第五十一話
A~Cの合同アルマ学授業学の始まっていたその頃、保健室で一人の保険医が作業をしていると、ある人物が入ってくる。保険医は椅子を回転させ入室してきた人物の方を向く。
「あら、笹山先生じゃないですか。今はA~Fの合同アルマ学の授業をしていたのでは?」
「合同アルマ学の授業は教師があまり絡まないからな、こうしてここに来る余裕があるのさ」
分かっているのに理由を聞いた保険医、葉波恵香は¨そうでしたね¨と軽く笑みを浮かべながら答える。
「それで、いくら時間があると言っても。授業中の今、わざわざ抜け出してここに来た目的は何ですか?」
「いや、ある生徒のスキル検査結果の資料を見せてもらいたくてな」
そう笹山が頼むと、葉波は机の上に置いてあるパソコン立ち上げながら話す。
「それはいいですけど、何も無しってのは」
「うっ……分かったよ。今日飲みに連れていってやるから頼む」
「奢りでお願いしますよ。さて、誰の記録を見たいのですか?」
笹山は今夜軽くなる財布の心配をしながら、葉波の質問に一人の生徒の名前を答える。葉波はパソコンを操作しながら、入学時に検査した生徒のスキル検査のファイルを開く。だが、一つ普通では無い点はといえば。笹山が閲覧したい生徒の名前を言う前から、葉波はある生徒の検査結果画面をディスプレイに表示させていた。
「谷中光一の検査結果を見せてくれ」
「やっぱり、笹山先生がわざわざ頼みに来るような新入生なんて彼ぐらいだと思いましたよ」
「ああ、あいつの実力はFクラスを優に越えている。アルマのパワーや種類もそこまでよくない、なのにDクラスを圧倒するぐらいだからな」
そう話ながら笹山は葉波が差し出してきたパソコンの画面を見る。そこには谷中光一の試験の結果とスキルの説明が書いてあった。
笹山はそのスキル説明を見ながら、
「(あいつ、あの時は全力じゃ無かったのか)」
そう思いながら思い出すのは、Fクラスに始めて授業をした時。エキシビションとして光一と闘うこととなり、不意を突かれたような形とは言え一方的に攻められたあの闘いを。
笹山が考え事をしていると、葉波が横から追加の説明を入れてくる。
「この子はあくまでパワーが凄いだけなのよね、しかも限界突破は一度使うと他のアルマパーツが壊れちゃうし。もう一つのスキルはしっかり装備を整えるとほとんど効果は無くなる。これに、アルマ学の試験点数に学年最下位のパーツ装備数。これが彼がFクラスの理由よ」
「そうか……じゃあ一つ聞くが、¨こいつは弱いと思うか¨」
「いいえ、かなり強いはずよ」
その問いに葉波はそう即答する。笹山はその答を聞いて少し安心して一息つくと、もう一つ尋ねる。
「他に気になる生徒はいたか?」
「一人のだけね、Cクラスの天川智也って子よ」
それを聞いて笹山は天川智也のファイルを開く。そこに書かれていた情報。特にスキルの説明欄に笹山は目を奪われた。
「彼の力は不安定だけれど、一度爆発してしまえばかなり強力よ。今なら彼のスキルを実際に見られるんじゃないかしら」
「そうだな、あんまり仕事をサボる訳にはいかないからな。行ってくる」
そう言い残して笹山は保健室から出ていく。そうして残された葉波は椅子の背もたれに体重をかけ、天井を見上げると。
「今年のクラス代表戦は面白くなりそうね」
そう呟いた。
谷中光一の能力レポート
攻撃を大幅に上げるスキルを二つも持つ。通常なら特殊系統のスキル二つを持っているなら、Aクラス確定である。だが、スキルの使い勝手が悪すぎることに加え、入学試験で装着できたアルマが一つだけということ。そしてアルマ学の筆記試験で百点程度であることが重なりFクラスとなった。
天川智也のスキル説明
スキル 勇気の形 (ブレイブハート)
自身のアルマを金色のアルマに変更する。そのアルマの性能は自身の気持ちによって上下する。感情が高ぶれば並みのアルマでは太刀打ちすることはできない。