優しく背中をおされたよ
僕はこの現実を突きつけられたとき、ふわふわとした身体の感覚を味わい、他人事のように嘘だ~という言葉が頭のなかに漂った。全てがふわふわで夢みたいだ。夢ならな。だけれど、はっきりと、僕の名前が書かれていて、不合格とも書かれていて、僕の手のひらは紙の感触を感じていた。
次第に現実味がわき、僕の身体の芯がすっとさめ、嫌なざわめきが僕のからだを覆っていった。
頭のなかに映像が流れる。
まず、僕に悲しみの目を向ける父さん。そんな父さんの隣で
『大丈夫、大丈夫よ。今回は優ちゃん、力がだしきれなかっただけよね。大丈夫、大丈夫よ。また、来年受ければいいじゃない。ね、そうよね?来年は受かるものね?失敗しないわよね?大丈夫、大丈夫よ。優ちゃんはできるこだもの。私の子はできるこだもの。』
とうわ言のようにつぶやいている母さん。
母さんの目はどこを見ているのだろうか。
背景が徐々に学校へと変わっていき、先生がうつる。
が、僕はその映像をかきけし、頭の中から目に焦点を向けた。
今、僕は自室にいる。家には誰もいない。僕の心臓は動いている。ああ、止まってしまえばよかったのに。あ、キッチンに大きな包丁があったっけな。確か物置にキャンプ用のロープがあったような。父さん、キャンプ、楽しかったなあ。
刺すのと、絞めるのどっちが痛いかな。痛いのは嫌だな。苦痛も、何もかもを味わいたくない。あ、あ、あ。
ふと窓のそとを眺めると清々しいほどの青空で
、僕は鳥のように飛びたいと思いました。
僕は家をでた。コンビニで水を買い、一口飲んだ。美味しい。飲みながら歩き、歩きながら飲んだ。そして、目的地についた。
ああ、なんて爽やかな風なんだろう。
僕は屋上にいた。
部活をしている音が耳から頭にはいりこむ。僕の嫌いなもの。憧れるもの。
こんな状況だからか、誰も周りにいないからか、素直に涙がながれる。気持ちもながれる。
なにかにうち込んでみたかったな。ひたむきに頑張ってみたかった。頑張る対象が欲しかった。
屋上のフェンスを乗りこえ、立つ。
自分の部屋の窓から見た青色が、四角い枠から解放され、四方に広がっていた。
視界が開けたようで、脳が拓けたようで、
『僕、まだ18じゃん。これから頑張る対象みつけよう。死ぬの、やめよ。』
僕の口は無意識に言葉をついた。言葉が耳から頭にはいりこみ、そうだ、そうだと思考が同意した。その時、
視界が地面に近づいていく。僕のからだ、飛んでいる?ああ、願いが叶ったのかな。でも僕は人間で、生身で叶うということは、それはさ、というか、飛ぶというより落ちているのでは?僕一日で2度も落ち
最期の僕の身体の感触は、背中への優しい圧力だった。