第五十九話
三人の女が気絶したことで三角包囲陣が解除され、中にいた天川が自由になる。
「大丈夫か、凛」
「うん、そっちこそ大丈夫なの? 智也」
二人は直ぐにお互いに駆け寄ると、無事を確認しあう。そしてお互い大きな怪我をしていないことを確認し、安心すると一つの疑問が湧いてくる。
「そういえば、その鎧と剣はどうしたんだ?」
「それなんだけど、なんか新しいスキルが発動したみたい。でも、詳しいことはあんまり分からないから授業が終わったら葉波先生のところに行ってくるよ」
そう言いながら国崎が、ハチマキの回収のために歩き出そうとした時。後ろから天川が声をかける。
「まあ、なにあともあれ凛が無事で良かったよ。それに、おめでとう、スキルに目覚めて」
「そうね、一度は危なかったけれどこうして無事で良かったわよ。それに」
国崎はそこまで言うと天川の方に向き直り、天川を指差すと、
「もう足手まといになんてならないわよ」
そう宣言する。すると天川はポカンとした表情を浮かべたかと思うと、
「俺は一度も凛を足手まといだなんて思ったことは無いぞ」
「え? でも、さっきの闘いも私はスキルに目覚めるまではなにも出来なかったし……」
言葉の最後が、掠れるように小さくなってしまった国崎に構うことなく天川は話続ける。
「確かに、スキルの差で単純な闘いじゃ俺の方に分があったかもしれないけどさ。凛が周りの気配を読んでくれたり、体の使い方を教えてくれたりしてくれたお陰で随分助かってるんだよ。だから、俺は凛がいなくちゃ駄目なんだろうな」
そこまで天川が言うのを、言葉を遮られた後は黙って聞いていた国崎は、顔を真っ赤にすると。
「そ、そうね。やっぱりあんたは私が居ないと駄目なんだからね! ほら、さっさとハチマキ回収して移動するわよ」
何かを誤魔化すように早口でそう言うと、ハチマキを回収して早足で歩き出す。なんで国崎がそこまで慌てているのかを、不思議に思いながらその後ろに着いていく。
スキル説明
三角包囲陣
三位一体型のスキルで発動条件は、
・三ヶ所にマーキングをする
・そのマーキングをした三ヶ所を線で結んだ中に対象がいること
この二つである。これを満たしたとき、範囲内にいた対象一人はピラミッド型の檻に捕らわれる。なお、この檻は発動者が解除するか意識を失わない限り絶対に解除されない。
音速の戦乙女 (ラデュカルヴァルキュリー)
発動すると全身が騎士のような鎧に包まれ、手には一振りの剣が出現する。
効果としては全身の身体能力がある程度上がり、特に速度にいたっては残像が映る程である。なお、スキルを発動すると強制的にそれまでの装備から鎧と剣に変わるため、他の装備をすることが出来なくなる。