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第八十話

  「それじゃあ、約束通りこれは貰っていきますよ」


 光一は、あのあと笹山が気絶から回復したのを確認すると、そう一言言い残して去っていく。一人残された笹山は、壁にもたれかかるように座ると


  「負けた、か……」


 そう短く呟いた。あの闘いは、本気を出した闘いだった。しかし、それでも光一には届かなかった。しばらくの間、座ったまま無音の時間が過ぎていく。頭の中で思い起こされるのは、先程の闘いの記憶。あの圧倒的な力の前に負けた、それは大きな問題ではない。別に笹山は生涯無敗であった訳ではなく、今までも負けるようなことがあれば、原因を見つけてさらに強くなってきた。

 それでも、あの光一との一戦を何度も思い返す度に思ってしまう。"もし、もう一度同じ条件で闘って勝てるのだろうか?"その疑問が笹山の脳内を占める。笹山は、その問題を解決できそうな事が思い浮かばず、力なく座っていた。しかし、


  「……私らしくもないな、こうやって悩むなんてな。やることはいつも通り。いや、今まで通りじゃないか」


 そう自分に言い聞かせるように呟やく。そして、座っていた状態から立ち上り、出口へ向かう。やることは今までやってきたことと変わらない。負けたのならば、それを越えるように努力するだけだ。笹山は、そう心に決めると


  「次は勝たせて貰うぞ」

 

 そう言いながら、自習室を後にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーー



  「それで、教え子にやられた感想は?」

  「そ、その事は蒸し返さないで欲しいなー。一応怪我人だし、もっとオブラートに包んで欲しいよ」


 自習室を後にした笹山は、葉波と共に保健室にいた。一応あれだけの衝撃で地面に打ち付けられたので、検査という名目できたが、


  「何言ってるのよ、あなたがどうしても彼の同調(シンクロ)率を知りたいって言うから見せたら。子供みたいな目をして闘いに行ったくせに、自業自得ってやつよ」

  「うっ、それを言われると何も言い返せない……」


 笹山は、葉波に先程のことを蒸し返されながら、検査を受けるはめになっていた。葉波に無理を言って生徒の情報を流してもらった立場なので、強いことは言えずに引き下がる。(葉波も光一に情報を流してしまっているのだが、笹山はそれを知るよしもない)


  「ほら、検査終わったわよ、特に異常無し。ほら、速く帰らないと怪しまれるわよ」

  「そうだな、ありがとう。恵香」


 そう言い残し、笹山は保健室を後にする。

 一人保健室に残された葉波は、白衣の裾をはためかせながら、自身の机の椅子へと座る。笹山との話に少し時間をとられたせいで、ぬるくなってしまったコーヒーに口をつけながら、パソコンを操作する。開くのは、今回の対抗戦に出る生徒のデータ。


  「(彼は確かに凄いけれど、パワーだけだと思っていた。確かに、あの同調(シンクロ)率は脅威だけれど、所詮Fクラス。所詮所持パーツ一つ。そんな事を思うところが少しあった、"今までは")」


 葉波の想像は、おおむね正しかった。確かに、光一のパワーは脅威であるが、それは右腕に限ったこと。対抗戦のようにアルマの破壊を目的とした戦いならば、数の少ない光一が不利だと考えていた。が、


  「(彼は、あの舞に勝った。しかも純粋な一対一で、つまり彼は高い戦闘能力を有しているということ)」


 笹山に勝ったとなれば話は別だ。笹山は元々軍からスカウトがくるほどの腕前であり、それを正面から打ち破れるというならかなりの戦闘に関する能力を持っているということだ。

 葉波は、実際の闘いになれば遠距離攻撃手段を持っていない光一は、鳳城あたりにでもやられてしまうだろうと思ったいたが、今回のことで予想は大きく変わる。


  「果たして、今回の対抗戦はどうなるのかな」


 葉波は、そう呟くとコーヒーを一気に飲み干して、席を立つ。その机の上に置かれた、小さなカレンダーに記された日付を見ると____クラス対抗戦は、明日にまで迫っていた。 

 

 





今回短くてすみません

次回から、クラス対抗戦編がスタートします

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