第七十三話
光一がFクラス代表になったその日の夜。光一は自宅の和室に居た。しかし、普通にくつろいでいるのではなく、
「…………」
電灯も点けず、部屋の中心で座禅を組んでいた。
「(魔力は身体を覆うもの、じゃあどこから魔力は供給されているんだ?)」
光一の自身操作で自身の魔力を確認すると、以前から感じているように、魔力は普段は見えない自身の身体を覆う幕のようなもの、という認識となる。
しかし、さらに集中して見ると、
「(これは、心臓の辺りか? 魔力の元みたいなのが溢れてくる)」
心臓近くから、魔力の元のようなものが溢れてくるのを確認する事が出来た。しかも、その魔力の元らしきものは、魔力として光一の身体を覆うものと、身体の内側を流れるものと二分されることを発見する。イメージとしては、皮膚の外を覆うものと、皮膚の下を流れるものといったところか。
「(魔力以外の力か……もしかして、これ"気"か?)」
光一は、その魔力とは違うもう一つの力を"気"と呼ばれるものではないかと推測した。実際自身操作でそのもう一つの力を操ってみると、明らかに魔力とは感じ方が違う力であった。
光一は魔力があるのならば、気もあるのではないか?という疑問を長々と持っていたが、あっさり解決したことにより、一区切り付いたと判断して、瞑想を中断する。
「そう言えば、他のクラスの代表ってどうなるんだろうな」
ふと、そんな事を呟きながら、光一は和室を後にするのであった。
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光一がFクラス代表入りを決めた次の日、Cクラスは代表決定戦のために、Fクラスが戦った場所と同じ森の演習場へと集まっていた。
「さて、皆はもう知っていると思うが、今回は今度のクラス代表戦に出場する代表を決める。ルールは……」
集まった生徒達の前で、笹山のFクラスにした内容とほぼ同じ説明を終えると、Cクラスの生徒達は各自バラバラに森の中に入っていく。
「装着そして勇気の欠片。さて、早いとこ相手を探さないとな」
その中の一人である天河智也は、放送による戦闘開始の合図を聞くと、目立つのもお構いなしにスキルを発動する。そして金色に光る両腕のアルマを装着して、相手を探すために森の中を散策しはじめる。
天河の歩く様子は、奇襲にこそ警戒しているものの、自分から森に隠れて奇襲を仕掛ける気は無いと言うように、隠れもせず森の中を歩いる。
もちろんそれを見逃すほど他の生徒達は甘くない、ある者は堂々と正面から、またある者は背中からの奇襲にを仕掛けるが、
「なっ! 武器が弾かれッ」
「せい!」
「ちくしょう! 防御が効かないっ!」
「運が悪かったなっ!」
天河の勇気の欠片を正面から突破するのは難しく、武器の一撃ですら防御されればあっさりと弾かれ体制を崩す。奇襲の一撃も防御されれば天河は無傷、かといって天河の攻撃を防御しようと思えば、防御の上から強烈な一撃が見舞われる。
そんなこんなで天河は、既に四人ほどの生徒達を返り討ちにしていた。
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一方、久崎凛はというと、
「まったく、もう少し歯ごたえがあると思ったのに」
音速の戦乙女 (ラディカルヴァルキュリー)を使い、既に全く攻撃を受けず、五人程の生徒達を倒していた。
「んー。ここに留まるのもいいんだけど、やっぱじっとしてるのは性にあわないかな」
久崎はそう言い残すと、剣を鞘に納めてその場を後にする。そしてしばらく歩いていると、
「え、と、智也」
「お、凛か、偶然だな」
偶然目の前から現れた天河とばったりと出会う。二人は一瞬闘うかどうか迷ったが、
「ここは協力しないか、凛」
「そうね、一人よりも二人のほうが生き残りやすいものね」
ここは一時協力することとなる。すると、二人は背中合わせになるように移動すると、
「なら、まずはこいつらを何とかするとしますか」
「賛成!」
突如木の上から降ってきた、氷の塊を天河は拳で砕き、久崎は刀で両断しながら話す。