第二十八話
短くて本当にすみません
もうどのくらい走っただろうか、足は傷み、息は切れている。あの腕しかアルマの無い男に、リーダーが倒された場所から少しでも速く逃げるために。
「ハァハァ、もう大丈夫だろ」
「そうだな、でもどうするんだこれから」
走っていた二人の男は足を止め、これからの事について話し合う。最初はこの試験を突破するための協力者として知り合い、三人いればまず負けないと思っていた。
「なんなんだよ、あいつ……岡田の奴を」
「落ち着けって」
「落ち着けるかよ! あいつアルマを素手で止めてたんだぞ」
右腕のパーツの無い男が声を荒げ。それを胴のパーツの無い男がなだめる。
「とりあえずあいつの事は置いておこう。まずは試験の突破が最優先だ」
「ああ、分かったよ」
右腕のパーツの無い男はなだめられて落ち着き、胴のパーツが無い男の試験突破のための作戦に耳を傾ける。その作戦は基本的に今までと同じく数の利を生かして戦う、といったものだが先程までと違うのは、交渉はせず奇襲を仕掛けて一気にハチマキを奪い去るといったものである。
「(いた、まずはあいつから奪いにいくぞ)」
「(Ok)」
二人は目線でそう合図を送り会うと、三十メートルほと先にいる男に狙いを定める。その男は気づいた様子もなく、単独行動をしている上に頭のパーツが欠損していた。これは好機と思い、二人はギリギリまで距離を詰めると奇襲を仕掛ける。
「(決まった!)」
「!?」
「もしかして気づかれていないとでも思った?」
だがその奇襲は決まらず、男は二人の拳をしっかりと掴んでいた。
「クソ、離しやがれ!」
「¨離して下さい¨だろ。まあ、いいや。二人揃ってリタイアさせるからさ」
右腕のパーツの無い男はそう言ったが、握られた力は弱ることなく、さらに力が込められていく。
「「グ………………」」
そして二人の拳を掴んだまま、男は二人を思い切り近くの木に向かってスイングする。普通ならば人はこういう時手で顔を守るのだが、今は手を握られているためそれが出来ずに顔面から木に激突する。そして、気絶した二人からハチマキを回収するとその男はその場を後にした。