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第五十五話

 鳳城灯がBクラスに合流してきたその頃、遊撃に回っていた一之瀬はというと。


 「自分の実力を把握してから挑んできてほしいものだね」


 そう言いながら気絶している数人の生徒からハチマキを奪う。あの後も、一之瀬は何度も襲われその度に返り討ちにしていた。そしてハチマキを全て回収を終えた時。一之瀬は後ろから聞こえる足音に振り向く。二人の男が歩いてくるのを見て一之瀬は、


  「(またか、B・Cクラスには無謀な挑戦者が多いな。ちょっと面倒になってきたかな)」


 そう思いながら男らの方に振り向く。二人の男は一之瀬が振り替えるとその場で立ち止まり、片方の男が口を開く。


  「お前は一之瀬颯真か?」

  「そうだよ、学年首席の一之瀬颯真だよ」


 一之瀬は学年首席のところを少し強調しながら答える。あわよくば恐れをなして逃げてくれないかと思っていたが、それを聞いても男は動揺した様子も恐怖を感じるそぶりも見せない。


  「お前の相手はコイツが努める、俺は手を出さないから一対一だな」


 そう言って今まで話していた男は数歩下がり、入れ替わりにもう一人の男が前へと出てくる。入れ替わりに出てきた銀色の髪が特徴的な男は、真っ直ぐに一之瀬を見据えて言う。


  「俺は木崎孝太郎だ、よろしく頼む」

  「一之瀬颯真だよ。僕は探してる人がいるんでね、早くかかってきてくれると嬉しいんだけれど」


 一之瀬は大言壮語にも聞こえる言葉を放つ目の前の男に、"お前ごとき直ぐに倒せる"と暗に言う。その意味を悟ったかは一之瀬には分からなかったが、その言葉を合図に木崎は一之瀬に向かって突進する。


  「(なにか手があるのか? だったら何かする前に方をつけるまでだ)」


 一之瀬は素手で突進してくる木崎に一瞬そう思ったが、仮に何か手があっても発動させるより早く気絶させてしまえばよいと考え、自身のスキルを発動する。鋭利な刃 (シャープエッジ)によって地面から数十本の刃が木崎に向かって飛び出す。


  「(貰った!)」


 一之瀬はその刃が迫っても特に何をする訳でもなく、只突進してくるだけの木崎を見て思わずそう思った。しかし次の瞬間、一之瀬の目の前で木崎が不自然なほどの急加速をする。


  「ッ! 少しはやるようだね」

  「決めるつもりだったんだけどな。でも俺のスキル、野生の本能 (ワイルドシャウト)は最強に届くみたいだな」


 一之瀬は急な加速に少し面を食らったものの、木崎の拳はしっかりとガードする。攻撃後、一之瀬から距離をとり静止した木崎は、目が見開かれ爪は尖り、そして最も目を引くのは頭上に存在する二つの獣の耳。変身した木崎の姿はまさに獣ようであった。


  「まだまだやらせて貰うぞ、最強さんよ」


 そう言いながら野性動物のように強化された脚力で一之瀬に一気に迫る。元々一之瀬は高い同調(シンクロ)率を誇り、アルマの性能を引き上げているが、木崎の野生の本能はその差を埋めるほどに木崎を強化していた。

 一之瀬はただ刃を発射するのは部が悪いとしたのか、手に刀をスキルで出現させると木崎に肉薄する。


  「(見える、見えるぞ! 一之瀬の攻撃が分かる!)」


 木崎は内申興奮していた。今強化された体では動体視力まで強化され、一之瀬の刀を振るう動きすらしっかりと見て避けられるほどだ。そしてその刀を掻い潜り、一気に懐に潜り込んだその時。一之瀬は一瞬笑ったかと思うと、刀を振るってないほうの手を木崎の顔辺りで振る。

 当然そんな攻撃に木崎は当たる訳がなく、紙一重で避けようとしたが、


  「ぐぁっ! 目がッ!」

  「油断大敵ってね」


 一之瀬が行ったのは、手に握り混んだ砂を木崎の眼前でばらまいただけである。それにより木崎は視界を一時的に奪われ手で顔を覆う。一之瀬はその隙に後ろに回り込み刀を降り下ろそうとする。


  「残念。見えなくても"聞こえてる"んだよ!」


 しかし、木崎はまるで見えているかのようにその刀を防ぐ。そう、木崎は聴力まで強化されており、それにより一之瀬の動きが分かるほど動作の音が聞こえていたのだ。刀を飛ばされ丸腰となった一之瀬は木崎から距離をとる。


  「随分と楽しませて貰ったよ。野生の本能 (ワイルドシャウト)確かに強いスキルだね」


 そう話す一之瀬は目の砂を除き終え、今にも向かってきそうな木崎を気にせずに話を続ける。


  「でも、野性動物程度が(ドラゴン)に勝てるとは思わないことだね」


 そこまで話すと、一之瀬は一泊置いてから口を開く。


  「鋭利な刃 (シャープエッジ) ver竜の鎧 (ドラゴンスケイル)」

  「!?」


 一之瀬がそう呟くと、一之瀬の姿がまるで銀色の鎧を纏ったかのように変化する。一之瀬はその姿のまま向かってきた木崎に対峙する。木崎はそれを気にせずに拳を放ったが、一之瀬がその拳を右腕で防ぐと同時に飛び出した刃に怯み、下がる。

 一之瀬はその隙を逃さず責める。今迄とは違い、木崎の拳が銀色の鎧に受け止められ木崎は攻めあぐねる中、一之瀬の攻撃は食らって無視できるものでもなく木崎はどうしても防戦一方となってしまっていた。

 木崎はだんだんと追い詰められ、トンと軽い音と共に自身の背中が木に当たったのを感じた。木崎は直ぐに横に飛んで目の前の一之瀬と、後ろの木という挟み撃ちから脱出しようとする。が、


  「なっ!?」

  「こいつで、終わりだ!」


 自身の制服が一之瀬の鎧から発射された刃により木に縫い止められており、一瞬回避が遅れた木崎に一之瀬は拳をクリーンヒットされると、木崎は数メートル吹き飛び気絶した。


  「まあ、準備運動にはなったかな」


 一之瀬はそう言って、スキルを解除するのであった。




 


  

 




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