第四十九話
翌日、光一がいつものように学園へ登校すると。同じ十人に一人ほどの割合で生徒達が光一に鋭い視線を送ってくる。それもその筈、光一はクラス合同アルマ学の授業でその授業内での最高位クラスを最下位に叩き落とした張本人であり、しかもアルマは右腕のみと見た目のインパクトもそこそこある。
これらの事を生徒達が噂をしたお陰で上位クラスは、¨そんなのデタラメもいいとこだな¨¨例えそれが本当でも俺達には敵わないんだろ¨といった態度を取っている。しかしCクラスの一部やDクラス以下の生徒は、下手をしたら自分が負けかねないといった考えからか光一をマークするようになった。おかげで光一は朝から嬉しくもない熱い視線を不特定多数から浴びる羽目になっていた。
「よう、光一。……だったよな、お前凄いな! あのDクラス相手にあんなにハチマキを取ってくるなんてよ」
「そうか? あんな量のハチマキっていってもDクラスはほとんどの奴がニ、三本以上のハチマキを持ってたから、体した数は倒してないぞ」
「それでも俺達Fクラスが一位になったのはお前のお陰なんだかよ、胸張っていいだろ。それに、いつか機械があったらお前とも闘ってみたいからな」
「そうだな、いつか手合わせ願いたいな」
光一が教室に入るとそう謙二が話しかけてきたので、相手をしていると。光一よりも早く登校し、隣で座っていた詞乃が二人に話しかけてくる。
「ねえ、二人とも。そういえば二人は最初の試験でどのくらい点数を取ったの?」
「運動に自信はあるが勉強はちょっと苦手でな……」
「(これならどうよ? これなら自然にあいつの実力が分かるかもしれない)」
謙二が詞乃の質問に答えているなか、光一は一瞬自身の目を見てきた詞乃に対して、
「(考えたな、点数を聞いて俺の実力でも暴こうって算段なのかもしれないが)」
そう考えていると。二人は光一を置いて話を進める。
「ああ、ちなみに私はアルマ学の方は四百点中百二十点、ぐらいだったかな。ちなみに一般は三百八〇ぐらいだよ」
「おお、山崎は頭いいんだな。俺はアルマ学は百点ぐらいだったし、一般は三百点ぎりぎりぐらいだぞ」
「で、あんたはどうなよ。私達が言ったんだから言わないは無しよ」
詞乃は、自身と謙二が点数を開かしたところで光一に話を振る。(ちなみに、アルマ学のテストは筆記は二百点と実技二百点。一般は国数理英社の五科目である)詞乃はこのタイミングなら光一は話をはぐらかしたりはしないだろう、と思ったのだろう。光一は、
「(少々強引だが、¨恥ずかしいから教えない¨と言ってもいいんだが。それだとまた詞乃がしつこく色々やりそうだからな、正直に言うとするか)」
少し強引でも詞乃の作戦に乗らないという手があったが。後々厄介になりそうだと考え、詞乃の作戦に乗ることにした。
「俺も謙二と同じようにアルマ学は百点ぐらいだったな、一般は四百七十点ぐらいだったはず」
「「へ?」」
謙二と詞乃はそんな間抜けな声を挙げると、光一に詰め寄ってくる。
「四百七十点って、一般なら学年トップクラスじゃない! 証拠見せなさい証拠!」
「分かった、分かったから落ち着けって。ほらこれでいいか」
光一は詞乃から一歩後ずさると、鞄から一枚の紙を取り出す。
「……確かのようね。まさかあんたがそんなに頭良いなんてね」
「なんでお前そんなに頭良いのに此処にいるんだよ」
光一の見せた、入学時に渡された入試の点数が書かれた資料を渡すと二人とも落ち着いたのか、光一から離れる。
「なんで此処にいるって言うけれどよ、ここの学園のクラス分けは一般は関係ないだろ。だから俺はここにいるんだよ」
「あ、そういえばそうよね。アルマ学課に進む生徒の一般の点数は合否判定ぐらいしか使わないんだっけ」
「そうだったのか、それは初耳だな」
「お前な、自分の受ける高校の仕組みくらい覚えとけよ」
光一の説明に納得した詞乃と謙二が席に着くと、担任が教室に入り朝のホームルームが始まる。
光一は担任の連絡を話し半分で聞きながら、窓の外を見て¨今日はどうするかな¨と考えていた。
時は流れ昼時、光一が多数の視線を浴びながらゆっくり昼食を取れそうな場所を探していたその頃。天川智也は、
「ふぅー、やっと昼か。さて、早く食べようぜ」
「食べるのはいいけど、あんまり食べ過ぎると動きが悪くなるわよ。午後に合同アルマ学の授業あるんだから考えて食べなさいよ」
「智也くんは食いしん坊ですね、でも国崎さんの言う通り抑えて食べた方がいいですよ」
「分かった分かった、腹八分目にしとくよ」
そんな会話をしながら国崎凛とアリエノールと共に、屋上で昼食を食べる用意をしていた。そして天川達が昼食を食べ始めると、屋上へ通じる扉が開かれ、ある女生徒が入ってくる。その生徒は天川達とは直接の面識は無い、しかし殆どの生徒が名前を知っている生徒。
「ここには……いなさそうですわね」
その女生徒がそう呟くと、天川の方に向かって歩いてくる。
「ちょっとよろしいかしら」
「あ、別に構いませんよ。何か用ですか?」
「ええ、人を探していましてね」
国崎がそう訪ねてきた女生徒に受け答えをしていると、天川の隣にいたアリエノールが天川に話しかけてくる。
「智也くん、あの人って」
「ああ、あの学年次席で鳳城グループ社長の一人娘の鳳城灯だな」
そう天川とアリエノールが話していると、鳳城は何かに気づいたようにアリエノールの方を向くと。
「あら、貴女は確かアリエノールさんでしたわよね。ちょっと聞きたいのだけれど、この辺りで素手でアルマに対抗できそうな人に心当たりはないかしら?」
「え? 素手で、アルマに。ですか」
「ええ、そうよ。おそらくはこの学年の生徒で性別は男。身長は百七十五ぐらいかしら」
「えーと、ちょっと分からないですね。力になれなくてすみません」
「いいえ、こんな条件しか提供できない私の方が悪いのですからそう気を落とさないで」
そこまでいったところでまた屋上の扉が開かれる。次に来たのは男。それも直接の面識は無くとも、鳳城のように殆どの生徒は知っていて。国崎、天川、鳳城は実際の面識もある人物。そう、一之瀬颯真がそこにいた。
なんか変なところで切れて申し訳ないです。おそらく次回からA~Cクラス合同アルマ学習編が始まります。