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第四十七話

  「……ここは何処? 私は確か……あっ! あ、あいつは!」


 藤堂花梨が目覚めたのはベットの上であり、起きてすぐは思考が定まらなかったが、暫くすると先程の事を思いだし光一を探そうと周りを見渡しベットから降りようとしたその時。隣のベットから聞き慣れた声が聞こえてくる。


  「ん、起きたか。花梨」

  「れ、麗。ここは、何処なの? 見たところさっきまで合同体育をやっていた場所ではなさそうだけど」

  「保健室さ、私たちは強く頭を打ったから少し休んでろ。とのことだ」

  「そう……確かに結構な勢いで頭を打ったからね」


 そこまで言ったところで、花梨の頭に一つの疑問が生まれる。それは、


  「ねえ、ちょっといい? 麗」

  「なんだい? 花梨。早く休んだ方がいいぞ、なにせ頭の上から木が倒れてきたんだからな」

  「うん、そうなんだけどね。あの時あそこには私と麗しか居なかったと思うんだけれど、誰が私達をここまで運んでくれたの?」


 そんな至って簡単な疑問であった。あの場所に同じDクラスの生徒が戻ってくるとは考えづらい、だとすれば一体誰が親切に私達を運んだのか。その疑問を聞いて麗は、一度¨何を言ってるんだろう¨と言った表情をしたが、直ぐに納得したような表情を浮かべると。


  「何を言ってるんだ花梨。人なら私達の他にももう一人いたじゃないか」

  「え……まさか」


 花梨はその麗の言葉を聞いて理解した、自分と麗をここまで運んでくれたのは、あの男。つまり光一であったと。

 確かに普通に考えれば、倒した相手を襲撃された時のリスクを高めてまで助けようなどとは思わない。だからこそ選択肢から外していた人物、だが光一はそんな花梨の想像を上回り二人を助けた。


  「そっか、負けちゃったんだ。私達」


 花梨はそう呟くように言いながらベットに横たわる。自分のせいで負けたという思いから少し感傷的な気分になり、保健室の天井を見上げていると、同じく隣で寝ていた麗に手を握られる。


  「なぁ花梨、今回は皆で挑んで皆で負けた。だからそう一人で抱え込むな」


 花梨は、手を握ったままそう言った麗の言葉に何か安心したような顔になると。握られた手を握り返し、


  「次は絶対勝とうね、麗」

  「ああ、そうだな。花梨」


 二人は顔を見合せそう言うと、安心からか襲ってきた眠気に身を身だねた。








  __時は少し遡り、麗と花梨を送り届けた光一はというと。


  「大丈夫なの、光一? 結構歩いたけど」

  「このぐらいでへばるような体してないさ(本当はかなりキツかったがな)」


 詩野と共に一息つけそうな場所を見つけ、試験終了を待っていた。光一は落ち着いた様子で周りを警戒しながらも、体力の回復に努めていたが。同じく落ち着いるように見える詩野は、他のFクラスが心配なのかそわそわとした仕草が隠しきれていない。

 そうしてしばらく待機していると、各場所に取り付けられた放送機材から放送が流れてくる。


  『時間です、これにてD~Fクラス合同アルマ学の授業をおわりにします。生徒達は直ちに最初の集合場所に集まって下さい』


 その放送指示に従い、生徒達は最初に説明を受けた場所へと集合する。光一らが集合場所に着いたときには、Dクラスの集まりが悪かったが、もうほとんどの生徒が集まっていた。生徒達の顔はEクラスは明るいものが多く、Fクラスは反対に暗い顔の生徒が大半であった。


  「どうしたの? 皆」


 詩野がクラスメイトに事情を聞くと、あのEクラスとの闘いで思ったほど成果を挙げられず、保有ハチマキは詩野の持つ二十本ほどしかないという。


  「それでは、各自並んだら前から各クラスの籠にハチマキを入れるように」


 しばらくして生徒が揃うと、笹山先生がそう言って各クラスの前に籠を一つづつ置いていく。それにハチマキを入れていく最中ではEクラスは大半の生徒が一本もハチマキを籠に入れない姿を見て、Dクラスは声を挙げずに笑っていた。


  「(俺達Eクラスは半分ほどDクラスにとられはしたが、Fクラスのハチマキを十数本は持っている。恐らくFクラスは残りのハチマキをほとんどDクラスに取られたのだろう)」


 ハチマキを入れていくなか、大半のDクラス生徒がFクラスが最下位だと思っていた。確かにFクラスはEクラスとの全面戦闘でもあまり成果を挙げられず、しかも一人にハチマキを集中させる作戦まで見破られた。この結果からFクラスが最下位だと同じFクラスでさえそう思っていた。が、一人だけ例外がいた。


  「えーと、確か此処と此処に入れてたはず……」

  「(速くしろよ、どうせFクラスが最下位なんだから。学年全体でも最下位が見栄張るなよ)」


 Fクラスの最後の男。つまりアルマ学の学年最下位が懐に手を入れるのを見て、ほとんどの生徒は¨ハチマキはないけれど、あるように振る舞い見栄を張っている¨と思っていたその時。


  「ハチマキは無駄にかさばるから持ち運びに苦労するな」


 ゆうに三十本以上はあるハチマキを籠に入れた男の姿を見て、皆は一様に目を丸くしていた。


  



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