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第三十九話

  「さて、先程先生の実力は凄いと分かりましたし授業を始めませんか? 俺や皆も先生ほどとは言わなくても、同調の精度を上げたいと思ってますし」

  「お、おう。分かった。それではアルマの同調のコツに関しての授業を始めるぞ」


 笹山はアルマを外して、まるで先程の攻防は笹山がずっと上手だったような顔をしている光一の方をちらりと見る。光一は近くの友人と見られる男子生徒と話をしていた、授業中の私語として注意する気は起きなかった、それよりも先程の攻防が笹山の頭から離れなかったからだ。


  「(あいつ、さっきの組手では最低でも私以上の練度で同調を使っていた。それだけならまだいい、問題は……)」


 笹山は同調のコツを教え、生徒達にその場で同調を使ってみるように指示を出すとまたまた考え事にふける。


  「(あいつ私の肘を破壊しようとしていた、¨一切の躊躇なしでだ¨あれは不用意に近づいて腕を捕まれた私も悪いが、普通人の腕を破壊しようとするか?)」


 あの攻防で光一は一切の躊躇無しに笹山の肘を破壊しようとしていた、アルマの同調は必死になって覚えたでまだ通る。が、あの格闘術に躊躇の無さはそうそう身に付くものではない、笹山はその日一杯この攻防について考えていた。





  「(ちと熱くなりすぎたか、でもあの先生結構動けるな)」


 光一は皆が同調の練習をしているなかそんな事を思っていた。笹山が先程光一に押されていたのは油断していたからであり、最初から全力で闘えばもっと違った結果になったかもしれない。

 光一は自身操作により同調もほぼ完璧、宗一の達人技もある程度使える。が、闘いにおいて重要な経験が笹山に比べて圧倒的に不足している、特にアルマを使う、と言ったような元の世界では経験出来ないようなものではその差が出やすい。と、光一はそこまで思考したところで、耳に入ってきた授業終了のチャイムの音により思考を打ちきる。



  「説明してくれない」

  「何をだ」

  

 昼休みとなり、昼食を食べようとした光一にそんな事を隣の席の詩乃から言われる。光一は知らぬ存ぜずで通そうとしたが、


  「惚けないで、さっきの先生との模擬戦。あれがアルマ学最下位の動きとは思えないんだけれど」


 あっさりと看破される。光一は軽くため息をつくと、


  「あれはただがむしゃらに突っ込んで行っただけだ、現に笹山先生に有効打は当たって無かったろ」

  「確かにそうだけど……」

  「じゃ、俺は昼飯食べてくるから」

  「ちょ、まって」


 詩乃がそう呼び止めるものの、光一は既に食堂へと向かう人混みに紛れて見えなくなってしまった。





 学園の屋上で三人の男女の姿が見える。どうやら弁当を広げ昼食を食べるようだ。


  「あー腹減ったー。ようやく飯にありつける」

  「もう、智也君は随分燃費の悪い体してるんだね」

  「男子高校生ってのは燃費が悪いもんなんだよ」

  「ちょっと前まで中学生だったでしょうが」


 天河と国崎にアリエノールの三人は、そんな会話をしながら弁当を広げ談笑をする。アリエノールもすっかり緊張がほぐれ楽しそうに会話をする。


  「おー随分気合い入った弁当を持ってきてるんだな」

  「そう? そんなに手間かけてないわよ」

  「冷凍食品だらけの俺よりは十分豪華だよ」


 天河は国崎の栄養のバランスも取れており、彩りも野菜多めで鮮やかな弁当を見てそう言う。冷凍食品が中心の天河からしたら、手作り感溢れる弁当を見てそう漏らすのも無理はない。


  「アリエノールさんはどんなお弁当なの?」

  「私はサンドイッチを作ってきました」

  「うーむ、これもまた凛とは違った方向に鮮やかな弁当だな」

  「そうね、さすが花のフランスから来ただけあるわね」

  「い、いえ! そんな大したものではないですよ、誰でも簡単に作れますし」

  「「(面白い反応するなー)」」


 天河と凛は謙遜するように慌てるアリエノールを見てそう思ったりしながらなどして、三人は楽しく昼食の時間を過ごす。







 時は流れ、生徒達は帰りのHRで担任から重要知らせを受ける。それは、


  「はい、皆さん一日ご苦労様でした。さて、皆さんは本日の放課後から購買を使うことが出来るようになります。なお、ポイントは既に襟章に入っていますので。それではさようなら」


 担任はそれだけ言うと教室から出ていく。

 ¨購買¨この言葉が出てきた瞬間生徒達の間で少しざわめきが聞こえる。勿論ただの購買なら重要お知らせとはならない。では、何故生徒達からざわめきが聞こえるかと言うと、


  「なあ光一、早く購買行こうぜ。パーツが売り切れちまうよ」


 今謙二が言ったことから分かるように、この学園でパーツを買う事が出来るのは購買だけなのである。(購買の利用開始に伴い、生徒達に支給された初期アルマは回収された)


  「ああ、後からいくから先に行っててくれ」

  「おう、分かったぜ」


 光一は走って購買に向かった謙二の背中を歩いて追いながら、ちらりと自身の襟章を見る。

 この襟章にはポイントと呼ばれる購買での通貨の代わりになるもののデータが入っている。普通アルマは高価なものであり、普通の生徒でもアルマを買えるようにと、とられた制度がこのポイント制度である。ポイントはテストの点などで増え、それを、使ってアルマを買う、これがこの学園での基本的なアルマの強化方である。


  「んじゃ、とっとと行きますか。あんまり遅いと謙二になんか言われそうだし」


 そう言って伸びをすると、光一は少しだけ購買へと向かう足を速めた。



  


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