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第四話 普通の終わり

 …………………ここは、どこだ?

 光一が意識を取り戻すと、最初に浮かんだ言葉はそれだった。辺りを見渡すと、地平線の先まであたり一面真っ白な世界。


(俺は、仮に生きていても一生寝たきりがあり得る勢いでトラックに引かれたはず。しかし、周りの光景は病院では……無いだろう)

 

 そんなことを考え、とりあえず何か情報を得ようと再度周りを見渡すと。


「やあ、目は覚めたかい?」


 光一はその声に驚き、その場から飛び退いてしまう。そして声のした方を向くと、そこには先ほど突き飛ばしたはずの少女が不思議そうな表情をしていた。

  

「ありゃ、驚かせちゃったかな。安心していいよ、別に危害を加えるつもりは無いからさ」


 そうにこやかに笑いながら告げる少女に、光一は少し不信感を抱きながらも口を開く。


「ここは、どこだ? それに何故俺は五体満足でここにいる? 知っていることが有るなら教えてくれ」


 光一はこの少女が何か知っていることを願い、今最も知りたい二つの疑問について話す。


「そうだね、まずはこの場所について話すよ。ここは天界、まあ、君たちが住んでる世界とは違う世界って認識でいいよ」


「二つ目の質問の答えだけど、それは私の不備で君が死んでしまったから、その保障の為にと言ったところかな。これも私より格の高い神様から言われちゃったし、補償をしないと返せないんだよね。ちなみに、補償には君を生き返らせるってのも入ってるから」


 天界? 世界が違う? 目の前の少女のせいで俺が死んだ?質問をする前よりも増えてしまった疑問に頭を抱えながらも、光一はさらに詳しい説明を求める。


「詳しく説明するなら、まずは、私が人が言う言葉で神と呼ばれる存在だってことを信じてもらう必要があるけれど、信じられる?」


「ああ、信じよう、こうして五体満足で俺が立っていることが何よりの証明だ」


「ありがとう、じゃあ詳しい説明を始めるよ」


 この少女の話を要約するなら。

・この少女は神である。

・人間界に興味を持ち、情報収集の為に本屋へ行く途中でたまたま俺に会った。

・俺に会ったことで、本来なら電柱にぶつかるトラックが神に道案内をして立ち止まっていた俺を巻き込んで事故を起こした。

・つまり間接的に俺を殺したのはこの神だ、だからその保障をするために天界に俺を呼びたした。


「本当にごめんね、私が人間界なんて行こうと思わなければ君は死なずに済んだのに」


「いや、過ぎたことはしょうがない。だが保障ってのは何だ?俺を生き返らせてでもくれるのか?」


「本当ならこのまま生き返らせてあげたいんだけど……」


「何か問題でもあるのか?」


「実は……」


 口ごもったことに質問すると、神はこう説明した。神の不手際で死に、さらに人が入ることなどほとんどない天界にまで呼び出した人間を何も無しで返すことは出来ないと。


「じゃあ、俺はどうすればいいんだ?」


「神の従者となればこの問題は一応解決するよ」


「神の従者? 俺が天使にでもなるっていうのか?」


「違うよ、人間で有りながら神の協力者になるってことさ、これなら君は生き返れる上に特殊な能力まで身に付く」


 特殊な能力という単語に、魅力と同時に少し嫌な予感がしつつも光一は それについて聞く。


「何故そんな能力がいる?」


「神に協力する上で、何かしらのトラブルに巻き込まれた時に対処しやすいようにさ」


 光一はそこまで話を聞いたところで、顎に手を当てながら少し考える。¨神の従者とやらになっていいのか¨を、


(神の従者とやらについては分かった。今のところデメリットらしきものは¨神の手伝い¨って点だな。確かに無理難題を押し付けられたり、馬車馬のように働かされたりする可能性もあるんだろう)


 光一はパッと思い付く、最悪の状況を思い浮かべたが


(ここで受けなかったら恐らく俺はこのまま死ぬんだろうな。この神は、さっき補償をしないと返せない、そして補償には生き返らせることも入っいると言っていた。つまり、ここでこの提案を受けないとあのままトラックに引かれて死ぬか、ここにずっと居る羽目になる可能性が高い。それに俺は人間、相手は神だ。今でこそ対等そうだが、その気になれば俺という存在を抹消されても可笑しくない。だったら)


 光一はそれよりも最悪の展開になる事を恐れた。神の言葉を信じるなら、この提案を受けるならとりあえず生き返ることはできる。光一は後々のリスクよりも、今は死ぬか生き返るかの状況をなんとかすることを選んだ。


「分かったよ、女神様。俺は貴方の従者に成ろう」


「ありがと、だけど貴方じゃなくてリース。それが私の名前だよ」


「なら俺も、谷中光一って名前がある」


「そうだね、これからよろしく、光一」


「こちらこそよろしく、リース」


 二人はそう話すとリースが光一の胸に手を当てる。


「?」


「光一の魂に能力を刻んでいるのさ、能力はランダムだから文句は言わないでよ」


 リースが光一の胸から手を離すと、光一が足元が光の粒となっていく。光一はそれに少し驚きながらも、自身が光の粒になっていくという不思議な感覚に身を任せながら、リースの話を聞く。


「これであと一、二分もすれば光一は人間界に戻っているはずだよ。あと、能力の説明は紙にでも書いておくからあっちで見てね」


 その言葉を最後に光一は、まるで旅行へ行く人を送るように小さく手を振るリースを見ながら全身粒子となり、天界から姿を消した。





「ここは、さっきの交差点か」


 次に光一が気がついたのは、先ほどトラックに引かれた交差点だった、しかし光一は引かれたことになっておらず、トラックが電柱に激突した事故となっているようだ。


「そういや能力の説明を書いた紙があるって言ってたけど、どこだ?」


 リースの言葉を思いだし、ポケットを漁ると一枚の紙が出てきた、そこには能力とその説明が女の子らしい字で書いてあった。


・神様召喚:いつでも私に会える。 ※時間制限あり。

・自身操作:自分の身を自分の思い通りに動かせる。


 この紙を見て光一は小さくこう呟いた。


「何これ」


     

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