美しい天使
ある日僕の前に天使が舞い降りてきた。
恐ろしい子だと、本能が告げた。
冷たい無表情。
漆黒の翼。
けれど何故か、僕は天使から目が離せなくなった。
なぜなら天使が、冷たい以上に、寂しそうな顔をしたから。
話しかけると天使は驚いた。
そう見えただけだけれど。
その日、重い体の中をよく分からない感情が駆け巡って、戸惑って、上手く笑顔が作れなかった。
『天使はね、本当は悪魔なの。悪魔と天使は同じモノなのよ。柔らかい微笑みで人間を騙して堕落させるの。』
前に誰かがそう言っていた。
だとしたらあの子はきっと、天使なんかじゃない。
もしかすると死神かも。
でも僕にはさして重要じゃない。
「ねぇ、友達になって。」
僕はそんなに面白くもないただの人間だけれど。
「君に、興味が湧いてしまったんだ。」
その子はつと、目を細めた。
【ーーーーー。】
「ありがとう。」
よくわからない言葉だった。
高い音と低い音が混ざり合ったような、はたまた梢を鳴らす風のような。
不思議な言葉だったけれど僕には良いよと言っているように聞こえた。