快くその願いを受け付けた。
同じ時代だと、勇者として扱われるのでユウキが勇者であると知っている人族がいない、100年後に再召喚してくれることになった。そして、魔法も使えるようにしてくれるらしい。
時を越えること、理を曲げて魔法の力を与えるというのは、神にとってもちょっとした無茶ではあったが、気分が良いので頑張ってくれた。
魔界で築いてきた交遊関係とか、勇者としての名声とかは捨てがたいものがあったが、その時代だと、君は祭り上げられて、堅苦しい生活になるよと言われれば、未練はない。
英雄扱いでは、冒険者を普通に満喫するなど到底できないだろう。
「まぁ新たな魔王が誕生しているし、再び倒して勇者になってもいいよー。君はまさに俺tueeeだからね!」と結構重要なことを去り際に言われたが、聞こえなかったことにしておく。
そんなこんなで、ユウキの願いは叶えられ、二周目の異世界生活が始まったのだった。
要点をまとめると
神との遭遇。
異世界召喚。
プロローグで倒される魔王。
願い事は異世界生活を楽しむこと。
魔法を使うことが出来るようになった。
再度の異世界召喚。




