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第六十五話

 生徒達は、笹山に連れられ保健室の前まで移動する。そこで、保健室の中から出てきた白衣姿の葉波が今回の検査の仕方を簡単に説明する。


  「笹山先生に同調(シンクロ)に関することは聞いたと思うけど、同調(シンクロ)率が高ければいいってものじゃないから注意してね。同調(シンクロ)率の維持には結構集中力がいるから、全力で集中して同調(シンクロ)率を上げるより、セーブした方が良いこともあるからね」


 最後にそう締めくくり、葉波は保健室の中へと入る。それから、出席番号順に一人づつ保健室へと生徒が入っていく。

 廊下では、自分の実力が出るのが怖いのか緊張した様子の生徒や、楽しそうに、かつ注意されないように小声で談笑する生徒等と様々な姿が見える。

 そして、もう廊下からすっかり人の姿は無くなり、一人の生徒が保健室から出てきたのを確認すると、最後の一人である光一が保健室の中へ入る。


  「失礼します」

  「お、光一君ってことは、ようやく終わりか」


 光一が中へ入ると、葉波はそう少し嬉しそうに言う。そして、椅子の背もたれに体重を預け、伸びをすると椅子を回転させて光一の方を向く。


  「じゃあ、この機械を頭につけて装着(インスタリアム)してね。そしたら出来るだけ集中して、アルマとより同調(シンクロ)するイメージを持つように」

  「はい」


 葉波は一度廊下でも説明したことを、ヘルメット型の機械を差し出しながらもう一度丁寧に説明する。その説明を受けて、光一は、短く返事をすると説明された通りの手順を行う。

 葉波は手元のパソコンを操作すると、苦い顔をする。そして、光一の方を向くと、


  「光一君、君。本気だしてないでしょ」


 そういい放つ。光一はその言葉を受けて、


  「根拠はなんですか? 俺はこれでも本気でしたよ」

  「嘘ね」


 光一の反論に短く言い返すと、葉波は手元のパソコンの画面を光一に見せる。


  「四十五パーセント、これが君の記録だけれど」


 葉波は、そこで一度溜めるように息継ぎをすると、


  「FクラスがDクラスを破る。こんな大それたことをやってのけた立役者がこんな記録なわけないでしょう」


 そう言い切る。さらに付け足すようにこう告げる。


  「私は君の全力が見たいんだよ、だから見せてはくれないかな? あの舞が強いって言うぐらいなんだからもっといけるでしょ」


 その言葉を受けて、光一は少し考えるように黙っていたが、口を開く。そして、


  「……条件があります」

  「何かな?」

  「先生が持っている一年生のデータを見させてください」


 光一が提示した条件は、とてつもなく大きなものであった。一年の全情報。これをしれたなら、次の代表戦でとてつもないアドバンテージとなる。その条件を受けて葉波は、


  「なら、こっちも条件があるかな」

  「なんです? 余程でもなければ受けますが」

  「簡単さ、君の同調(シンクロ)率が舞以上なら見せて上げるよ」


 そんな条件を提示する。光一はその条件を二つ返事で飲んだが、葉波は内心笑っていた。


  「(光一君は舞の実力を分かってないみたいだね、舞の同調(シンクロ)率は最大で八十八パーセント。そう簡単に越えられるものじゃない)」


 八十八パーセント。それは、かなりの才能がある者でもそうそういない数字であり、葉波は越えられないだろうと高をくくっていた。さらに、


  「(万が一越えられたら適当に偽の数字を言えばいいしね、そう簡単にこれだけの情報は見せられないな)」


 そう考えていた。確かにこの情報は果てしないアドバンテージであり、同時に一生徒渡して良いものでもない。だからこそこんな条件を出したのだ。


  「……」


 光一は、そんな葉波の内心も知らずに機械を被る。そして、集中するために目を閉じる。すると、


  「(……!? 何、今のプレッシャーは。まさか、光一君が?)」


 たった一瞬。葉波はとてつもないプレッシャーを感じる。そして、光一が機械を外すと、


  「さて、今は授業中ですので、放課後に見せてもらいに来ますよ、葉波先生」


 そう言って保健室から出ていった。





  「まさか、ここまでとはね」


 葉波は、光一が去ったあとそう呟く。彼女が操作するパソコンの画面には、


  "谷中光一  同調(シンクロ)率 百パーセント"


 そう表示されていた。



遅くなってすみませんでした

最近リアルが忙しくて、おそらく木曜日あたりまで更新出来ません

本当にすみません

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