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第七十二話

  「よし、皆集まったな、では代表を発表するぞ。今の授業で決まった代表は………この二人だ!」


 代表決定戦が終わり、笹山が集合したFクラスの前でそう言う。その笹山の隣に代表として立っているのは、光一と謙二の二人。Fクラスの大半の生徒は、クラスでも下位の謙二と最下位の光一。この二人が代表になったことに驚き、声を挙げていた。だが、谷貝はよほど悔しかったのか、光一と謙二をずっと睨んでいた。


  「では、この後は各自保健室に行ってから解散するように」


 最後にそう言って、笹山は授業を締めくくる。その後、生徒達は戦闘による怪我の検査ということで、保健室へと向かう。

 その途中、光一と謙二に向けられる妬みと恐れと少しの尊敬が混ざったような視線が、殆どのクラスメイトから向けられた、


  「………どう思うよ、この視線」

  

 そんな中、謙二がそう光一に話す。光一はそれを聞いて、


「どうも何も、気にしなければいいだろ。勝ったのは俺達なんだ、文句を言うならかかってくればいい」


 そうあっけからんと返す。それを聞いて、謙二の顔は先程まで少し不安が見えていたが、いつもの明るい顔にもどる。

  

  「それで、本当に襲ってきたらどうすんだよ」

  「俺達がそんな奴に負けるとでも?」

  「まっ、それもそうだな。俺達ならそんな奴らさっさと倒せるぜ」


 もう謙二の顔に不安の色は微塵もなく、そんな強気な発言も出来るほどまでになる。そして、保健室に着くと、保健室に入る順番は席の番号順なので、光一と謙二は一時離れる。

 列の最後尾に光一は並ぶと、周りから聞こえてくるひそひそ話や奇異の視線を全て無視して、壁にもたれ掛かると、脳内でリースに呼び掛ける。



  「(おーい、リース。ちょっといいか)」


 脳内でそう呼び掛けると、直ぐに聞きなれた声が脳内に響く。


  『はいはーい、どうしたの? 光一』


 そう軽く返事をするリースに、光一はかねてからの疑問を話す。


  「(なあ、少し前から気になっていたんだが、俺の魔力量が増えてないか?)」


 その疑問を光一が感じたのは、この世界に来てから数日がたってからであった。

 何時ものように、魔力を使って身体を強化していると、


  「? なんか前より魔力強化を維持するのが楽になったな。しかも、時間も延びてる」


 そんな変化を感じ、特に不利益は無かったので今まで放置していたが、暇となった今、ふと思い出したのでリースに質問したという訳である。



  『ああ、それはそうだよ。魔力ってのは光一達人間で言うと、筋力みたいなものでね、使えばどんどん鍛えられるのさ。………もっとも、そんな早く目に見えて成長するのは、光一の魔力操作技術と効率の良さが主な要因なんだけどね』

  「(ふむ、確かにしょっちゅう魔力強化やリース召喚とかに魔力を使ってるから当然なのかもな)」


 ちょっとした疑問が解決し、満足した光一は、リースとの交信を打ち切る。すると、そのタイミングで自身の前にいた人物が保健室から出てくるのが見えた。その人物は、光一に目線で"次だぞ"と伝えると、教室へと戻っていく。


  「さて、なんて言われるかね」


 光一はそう呟いて、保健室へと入っていく。



  「はーい、次の人ー。ってそういえば君だったか。代表おめでとうと言っておこうかな」

  

 光一が中に入ると、白衣姿でパソコンに目を落としていた葉波が、光一を見てそう言う。


  「ありがとうございます、葉波先生。まあ、Fクラスとして精一杯頑張りますよ」

  「そんな謙遜めいた口調しなくても、君なら優勝も夢じゃないと思うけれどね」


 そんな会話をしながら、葉波は光一の検査を進めていく。すると、足と腕の検査の時に、葉波は眉を潜めた。


  「………これは、随分と珍しいね。軽いとはいえ、右腕と両足が肉離れをしてる。君、痛くないの?」

  「ええ、軽くですから。そんなに騒ぐ程では」


 パソコンを見て、そう表情された画面と光一を交互に見て、葉波は疑問に思う。


  「(軽くでも、三ヶ所の肉離れをこんな顔色一つ変えずに我慢できるものなの?)」


 そう思いはしたが、それをどうこう言えるわけでもなく、葉波は治療を進めていく。ここの治療レベルは高く、骨折程度なら三日で完治させることも可能である。葉波は肉離れを起こした筋肉を補助するテーピングと、筋肉の治りを速める薬を光一に渡し、診察を終える。


  「はい、お大事に。………期待してるわよ」

  「ありがとうございます、それに恥じないよう闘いますよ」


 光一はそう言い残して、保健室から出ていった。











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