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第八十九話

すみません、リアルが忙しく週末あたりまで更新できそうにありません


  (なんなんだよこいつは! 本当にFクラスなのかよ!)

 萩野は迫り来る光一に対して、木崎孝太郎からコピーした野生の本能 (ワイルドシャウト)を使い身体能力を上げることで対抗しようとする。しかし、劣化した野生の本能では、同調(シンクロ)率八十%を越えている光一の拳を防御するので精一杯であった。萩野には、防御したのにもかかわらず、痺れる腕を気にする時間すら与えられない。容赦のない光一の追撃が迫る。萩野は、迫り来る光一を見ながら、思わず歯ぎしりをした。普通光一のような近接攻撃が主体の相手には、遠距離攻撃を主軸に闘うべきであり、それを分かっている萩野は、サブウェポンとして拳銃型のサブアルマを持っていたのだが


  (クソッ! 野生の本能 (ワイルドシャウト)のデメリットのせいで拳銃が使えない……)

 自身のコピーしたスキル、野生の本能 (ワイルドシャウト)のデメリットでもある"武器が持てない"という制約のせいで拳銃を使うことが出来ずにいた。それならスキルを解除すればよいと考えるかもしれないが、今の萩野が光一の攻撃を辛うじてとはいえ防いでいられるのは、このスキルによるところが大きい。スキルを使っていれば遠距離攻撃に乏しい、かといってスキルを切れば一気に畳み掛けられて終わり。その板挟みに萩野は悩んでいた、もちろんただ悩むだけではなく、熱線を撃つなどの行動を見せたものの、劣化のせいで片手からしか出せない単純なものでは光一にあっさりと防がれる。


  「中々粘るな。だが、これで終わりにさせて貰おうか」

 怒涛の連撃の中、光一がふとそんな事を言う。それと同時に、萩野は今までとは違う果てしない圧力を感じる。光一の振りかぶった拳、今まで通りに防御をしようとしていた萩野に回避する時間はない。"あれを食らってはまずい"自身の感覚が今日最大級の警報を鳴らし、それに逆らわず萩野は全力で光一の拳から逃れる術を探す。例えそれができなくとも、少しでも威力を押さえる方法を探し、


  (! あれならなんとかなるかもしれない。これが最後の大博打だ、耐えられれば勝機がある!)

 光一が突きを繰り出すために踏み込む地面、そこへ熱線を撃ち込むことで光一の踏み込みを崩す作戦へと出た。その結果、萩野の作戦通り光一は攻撃に移る瞬間、バランスを崩す。突きや蹴りといった立ち技において足元や踏み込みは重要であり、これを大きく崩された今、光一の突きの威力は半分ほどにまで下げられた。しかし、光一に対してたった半分しか減らせなかったのは萩野にとって痛手であった。


  「限界突破(リミットブレイク)」 

 萩野が、そんな光一の小さな呟きを聞いた瞬間、自身を襲ったのは一瞬の浮遊感、その後自身が吹き飛ばされていたことに気づいたのは、木に叩きつけられた事による痛みで意識がはっきりしてからであった。巻き上がった砂煙が晴れていくなか、萩野は咳き込みながらも自身が打ち付けられた木に手をかけて、支えにしながら立ち上がる。もちろん光一の限界突破(リミットブレイク)が乗った一撃を、まともに受ければ脱落(リタイヤ)は免れない。それにも関わらず萩野がこうして立ち上がっているのは、


  (っ、なんて一撃だ。これが彼奴のスキルか、"一撃を強化するスキル"Fクラスの癖にBクラスアルマの俺にここまで傷を負わすとはな。途中であの女のスキルをコピーしておいて助かったな)

 先ほど光一の拳がヒットする寸前、萩野は藤堂花梨の堅牢な壁を発動していたのだ。その防御壁は劣化していたせいもあり、砕かれてしまったが、こうして萩野を生きながらせるほどには、光一の一撃の威力を抑えていた。そして、萩野が"スキルを発動していた腕に触れた"これが意味することは、


  (来るな、同調(シンクロ)率八十五%!)

 光一は萩野から嫌な予感を感じとると、疲労も気にせずそれに逆らわずその場から横に飛ぶ。すると、そこを今までとは明らかに違う速度で熱線が通り抜けた。その威力、スピードは見るものがみればこう感想を抱くだろう


  (あの熱線……鳳城より強いな)

 そう今、萩野が出した熱線は鳳城よりも威力、スピードの二点で上回っていた。そして、それを出した本人は


  「ふっ」

 最初はそう短く笑った、その直後


  「アッハッハッハッハッハ!!!」

 そう笑を押さえきれないといったように、高笑いをした。


  「こいつはすげえ! この威力! スピード! あの鳳城なんて目じゃねえ!」

 萩野はそう声を張り上げながら話す。そして、光一の方へ腕を向けると


  「感謝するぜ、お前。お陰で俺はまた強くなれた、そうだな礼といっちゃなんだが……お前をこのスキルでの最初の撃破者にしてやるよ」


 そう告げる。萩野の顔は笑みに染まっており、もう負ける相手はいないといった表情であった。しかし、それでも光一は特に動揺した様子はなく、


  「お言葉だが、それは無理だね」

  「なんだと?」

  「お前は確かにスキルをコピーできる。だけど、"コピーしたスキルの正確な情報までは知り得ない"んだろ」


 そう話す。それに対して萩野は


  「確かに、俺はコピーしたスキルの情報までは知り得ない。だが、それがどうした? この状況は返らないぞ。これからは俺の持てるスキルが全てあれだけのパワーアップをするんだからな」

 そう余裕を崩さずに萩野は答える。すると、光一はひとつため息をつくと


  「だけどよ、お前はもう"終わってる"んでな。将棋で言う詰みにはまってるんだよ」

  「は?」

 そう言う。思わず萩野がそれに対して間抜けな声をあげた瞬間、異変が起きた。具体的に言うなら右腕を残して萩野の全てアルマがいきなり砕けた。


  「は? は?」

  「ああ、言ってなかったな。それ、俺のスキルのデメリットだよ」

 突然の事態に混乱し、砕かれた自身のアルマを信じられないようなものを見るように見る萩野に、光一は歩いて近づくと、


  「じゃあな、中々強かったぞ」

 その言葉と同時に、萩野に向けて拳を振るう。こんどこそ、萩野は防御も出来ずに吹き飛び気絶した。





ーーーーーーーー萩野啓太、脱落(リタイヤ)


 

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