第三十五話
「やっときたな、この時が」
光一は学生達が大人数で集う会場前にいた、一度ちらりと会場外に取り付けられている時計で時間を確認すると、会場内に入る。
「これより私立アルマトゥーラ学園入学式を始めます」
学園の教師の一人がステージへと上り、そう挨拶して私立アルマトゥーラ学園の入学式が始まる。光一は長々と話す校長や来賓の言葉を話半分に聞いていると、
「それでは、アルマ学科主席と次席の紹介です」
そんな司会の声に半分だけの意識を元に戻してステージの方を見ると。
「学年主席、一ノ瀬颯真です」
「学年次席、鳳城灯ですわ」
そこには、どこかで見たような顔が挨拶をしていた。
(へー、あいつらそんなにアルマ学の成績良かったのか)
そんな事を思いながら光一は、此処に来る少し前に行ったスキル検査の事を思い出す。
「はい、次の方どうぞー」
「はい」
白衣を着た女性研究職員がそう言うと、一人の男子生徒が入ってくる。
「では、この椅子に座ってパルスギアをつけて下さい」
男子生徒こと光一は、そう言われてカーテンで仕切られた椅子に座り、その横に置かれたヘッドギア型のVR機械¨パルスギア¨を頭に着ける。
「では始めます、準備はよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
そう答えた瞬間光一の意識は飛び、次に気がついたときには、真っ白な空間に立っていた。光一はまるで、リースの居る天界みたいだといった感想を思い浮かべていると
『まず、こちらのアルマを装着させますので。スキルを使うイメージを持ってください』
「了解」
器械音声の指示が終わると、光一の全身にアルマが装着される。それと同時に光一は自身の奥の力が沸くイメージを持つ、
「ハッ!」
その気合いと共に、光一は目の前に試し打ち用に召喚された人形に向けて拳を全力で打ち込む。
『これは……なんて力』
「ハァハァ、ハァ…………フー」
光一は荒い息を吐き呼吸を整える、そしてなぜか光一の纏っていたアルマは右腕のみとなっていた。さらに、光一の拳を打ち込まれた人形の方を見ると数十メートルほど吹き飛び横たわっている。
『スキルは……まさか、光一君もう一度今のをやってみてくれない』
「はぁ、分かりました」
光一は急かすように言う職員の器械音声の指示通りに、再度召喚された人形前に立ち、一度呼吸を整えてから自身の奥底の力を開放するイメージと共に拳を打ち込む。
(あれ? なんかさっきより力が入るな)
光一がそう思ったのもつかの間、拳を打ち込まれた人形は先程よりも大きく吹き飛び、
『まさか……ここまでとはね』
人形は左半身が砕け散っていた。
「はい、お疲れさま。これが今の検査で分かった君のスキル結果よ。後でこれを考慮したクラス結果も送るからね」
「ありがとうございました」
光一は検査を終えて結果の書かれた紙を渡され、それを持って部屋を後にする。
「いやー、まさか試験で一つしか装着出来なかった子があんなスキルを持ってるとはね。…………まあ、それぐらいでもないとパーツ一つで試験突破なんでできないか」
部屋に残された女性研究職員は、パソコンに表示された光一のスキルを見てそう呟き、天井を見上げた。
谷中光一 スキル検査結果
スキル1 捨て身の覚悟 (プレパラズィオーネ・ディ・ディスパラート)
頭、右腕、左腕、胴体、左足、右足の六つのアルマの内、纏っている数が少なければ少ないほど残りのパーツの性能が上がっていく(一つしか装着していないなら五倍)
スキル2 限界突破
一つのパーツを選択し体力消費と引き換えに、そのパーツ(その場所から発射されるスキルなども対象となる)の性能が十倍となる。その後、そのパーツを除いた全パーツが破壊される。