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第七十四話

 天河と久崎が、上から飛来してきた氷塊を砕いたと思えば、また新たな氷塊が二人目掛けて放たれる。それを後ろに飛び退くことで二人は回避したが、


  「誰なのよ? 姿も見せずに攻撃してくるなんて」

  「これも作戦の内だろ、いちいち卑怯なんて言ってられないな」

  「ま、それもそうね」


 二人はそう会話をしながら氷の弾を素早く回避、または破壊することで凌いでいた。端から見れば、上からの攻撃に防戦一方のように見える。しかし、二人はある程度氷塊を避けきると、


  「どうする?」

  「多分、木の上を動き回りながら攻撃してきてるな。だったら、木の無い所に移動するのはどうだ」

  「決まりね」


 そう今後の方針を立てる。二人は、今までただ黙って攻撃されていたのではなく、この状況を何とかする案を練っていたのだ。しかし、相手もなかなか攻撃が当たらない二人に対して、なにもしない訳ではない。


  「痛っ!」

  「大丈夫か! 凛!」

  「うん、ちょっとびっくりして大きな声が出ただけよ。でも、相手も少し手を変えてきたみたいね」


 移動しようとと行動を起こした、その行動に移る際に出来た集中の切れ目。そのせいで久崎は、自身の足元に迫る白い刃に反応が出来なかった。久崎は、アルマのお陰で傷こそ負いはしてないものの、足への衝撃を受けて思わず声を挙げてしまう。


  「(風の刃かなにかか? なんにせよ攻撃方法が増えたってことは……)」


 天河はそこまで思考したところで、飛来した氷塊を砕き、後ろに飛んで白い刃を回避する。そして隣の久崎に目線で合図を送ると、


  「手数も増えるってことじゃねぇか! 急ぐぞ、凛!」

  「オッケー、智也!」


 二人は一気に加速して、木の無い所への移動を開始する。久崎はスキルによる機動力を生かして、地面だけでなく、木の幹まで足場にして立体的に動くことで、氷塊と風の刃を回避しながら進む。天河は集中することで、同調(シンクロ)率を上げ、脚部のアルマを強化する。そして、強化された脚力で地面を駆けるが、それでも速度は久崎に劣る。

 それでも二人は攻撃を回避しながら、猛スピードで進んでいると、


  「なっ!?」


 突如、天河の目の前の茂みからアリエノールが現れる。このアリエノールは、戦いの序盤は隠れてやり過ごそうとしていたのだが、前の方から聞こえてくる音が気になり、顔を出したところに天河が突っ込んできたという訳だ。


  「(まずい! このままアリエノールを無視すれば、後ろの弾幕の餌食になる。だったら)」


 天河は、アリエノールが面をくらって動けないでいるのも気にせず、そこまで一瞬の内に思考すると、


  「!? え、えっ?」


 アリエノールが戸惑うのも無視して、彼女を肩に担ぎ上げて走り始める。そこまでは良かった。しかし、アリエノールを担ぐ、この一動作のための回避行動の遅れを敵は許してくれなかった。

 天河の背中に氷弾と風の刃が迫り、直撃しようとしたその時。


  「Déploiement(展開)!」


 抱えられたままのアリエノールがそう言うと、四角く透明の箱のようなものが天河を守るように出現する。その箱はいくらかの攻撃を受けると壊れてしまったが、天河が体制を立て直すには十分な時間を稼いだ。


  「今のは、」

  「おっと、すみません。つい母国語が」

  「いや、そうじゃなくて。今の箱みたいのはアリエノールが出したのか?」


 走りながら天河がそう質問すると、アリエノールは特によどみなく答える。


  「はい、私のスキルで、透明な四角い箱を出現されられます。そこまで強度があるわけではないですが……」

  「いや、十分だよ。さっきは助かった、ありがとう」


 そう会話をしながら、アリエノールのスキルで時間を稼げることが分かると、天河は一瞬止まり、アリエノールを地面におろす。もちろんその隙に弾幕が飛んでくるが、アリエノールの箱と天河の防御力、そして久崎が空中で弾をある程度叩き落として防ぐ。

 そして天河と久崎は、勢いでアリエノールを加え、木の無い所を目指すこととなり、数分も走った頃。


  「! 見えたぞ、あそこなら木は少ない!」


 天河がそう言いうと同時に、三人は森の中にある、開けた広場のような場所へ出る。そこは回りに木はなく、天河達が思った場所と同じ所であった。

 そして、天河達がその場で今まで攻撃してきた者を迎え撃とうとすると、


  「あーあ、結局ここまで逃がしちゃったか」

  「しょうがないしょうがない、ここで始末すればいいさ」


 そう言いながら森の中から現れたのは、二人の男。しかし天河達の予想と違ったのは、その二人は風を纏い、空を飛んだ状態で現れた事か。

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