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第六十九話 強襲

 谷貝対光一達の闘いの火蓋が切られた。谷貝の砲弾と謙二の気弾がぶつかったことで、巻き上がった砂煙に視界が塞がれるなか、お互いにほぼ同時に動く。詞乃は、闘いでは足手まといとなることを事実に歯噛みをしたが、光一と謙二に言われたように後ろへと下がる。

 詞乃が下がり、谷貝は光一と謙二を最優先にすべき相手だと考えたのか、二人目掛けて砲弾を発射する。その砲弾を謙二が自身の拳から放たれる気弾(フォースバレット)で相殺する。


(ちっ、下位の奴だと思ってたが、意外と厄介なスキルをもってやがるな)


 その後も謙二は放たれた砲弾を相殺しながら前進する。謙二も谷貝目掛けて気弾(フォースバレット)を放つのだが、谷貝も謙二と同じように気弾を相殺する、もしくは避けるといった風に対処する。


(このまま前進を許すのは不味いな、だが、普通に砲弾を射つだけではあいつに相殺されて終わりだ。何かいい手はないか………まてよ、あの女は何処だ? あいつは確か俺のスキルを防ぐ手立てがなかった筈)


 謙二への対抗策を考えていると、ふと疑問が浮かぶ。谷貝が謙二の後方に視線を向けると、


(いた! だったらあれを利用すればいい)

 

 木の陰に隠れ、様子をうかがっている詞乃の姿を発見する。そして、


「これでもくらいな!」


「? そんな外してしてなにを………まさか!」


 谷貝はやや上目掛けて砲弾を発射する。その軌道は謙二から大きく外れ、謙二は最初は谷貝が何を目的としたのか見当がつかなかったが、すぐさま自身の後ろにいた存在を思い出し、気弾でその砲弾を相殺する。


「ほらほら、隙だらけだぜ」


「!?」


 そして気弾を放つために上を向いた謙二の隙を谷貝が見逃す筈がなく、謙二目掛けて砲弾を発射する。謙二はかろうじて後ろに下がりながら砲弾を防ぐことに成功するが、爆発の余波で後ろに吹き飛ばされる。


「いやー危なかったぜ。お前、なかなかやるな」


「女を率先して狙うような野郎に褒められても嬉かないね」


「いやいや、俺はちゃんと褒めてるんだぜ。だからさ、ちょっと取引をしたいんだよ」


「取引?」


 吹き飛ばされはしたものの、直ぐに立ち上がり、謙二は詞乃を守るように立つ。その光景を見て谷貝は、"なかなか使えそうだ"と考え、砲撃を止めてある取引を持ちかける。


「ああ、俺とお前でFクラスの代表になろうじゃないか」


「は?」


「お前はなかなかに強い。Fクラスながら俺と同じように闘いに使いやすいスキルを持っている。今ならそこの女のハチマキを取ったら仲間にしよう。どうだ? 悪い話じゃないだろう」


 その話を聞いて詞乃は、不安からか謙二の横顔を見た。もし、謙二が裏切り詞乃に襲いかかったとしたら、確実にハチマキを奪われる。そう一瞬思ったが、


「ははっ、面白い冗談だな。だけど断らせてもらうぜ」


「冗談だと?」


 謙二はその提案を笑いながら却下した。谷貝は断られるとは思わなかったのか、驚いたような顔をしたが、また冷静な顔にもどる。


「一応、理由を聞こうか」


「理由? そんなもん簡単だ、だってお前は俺達より弱いからな」


「なんだと? はっ、それこそ面白い冗談じゃないか。Fクラストップの俺より下位のお前が強いだと、そんなことありないな」


 謙二の言葉にこの日一番の驚きを見せた谷貝は、笑いながら謙二の話を否定する。謙二は、その否定を受けても全く動じた様子もなく話す。


「一つ言っておくと、お前より強いのは"俺"じゃないぞ………」


 謙二が言葉を言い切るかどうかと言ったその時。谷貝は謙二の話もそっちのけで、思考をしていた。


(何故こいつはこんなにも強気なんだ? もしや何か策でもあるのか………まてよ、あいつは今何処にいる)


 そう谷貝が疑問を思い付いた瞬間、自身のの右側のの木が、がさりと大きく揺れた。





ーーーーーーーーーーーーー


(あれは、光一?)


 詞乃は、谷貝の右手側の木が大きく揺れたと思った瞬間。谷貝に向かって今にも襲いかかろうとする人影をみた。右腕だけにアルマを纏ったその男は、紛れもなく谷中光一であった。


「このっ!」


 それは偶然か無意識だったのかもしれない。しかし、現実に谷貝は光一の顔へスモールキャノンの砲身を向けた。


(駄目。あのタイミングは、避けられない!)


 詞乃はあの砲弾の威力を思い出し、それを光一が至近距離で受ける場面を想像してしまう。まるで、スローモーションのようになった視界の中、詞乃は光一に向かって手を伸ばすことしか出来なかった。




ーーーーーーーーーーーーー


 

「なっ!?」


 谷貝は目を見開くほど驚いた。それもそのはず、右側の木が揺れたと思ったら、男が襲いかかって来たのだから。


(あの時かっ………あの時、一瞬砂煙で視界が奪われた瞬間に森の中に入ったのか)


 そう、光一は最初に谷貝の砲弾と謙二の気弾が相殺されたことによって巻き上がった砂煙に乗じて一旦森の中へと入り、谷貝に襲いかかる機械をうかがっていたのだ。

 だが、一つ光一が不幸だったのは、


(危ない危ない、もし左からこられてたらやられてたな)


 谷貝がスモールキャノンを装着(インスタリアム)している右腕側から攻めてしまったことである。それに、谷貝は光一の存在を疑問に思った瞬間に攻めたため、谷貝の反応が早かった。

 それらの要素が重なり、光一に向けて砲弾が発射されようとしたその瞬間。


「!?」


 突如飛んできた光の弾が谷貝のスモールキャノンを直撃する。それによりスモールキャノンの照準から光一は外れる。そして、光一の拳が谷貝を捉え、谷貝は数メートル吹き飛んで気絶した。



「だから言ったろ、強いのは"俺"じゃなくて"俺達"だって」


 谷貝が気絶し、無音となった戦場で謙二がそう気絶した谷貝に言い聞かせるように言った言葉は、そのまま誰も返すことなく消えた。


 

ふとアクセス数を見たらpvが十万を越えてました

皆様、こんな私の作品を見てくださってありがとうございます

これからもよろしくお願いいたします

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