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第四十二話

  「じゃあ、これは貰ってくぜ」


 そう言って光一は、女のハチマキとトランシーバーを持って去っていった。

 女は疑問であった。確かに、先程光一に無理矢理偽の情報を流させられたが、それは女が他の同じクラスの生徒と会って訂正すれば偽の情報に流されることは無い。

 女は光一の背中が見えなくなったのを確認すると、直ぐに走りだしてクラスの本拠地としている場所まで移動する。そこで荒い息を整えて、クラスのリーダー的存在の女生徒に現状を喋ろうとしたその時、


 「どうしたの? そんな荒い息して。確か麗ちゃんがFクラスのたまり場を見つけたって知らせがきてたけれど」

 「ああ、その事なんだが……」


 そこまで言ったところで、女こと安室麗(あづちれい)は言葉につまる。なぜなら、


  「(さっきの状況をなんて言ったらいいんだ?)」


 そう、先程の状況をそのまま¨Fクラス一人相手に三対一で挑んで負けて、脅されました¨なんて言えない上に、信じてもらえないだろう。


  「ん? どうしたの?」

  「それは、その……」


 麗はリーダーの問いかけに対してうつむいてしまう。

 麗の心には、光一を恨む感情以上に自信を責める感情が渦巻いていた。三対一で挑んで負けた事もそうだが、脅しに負けたことやトランシーバーまで奪われたという事実が、より一層麗の心に重くのし掛かっていた。


  「(ここまで計算していたから、あの男はあっさりと私を解放したのか)」


 麗はあまりの責任感に耐えきれず、下を向いて目に涙をうかべる。するとリーダー格の女が麗を抱き締める。


  「大丈夫だよ、麗。むしろよく戻ってきたよ、失敗はこれから取り戻せばいいさ」

  「花梨……ありがとう」


 麗はリーダー的な女、藤堂花梨に抱き締められ、音もなく頬に涙を伝わらせる。

 光一は、このような人の優しさまでは計算できていなかった。


  「うん、もう大丈夫だ。心配かけたな花梨」

  「いやいや、大したことはしてないよ。それよりもそのFクラスの男だけど……」

  「そうだな……どうしたものか」


 二人は、光一偽の情報を流した光一をどうするかについて考えていると。


  「花梨さん。Fクラスのたまり場が分かったって麗さんが……」

  「ああ、そのことなんだけれど。ちょっと皆を集めてくれない?」

  「? はい、分かりました」

  「いったい何をする気だ?」

  「まあ、見ててよ」


 花梨は自身のDクラスのたまり場にいる生徒を集めると、自身の作戦を伝える。


  「Fクラスの奴に脅されて無理矢理言わされただって!」

  「ああ、そうだ。だが、今回はそれを逆手にとる。協力してくれるかい?」


 Dクラスのメンバーは、¨くそう、麗さんを脅すなんて¨や¨しかも泣かせたって噂だぜ¨と言ったことを囁いていたが、花梨の協力を求める声に、皆息を会わせて同意の声を挙げる。


 



 少しだけ時は遡り、麗がDクラスのたまり場へと向かっているころ光一は、


  「お、いたいた。皆きれーにハチマキ盗られてるな」


 同じ班のメンバーが襲われた辺りにきていた。光一は班のリーダー的な存在からトランシーバーを取ろうとすると。


  「うっ……、誰だ……。お前か、どうした? Dクラスの奴らに襲われて逃げ出したやつが今更」


 リーダー格の男が目を覚ます。どうやら光一がDクラス相手に逃げ出し、今戻ってきたと思っているらしい。


  「何勘違いしてるかは指摘しないどいてやるが、速く基地に戻った方がいいぞ。その体じゃ足手まといだ」


 リーダー格の男は一度光一を鋭み、何か言おうとしたが口をつぐみ。まだ気絶している仲間に、声をかけてFクラスのたまり場に帰っていった。




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