第七十一話
今回結構短いです
本当にすみませんでした、次回は元に戻せるようにします
「え?」
予想だにしなかった放送に、思わず謙二がそう言う。謙二と光一の二人の間には、先程までの張りつめた空気は消え、二人そろって、戦闘が止まった原因を探すために辺りを見回す。
そして、二人の目に映ったのは、
「………」
うつむきながら、自身のハチマキを手に持った山崎詞乃の姿であった。
その後、指定された集合場所に戻る光一達三人の間は沈黙に包まれていた。詞乃はいまだうつむき加減でおり、謙二は詞乃の行動を理解できない、といった表情を浮かべていた。
「なあ、なんであの時ハチマキを取ったんだ?」
その沈黙を破ったのは、そんな謙二の言葉だった。その言葉に三人の足は止まり、目線は詞乃の方へと向く。
「それは………クラスの為よ」
少しの沈黙の後、詞乃はそう答える。そして、そのまま言葉を続けていく。
「私の力じゃ、今回のクラス対抗戦みたいなイベントでは力を発揮しずらい。しかも、只でさえFクラスは注目度が低のに、地味な支援系統の私じゃ対抗戦に出ても、多分何も残せないまま終わるわ」
詞乃は、そこで少しの間を取ると、今までうつむいていた顔を上げて、光一と謙二の方を向いて話す。
「けれど、もしFクラスが対抗戦でいい成績を出したら、下位のクラスにも注目が集まるかもしれない。それが出来るとしたら、それこそあんた達二人みたいな、闘いが得意なのが勝ち残ったほうがいいと思っただけよ」
その言葉に対して、今まで黙っていた光一が口を開く。
「大きく期待されたものだな、折角のチャンスを棒にふってまで俺達に期待するのか」
そこまで光一が言うと、さらに謙二が横から言葉を付け足す。
「だったらよ、いい成績なんてものじゃなくて、いっそのこと優勝してやるぜ」
そう笑いながら話す謙二と共に、光一達は足を進め出す。謙二の顔は、詞乃の想いを受け取り、さらに引き締まった顔をして、堂々と前を向いて歩く。
詞乃は、二人の闘いを止めてしまったことや、代表を自ら蹴ったような行為により不安などから、暗い顔色をしていた。が、今は想いを話したことで、純粋に二人を応援する気持ちから、明るい顔となっていた。
「(………優勝ね)」
そんななか、光一は一人そんな事を思っていた。実際、光一に重要なのは"主人公、天河智也を倒す"ことであり、優勝することは、光一にとってそれほど重要ではない。
しかし、
「(確かに、俺にとって優勝はそんなに重要ではない。だけど、自分のチャンスすら不意にしてまで支援してくれたんだ)」
「(ーーーなら、俺も本気で優勝狙ってみるかね)」
そう心に決めた光一の顔は、他の二人と同じように前を向いて、引き締まった顔をしていた。