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第十八話

 屋上に響いた発砲音と共に、光一が倒れる。¨撃たれた¨

そう光一が感じたのは、熱を伴った痛みが腹部から来てからであった。光一は、撃たれた腹を押さえてうずまりうめき声を上げる。


  「あのまま寝ていれば楽に死なせてやったんだがな」

  「………ッ!!」

  「なんだ、その目は。………ああ、何故拳銃が使えるかって?」

 光一が手の中で拳銃を弄びながら自身を見下ろすボスを睨むと、ボスは冥土の土産だ、とも言うように説明をする。 


 「そうだな、冥土の土産に教えてやるよ。俺の能力は、『身体能力強化』と『半径十メートル以内の飛び道具の無力化』だ。今までは、ずっと飛び道具無効のフィールドも張っていたんだが、たった今そのフィールドを切った。それだけさ、さて、ここまで喋ったんだ。いい土産は出来ただろ」

  「じゃあ、さよならだ」

 そう言って、ボスは手に持った拳銃の銃口を光一に向ける。その引き金を引くだけで光一の命は消える。もう光一に逆転の手はないはずだが、ボスは引き金を引く瞬間、光一の口が『お前がな』と言ったように動いたのを見た。


  「!!!………ああ、そうだな。負けてたのは………俺の方だったみたいだな」

 その瞬間ボスの顔は驚愕に染まる。そして、そう弱々しく呟き、ボスは前のめりに倒れる。ボスの胸は真っ赤に染まっており、ボスは自身の胸から流れ出た血の水溜まりに前のめりに倒れる。


  「おーいて、なんとか倒せたか。やっぱ神の従者は強いな、まあ今回は油断してたから勝てたんだけどな」

 そう言って光一は立ち上がる。痛みは痛覚を操作して遮断し、ボロボロの手足も自身操作によって何とか動かす。そして、合図を送るように、屋上から見えるマンションの一つに向かって手を振る。そして、縛られている健司達の所に行き、声をかける。


  「おーい、大丈夫か」

  「ああ、俺達は大丈夫だが光一は大丈夫なのか?」

  「いや………ちょっと限界かな」

  「おい! 大丈夫か、光一!」

 光一は健司の縄をほどいたところで倒れて気絶してしまう。



  「俺、よく生きてたな。正直何回か死んだと思ったぞ」

  「全くだね、いくら神の従者だとは言っても無茶しすぎだよ」


 現在光一がいるのは病室のベットの上である。あのあと病院に搬送され、緊急手術を受けて、起きたときにはもうすっかり夜であった。

 既に面会時間も消灯時間も過ぎた病室で話す影は二人分。一人は光一、二人目はリースであった。

 

  「そう言えばどうしてあのボスは倒れたんだい? どうやら銃弾でも受けたみたいだけれど、光一はあのとき銃の類いは持っていなかっただろ」

 リースは、光一の見舞いとして送られた林檎の皮を剥きながら、光一に質問する。

 

  「ああ、それはだな。まず俺が倒したA班隊長、あいつが持っていた無線機のお陰だな」

  「無線機?」

 光一は剥かれた林檎を一切れ口に運びながら話す。リースも林檎に手を伸ばしながら返答する。そして、光一はその時の事の説明を始める。



  「さてと、コイツはA班隊長みたいだし、なんか良い情報持ってないかなー」

 A班隊長の男を倒した光一は、その懐やポケットを漁って何か役に立つものはないか探していると。


  「これは、無線機か?」

 光一は、班長の懐から無線機を見つける。しかし、その無線機は今までのテロリスト達が持っていた無線機とは、違うチャンネルに合わせられていた。光一は、もしかしたこのテロリストのボスに繋がっているかもしれない。そう考えて無線機のスイッチを入れる。



  「上官、奴に動きはーーー」

 依然マンションの屋上で茫然としていた豪は、無線機の電源が入ったことにより、通信を開始する。しかし、やはり聞こえてきた声は上官のものではなかった。


  「誰だ? お前。お前がテロリストのボス………じゃなさそうだな」

 豪は、またも聞こえてきた正体不明の声に戸惑いながらも通信を続ける。


  「つまり、あんたはあのテロリストを退治する側なんだな」

  「ああ、そうだ。だから知ってることがあったら教えてくれ」

  「分かった、俺でよければ出来るかぎり協力しよう」

 豪は、その光一と名乗った男に先ほど見たことを全て話した。すると光一は少し黙ると。


  「いい作戦を思い付いた、お前にも協力してもらうぞ」

 そう言って端的に作戦を伝えると、通信は途切れてしまった。




  「で、その作戦ってのはなんだい?」

  「簡単さ、¨もし、ボスが銃を使ったら狙撃しろ¨そう言っただけだ」

  「なるほど、つまりあのボスが最後に受けた弾丸は、その豪って人の狙撃した弾丸ってことだね」

  「そういうこと」

 そう言って光一はもうひと切れ林檎に手を伸ばして、会話を打ち切る。


  「ん、じゃあ私はそろそろ戻るよ。時間も来たところだしね」

  「じゃあな」

 神様召喚の制限時間により、足元から光となっていくリースに光一は最後に声をかける。


  「ありがとな、リース。もし、リースが居なかったら俺は死んでたよ。今ここにいられるのはリースのお陰だな」

  「そんなこと言わないでよ、光一は、私の従者なんだ。手を貸すのは当然のことさ」

 そう言ってリースは天界へと帰っていった。光一も、リースが帰ったのを見届けると、横になり眠りについた。




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