第二十七話
装着このキーワードにより、アルマを使う者はアルマを身に纏うのだが。このアルマを扱うのにはコツがいるらしく、そのコツを得られなかったためにこのアルマトゥーラ学園を諦めたものも居るらしい。つまり、何が言いたいのかというと。
「(俺は、装着出来るのか?)」
この男、谷中光一は装着の経験は無く。仮に装着が出来ないとなればほぼ確実に落とされるだろう。
「(幸いアルマは学校側が支給してくれているようだが、そもそもの付け方が分からん)」
これは試験なので皆が同じスタートを、とのことでアルマは皆同じ仕様となっているが、そもそも装着出来なければ意味がない。光一は周りの生徒達が続々と装着しているなか、意を決してキーワードを呟く。
「(頼む、出来てくれ)」
「装着」
その言葉に反応し自身の体を光が包み、光が収まると光一の外見には確実に変化が起きていた。
「もし、ここまでで装着出来ていない方は不合格となりますので注意して下さい」
その試験監督の言葉で、生徒達は少しばかりざわめき立つ。
「はい、ではあなた方もアルマを見せて下さい」
試験監督が光一達の居る辺りの集団に声を掛け、アルマが装着出来ているのかのチェックを始める。少ないとは言えこのチェックで不合格にされている生徒も居る以上、チェックを受ける生徒の顔は緊張の色を浮かべていた。
「次はあなたです、これは」
光一の順番になり、光一は自身のアルマを見せる。ただ他の生徒と違うのは、そのアルマが。
「腕だけですか………まあ、良いでしょう」
腕しか纏えていないといったところか。周りの生徒は足や頭などのパーツが無い生徒もいるが、その欠損は多くて三つほどであり、右腕・左腕・右足・左足・胴・頭の全六パーツ中五つが欠損している生徒など光一だけである。
周りの生徒は「こいつには勝てる」「ライバルが一人減ったな」等という顔を浮かべていたが、光一は。
「(良かった、これで充分闘える)」
安堵の表情を浮かべ、あの¨主人公¨の方を見ていた。
「それでは、第二次試験の内容を発表します」
しばらくしてチェックを終えた試験監督の言葉に、生徒達は物音一つ立てずに耳を澄ます。
「これから皆さんにハチマキを一本づつ配ります。そしてこの森の中には入った後、ハチマキを二本以上持って私の所に来て下さい」
その内容を聞き、生徒達の顔は暗くなる。この内容では少なくとも半分の生徒が落ちてしまう。つまり、二分の一で不合格、あまりにも高い確率に生徒達の心に暗雲が立ち込めるなか。生徒達は数十人づつに分けられて、時間と場所をずらして森の中に入ると試験は開始される。そう考えていると。
「さて、どうするかな」
光一は森に入るとそう呟いて、森の中を散策していた。いまの状況ではパーツが一つしかない光一が圧倒的に不利、それゆえにそれを狙う者も出てくるのは当たり前である。
「おーっと、怪我したくなかったらそのハチマキを置いていきな」
「カモ発見だぜ」
「ラッキーだな俺達」
そう言って光一の前に、頭のパーツが無い男と胴のパーツが無い男、右腕のパーツが無い男の三人が現れる。どうやらこの男達は協力して試験を突破しようとしている者らしいと、光一が考察していると、さらに言葉が飛んで来る。
「聞こえてんのかお前、速くハチマキ置いてけよ。怪我したくないだろ」
そう少し苛立ったような口調で頭のパーツが無い男が話す。それを聞いて光一は、一つため息をつくと。
「¨怪我したくない¨か、その言葉。そっくりそのまま返すぜ」
その態度と言葉が男の怒りを逆撫でしたようで、男は光一に向かって突進し、拳を付き出す。アルマにより強化され、まだ未熟な生徒達でもコンクリートすら砕けるようになった必殺の拳。ただの人であればアルマを使わなければ防ぐことの出来ないその一撃。勝った、そう確信した男だったが。
「なっ!!」
「自分より強い奴を見抜く力くらい、付けられるようになったほうがいいぞ。まあ、今回は相手が悪かったな」
その拳を光一はアルマを纏っていない¨左手¨で受け止めていた。男は驚愕に顔を歪ませ、すぐさま距離を取ろうとしたが、光一はそれよりも速く右拳を男の顔面にめり込ませていた。
「さて、どうする。お前らもやるかい?」
光一は気絶した男から目線を男に着いてきていた、胴パーツの無い男と右腕パーツの無い男に向けると。その二人は素早く首を横に振ると、逃げて行った。
「とりあえず、これでクリアだな」
光一は気絶した男からハチマキを奪い、その場を後にする。
_____谷中光一、第二次試験突破