えらいこっちゃ
長らく更新もできずに申し訳ございませんでした。
王子様からもらったペンダントをポケットに入れていることを忘れて
そのまま、お洗濯に出したら、それをトリーが発見したようでした。
「トラ様のポケットに何か入ってますね、これはペンダント?」
控えめな装飾、でも明らかに職人の技術がこれでもかこれでもかと血と汗と涙の結晶を感じられる
高価なペンダントが入っていました。
「いったいどこから、これは・・こ、このペンダントの紋章は・・・っ!??」
一時思考停止した後、持っていたハンカチにそのペンダントを大事に包み、洗濯場から人生でも
これでもかというスピードで旦那様の部屋へと向かいました。
一介のメイドでは到底処理もできない事案だったからです。
旦那様の部屋の扉をぶち破って、部屋に突入しました。
「だ、旦那様ーぁぁぁー!??」
いきなり自分の部屋にメイドが尋常じゃない様子で入ってきたため、チャーチル家当主ゼロスも
椅子から転げ落ちていました。
「ど、ど、どど、どうした!!???」
「だ、旦那様これを!!」
ようやく椅子から転げ落ちたとこから復帰したゼロスに跪いて、ハンカチに大事に包んでいた
ペンダントを渡しました。
「なぜにこんなものがあるのだ、王家の紋章だぞ・・・・。」
震える両手でペンダントを持ちながら、全身も震えている当主ゼロス。
貴族様全力の気迫でトリーに問いただす。
「トリーっ!!これはどこからきた!!?チャールズか!??」
「いえ、トラ様のお洋服の左ポケットからです!!」
「トラ!??」
「そうですっ!!!」
「ふぁっ!???」
二人とも荒い息を吐きながら、しばらく無言の時間が続きました。
部屋中に二人の変な呼吸音が響きました。
なんとか復帰して。
「トリー、トラをすぐに連れて来い」
「わかりました、すぐにでもお連れします。」
トリーはすぐさま部屋から飛び出ていきました。
一人になったゼロスは倒れた椅子を戻し、深く座りペンダントを改めて凝視する。
「なんで王家の紋章付きが我が家にあるんだよ、しかもナンバー無しってなんだよ・・・」
チャーチル家当主になってから、何度となく困難はあったけれども、まず王家が絡んでくることはなかった。
王家が絡んで、ずいぶんと爵位を上げた家もある、その逆も然り、家を潰した家が多い。
それほど王家と圧倒的な力を持っている。
王家の次期当主は幼いころから、自分のために働いてくれる臣下を探すという。
出生身分を問わず、我が身を犠牲に困ったときに助けてくれる、本当の臣下を探して国の運営にかかわらせるという。
王家の次期当主のお眼鏡にかなったものは、後の国の重鎮になるのがならわしである。
気に入った人物がいれば、王家の紋章入りの物を、次期当主の手から直接送るという。
愛用している装飾品、着ている服、武器などといった物を気に入った人物がいれば与えるらしい。
その与える物には、すべてナンバーが入っているようで、数字の若ければ若いほど、王家の期待度が
分かるというものであった。
ちなみに今の王家の宰相のナンバーは03だそうだ、01.02は当時の王子の命を救うために犠牲になったそうだ。
そのなかでも、ナンバー無しという物があるようだ。
今までは都市伝説のようなものでしか聞いたことはなかった、実際に見てみるまでは。
まずナンバー無しに選ばれたものは、この国に多大の良い影響を及ぼし、絶対的に王家のためにつくす。
そして王家から絶大なる信頼を得るという特権があるという。
我が息子よ、なんで、なんで、なんで王家からペンダントもらっちゃったのと、
震えながらえずくゼロス・チャーチル36歳えずきが止まらない。