四十三話
光一が同じ班のメンバーを追い返していたその頃、安室麗達は光一に指定された場所へと向かっていた。
「ねえ、花梨。作戦って何よ?」
「本当は作戦って言えるほど大したことじゃないんだけどね。そのFクラス人は、こっちが数人程で来るように麗に指示させていたから、最初に指定した人数で攻撃を仕掛けて、第二波で後から攻撃を仕掛けるってだけだよ」
「確かに今の戦力差ならそれが簡単でいいわね」
光一は麗にトランシーバーで、¨Fクラスのグループを見つけた、数人程のメンバーを追加してくれれば、充分対処できる¨と言った内容の指示を麗に出させていた。つまり光一は一対一では基本的にFクラスはDクラスには勝てない、だが人数で勝る闘いに持ち込むためにこの指示を出させたと花梨は考えていた。
そこでまず第一波として指定された人数でFクラスの前に現れ、油断した隙に後方待機させていた残りのDクラスを投入し、人数の差を無くしたところで個々の戦力差でFクラスを殲滅する作戦を花梨は立てた。
「(もうあんな油断はしない。あいつは私が倒す!)」
麗はそう強く心に決めると、先程の光一との戦闘では恐怖が先行して、逃げることを選んだせいで使わなかった自身の武器を出現させる。刀を型どったサブパーツは、まるで麗の決意を現すように光っていた。
「着いた……麗達はここで待機していて、私達が先に出る」
「分かった、気をつけて」
そう言い残して花梨達、第一波を担当するメンバーは指定された場所へ向かう。
「誰もいませんね」
「気をつけて、隠れてるかもしれないよ」
花梨達が指定された場所へ着いた時、そこには誰も居なかった。花梨達は奇襲を警戒して回りに視線を向けたその時。
「……ッ! 全員待避!」
花梨が何かに気づきそう叫んだが、近くの木から飛び降りてきた誰かに襲われ、メンバーの一人が声も挙げずに気絶した。
木から飛び降りてきたのは右腕のみアルマを纏い、何を考えているのかまるで分からない目をした男だった。男は自身を取り囲むように飛び退いた人影を見て、こう言った。
「……隠れてないで出てきたらどうだ、特にあの時俺を襲った女、俺を倒したいんじゃないか?」
「なっ!」
花梨は直ぐに理解した、目の前のこいつが麗の話していた男だと。さらに目の前の男は既に第二波に気がついている。メンバーが一撃でやられたことなど、衝撃的なことが重なり花梨らは思わず絶句した。
「クソッ、あいつ俺らに気づいてやがる!」
「仕方ねぇ、突入するぞ。一人倒して油断してる今ならやれる!」
「あ。ま、まて! 不用意に突撃するな!」
後ろに待機していた第二波組はあっさりと仲間の一人がやられ、さらに自身らの存在に気づかれていることに動揺と怒りを感じて、男に向かって飛び出す。
「(何だ? あの格好は)」
男に向かって飛び出したメンバーは、自身の武器や拳を叩き込もうと跳躍した瞬間に見た光景にそんな疑問が浮かぶ。男は顔が後ろを向くほど体を捻ると、
「!?」
轟! そんな音が聞こえるようなほど高速で右腕を凪ぐ。飛び出したメンバー達はその右腕に凪ぎ払われ、数メートルほど吹き飛び気絶した。
この時点で、残っていた第二波のメンバーは全員逃げ出してしまった。目の前で人間が数メートルも吹き飛び動かなくなった光景を見た上に、もしかしたら次は我が身かもしれないとなったら逃げ出すのも無理はないだろう。
だが、その中で一人だけ歩を前に進め、男の前に現れた人物がいた。その人物は男に刀を突きつけると。
「さっき見たいにはいかないわよ。あんたを倒すのは私なんだからね」
「面白い、かかってきな」
アルマを右腕のみ纏った男、谷中光一と一度はそれに倒された女、安室麗が再び合間見えた瞬間であった。