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第十六話 集中

 目の前の光景を信じられず茫然としていた豪だったが、無線機からの通信音を聞いて、我にかえる。

  

(そうだ、この状況を速く上官に伝えなければ)


 その一心で通信をしようとするが。聞こえてきた声は、聞き覚えの無い男の声だった。


「上官! 奴はーーー」

「残念だが、私はお前の上官ではない」

「……誰だ、奴らの仲間か」

「察しがいいな、お前らがボスの力に驚いていると思ってな」

「……何故あんなことが起こった」

「うちのボスには不思議な力があってな。飛び道具は効かない上に、常人ならざる身体能力もある。」

「信じられんが本当のことらしいな。だが何故俺にそんな事を教える、お前らが不利になるだけだぞ」

「ボスがそれぐらいのハンデはあった方が良い、と言っていたからな。苦労したんだぞ、お前らの無線に割り込むのは。さて、サービスはここまでだ、せいぜい足掻くといい」


 そこまで言うと通信は切れてしまう。豪は通信が切れても、まだ混乱が収まらなかった。通信ではボスの力を理解しているように振る舞っていたが、実はそうではない。相手に動揺を悟られないようにしていただけだ。実際に見てしまったからこそ信じがたく、いまだにあの光景と、通信内容を信じられずにいた。




「お前、何をしている。……そうか、お前がボスの言っていた鼠か」


 光一は、後ろから声をかけられ振り向く。そこには、腰に刀を構えたスーツ姿の男がいた。


(こいつ、今までの奴らとは違うな)


 もし後ろから光一に近づくなら、光一は足音や気配からその近づいてくるものに気づける。しかし、この男はそれをさせなかった。つまりこの男は足音を消し、気配を絶てるほどの達人であるということだ。光一はこれからの激しくなる闘いに備えて、より一層集中目の前の敵に集中する。ほんの少しお互いに膠着すたようであったが、それもつかの間。先に動いたのは光一だった。


「だったら、どうするよ!」


 光一は、その声と同時にサブマシンガンの引き金を躊躇なく引こうとする。しかし。


「A班隊長として、始末する」

「!!」


 男は、光一がサブマシンガンの引き金を引くよりも速く、居合い切りを実行。それにより、サブマシンガンの銃身は切断され、光一は暴発を恐れてサブマシンガンを手放す。さらに男は返す刀で光一を襲うが、それを光一はバックステップで回避する。


(懐の拳銃を抜くか? いや、安全装置を外す時間も狙いを定める時間も無い)


 バックステップをしながら、そう思考した光一は腰に携えていた二本のナイフを両手に持つ。


「お前、ただの高校生じゃないな」

「つい先日までは普通だったぜ」


 一度距離が開き、そうお互い一言だけ会話すると、また距離を詰めて戦闘が始まる。

 光一は、逆手に持った左手で男の刀を受け流すように防御し、ナイフを順手で持った右手で攻撃に出るスタイルで闘い。男はリーチの差を生かし、光一のナイフが届かない位置から斬撃を加えるスタイルで闘う。傍目から見ると、戦況はやや男が有利であり、光一は少しずつ軽い切り傷が増えていっている。


(集中力が切れてきた、思えばここまでずっと気をはっていたからな。……集中?)


 ここで光一はあることを思い付く、集中が切れたのなら、集中させてやればいい、それが例え無理矢理でも。


  「……集中(コンストレイション)


 そう光一が小さな声で呟くと、光一の動きに変化が生じる。僅かだが動きが鋭くなり、今まで当たっていた斬撃をギリギリで回避出来るようになっていた。

 光一がやった事は至って簡単である。それは、自身操作を使うことにより、意図的に集中力を高めているだけである。例えるなら、スポーツで言うゾーンに入ったようなものだ。


(こいつ、最初よりも動きが良くなっている)


 両者の力が拮抗し、男がそう思うほど激しい打ち合いがこのままずっと続くと思われたが。終わりは意外と直ぐにやってきた。


「ッ!!」

「終わりだ」


 それは、光一が左手で構えていたナイフが男の刀により弾かれ、光一はナイフを手放してしまった。

 勿論男はその隙を逃さず、上段から刀を振り降ろす。光一は防御も出来ず、切られる……はずだったが。


「な!!」

「魔力強化&火事場(オーバー)馬鹿力(ドライブ)


 光一は、魔力強化により強化された手で刀を受け止め、刀を弾いて男の体制を崩させる。そして、自身操作により脳のリミッターを外す。普通、人の体と言うのは制限(リミッター)がかかっている。しかし、それが危機的状況などに陥るとその制限(リミッター)が外れることにより、平常時の数倍から数十倍といった力を発揮する場合がある。これが火事場の馬鹿力の正体ともいわれ、光一は自身操作により意図的に出した火事場の馬鹿力で腕を強化すると、ナイフを手放して、右ストレートを思いきり男の顔面に見舞う。そして男は三メートルほど吹き飛び、気絶した。



火事場(オーバー)馬鹿力(ドライブ)はオーバードライブと読んで下さい

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