第六十話
その後、三人の女にギリギリで勝利を納めることが出来た国崎と天川であったが、残りの時間があまり無いことからクラスメイト達との合流を諦めていたその頃。一之瀬や他のA,B,Cクラスの闘いの様子はというと。
『ねえ、鳳城さん。ちょっと迎えに来てくれないかな? 結構そっちから離れちゃったみたいで、普通に歩いたら間に合いそうにないからさ』
森のなかを一人歩いていた一之瀬は、一度足を止めると懐からトランシーバーを取りだし電源を入れて話す。するとトランシーバーの向こうからは、ため息が一つの聞こえた後に声が聞こえてくる。
『……分かりましたわ、では飛び上がりますので誘導を頼みますわ』
『OK、任せて』
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鳳城は今A,B,Cクラスの混線地帯で闘っている。一度は一之瀬を探すために森に入ったのだが見つからず、その上トランシーバーも通じないのでこの場所に戻って来ていた。
すると、腰に付けていたトランシーバーから通信が入る。鳳城は"もうほとんどのAクラスは此処にいるのに、一体誰からなのだろう"
そう思いながらも通信のスイッチを入れると、そこからは探していた人物の声が聞こえてくる。
「("ちょっと迎えに来てくれない"ですって? まあ彼が居なくても負ける道理は無いですが、居れば確実に勝てるでしょうし、まあ良いでしょう)」
『……ハァ。分かりましたわ、では飛び上がりますので誘導を頼みますわ』
鳳城はそう言うと、近くにいた指揮を任せていた男に少し戦線から抜けることを伝える。男は"え?"と言った表情をしていたが、鳳城は気にせず背中の機械的な羽を広げる。そしてその場で一度跳んだかと思えば、背中の羽を羽ばたかせ直ぐに周りの木よりも高く飛び上がる。
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「お、いたいた。やっぱり飛べるって凄いなぁ」
一之瀬は周りの木よりも高く飛び上がった鳳城を見て、そんな感想を述べると、トランシーバーで自分の方へくるように誘導する。
そして、
「まったく、残り時間くらい把握しておいて欲しいですわね」
「ごめんごめん、中々強い人がいて熱くなっちゃってさ」
「まあ良いですわ。ではさっさと行きますわよ」
「うん、お願い」
一之瀬の元に降りてきた鳳城とそんな会話をしながら、鳳城に抱えられて一之瀬は戦線へ降り立つ。
戦闘中に飛び立ち、帰って来たことで一之瀬と鳳城に皆の視線が集中するなか。一之瀬と鳳城は、特に気にした様子もなく。
「さてと、もう残り時間も少ないしどうする?」
「そうですわね、出切れば一気に片付けたいのでサポートを頼みたいのですが」
「分かった、それでいこう」
そんな会話をしていた。会話が終わると一之瀬と鳳城は自身以外のAクラスに、出来るだけ離れるように指示を出す。勿論そんな事をすれば他のクラスからの格好の的となる。それにより、ほぼ全方位からやって来る敵を見ながら一之瀬と鳳城は涼しい顔をしながら、
「鋭利な刃 (シャープエッジ)ver刃による包囲網 (ソードサークル)」
一之瀬がそう言って軽く地面を踏む動作をすると、C.Bクラスを逃がさないように刃の壁が、半径三十メートルほどの円になるように生成される。
「さて、手加減はしますがあまり動かない方が良いですわよ」
「紅光線 全方位発射!」
鳳城がそう言うと、手や周りを飛んでいた小さな機械に光が集まる。すると、次の瞬間にはそこから発射された光線を受けてその場にいたB、Cクラスは全員気絶してしまった。
唯一無事であったAクラスのメンバーは、その光景を見て呆然とすることしか出来ず、スピーカーから流れる授業終了の放送もあまり聞こえていなかった。