表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/102

第五十話

 屋上へと入ってきた一之瀬は、辺りを見渡し一度がっかりしたような仕草をすると、


  「ここにもいない、か」


 そう呟く。その後天川達の方へ歩いてくると。天川の顔を見て一度薄く笑みを浮かべる。そしてこう切り出す。


  「やあ、入学試験ぶりかな? あれからどれだけ強くなったのかな、前よりも僕を楽しませてくれるといいんだけれどね」


 そう皮肉めいた言い方をする一之瀬に天川は、一之瀬の顔を真っ直ぐ見ながら、


  「余裕なのも今のうちだぜ、次の合同アルマ学で新しくなった俺の力を見せてやるよ」


 一之瀬に拳を突きつけながら宣言する。一之瀬はそれに対して¨それは楽しみだ¨と言うような笑みを浮かべた後。天川だけではなく後ろの国崎やアリエノール、鳳城の方に顔を向ける。そして一つ咳払いをし、¨おっと、ここに来た目的を忘れるところだったよ¨と前置きをすると。


  「今僕は人を探しているんだけれど、谷中光一って生徒がどこにいるか知らないかい? 身長は百七十五ぐらいの男で、素手でアルマを相手に出来るような人なんだけど」  


 そう尋ねる。その探している男の特徴を一之瀬が話すと、天川と国崎の目線は鳳城の方へと向く。二人からの視線を受けている鳳城は、一之瀬の話す男の特徴を聞いて目を丸くしていた。

 一之瀬はそんな三人の反応を見て何か心当たりがあるのかと思い、¨鳳城さん、何か心当たりがあるのかい? そんな反応して¨と、その反応の理由を聞く。すると鳳城が口を開く。


  「実は私も人を探しているのだけれど、その人の特徴が貴方の探している人と一致していますの」

  「! まさか鳳城さんとも面識があるとはね」

  「で、その人は光一と言うのですか?」

  「ああ、僕は入学試験の時にそこの二人と闘った後にその光一君と闘ったんだ。……負けたけれどね」

  「「!」」


 天川と国崎は一之瀬の言葉を聞いて驚愕した。入学試験の、時には二人がかりでも歯が立たなかった相手。それが負けたというのだ。しかも一之瀬は学年首席、単純に言えば¨学年最強¨と言っても可笑しくない筈なのにそれが負けた。ならばその相手はどれ程の力を持っているのだろうと。

 天川達が驚愕していると、しばらく何の反応を見せてなかったアリエノールが口を開く。


  「あの、その谷中光一さんでしたら入学式の日に一度お会いしましたよ。私が職員室までの道に迷っていたときに案内してくれたんです。しかも流暢なフランス語で。」

  「それは本当かい! もし知っているのなら光一君の所属クラスを教えてくれくれないかい? あれだの実力を持っているなら上位クラスにいるだろう、と思ってA~Cクラスを調べたのだけれど会えなくてね」


 かなりの剣幕で捲し立てた一之瀬に少し引きながらも、アリエノールはその、問いに答える。天川達も学年首席を負かすほどの実力者はどこに所属しているのか、と思ってアリエノールの言葉に耳を傾ける。その口から発せられた言葉は直ぐには信じられないものであった。


  「確か¨Fクラス¨の襟章を着けていた筈ですけど」









  ___アリエノールからの信じられない発言から時は流れ、今はA~Cクラス合同アルマ学が始まる数分前。各クラスの生徒達は、D~Fクラスが行ったハチマキ争奪と同じ説明を受けると。もう既に各クラスは会場に入り拠点を構え、後は開始の時間を待つだけであった。殆どの生徒が顔に緊張した表情を浮かべているなか、天川は自分の力を確かめるように自身の手のひらを見て、そして握りしめた。


  「よしっ!」

  「緊張してるかと思って見てみれば、そんな心配は無用だったみたいだね」

  「ああ、あの一之瀬よりも強い奴がFクラスにいるんだ。こんなところで立ち止まってる場合じゃないだろ」

  「そうね。……頑張ろう、智也」

  「そうだな、いっそのことAクラスを倒してみようぜ。多分その谷中光一って奴がFクラスを一位にしたみたいにな」


 そこまで言ったところで、森のような会場に設置されたスピーカーから声が流れる。


  『これより、A~Cクラス合同アルマ学の授業を始めます。では、始め!』


 その言葉が開幕の合図となり生徒達は走り出す。


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ