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第十二話 震え

「何? B班との連絡がとれないだと?」


「はい、ボス。やはりボスの言った通り、校内に鼠が潜んでいるようです。」


「分かった、なら全班に連絡しろ。『鼠の排除を最優先にしろ』とな」


「分かりましたボス、では私もその鼠退治にいって参ります」


 この会話をするのは二人の男、一人はスーツ姿で中肉中背といった一見普通の男………ただし、腰にぶら下げた刀が無ければだが。

 もう一人の男はスーツの男より一回り大きく、筋肉質の肉体を持ち、何も装備しているようには見えない。しかし、この男こそ光一達の学校を襲撃たテロリストのボスであり、神の従者の一人である。ボスは部下に指示を出すと屋上の柵に寄りかかり、考え事をする。


(しかし、神が言っていた通りだ。やはりこの学校には他の神の従者がいるようだな)


「ほら、言ったじゃない。あなたと同類が居るって」


 ボスは、自身の頭の中に響く声を聞きながら、自身の敵に対する対策を思考する。ちなみにこの男が神の従者になれた理由は、力に富に何でもを得られるという甘い神の言葉に惑わされたといった訳だ。そういった意味では本当の黒幕はこのボスではなく、神なのかもしれない。

 テロリストのボスがそんな事を考えていた時。

  

(おっ、テロリスト発見。しかも三人しかいない)


 光一は旧校舎内を散策し、理想であった少数行動をしているテロリストを見つける。光一は、サブマシンガンの安全装置を外し、テロリストの後から出来るだけ近づくと。


「隙だらけだ」


 その言葉と同時に、サブマシンガンをテロリストの足付近に打つ。


「ッッッ!!!!????」


 サブマシンガンの弾丸は床からの跳弾含め、テロリストの足に当たり、テロリスト達は悶絶して傷口を手で押さえようとする。


(効果は一瞬。範囲は最小『肉体強化』)


 光一は、テロリストとの距離を詰めるために、走り出す軸足を一瞬だけ強化する。そしてそのままの勢いで一人に飛び蹴りを食らわせ気絶させる。さらにもう一人の顔をまるでサッカーボールでも蹴るように蹴り、無力化する。


「死にやがれ!」


 最後の一人を片付けようとした時、後ろから叫ぶような声が聞こえる。光一が振り返ると最後の一人が拳銃を構えて、光一に向け、まさに引き金を引こうとする瞬間だったが。光一は、冷静にその拳銃を蹴り上げると、その足を振り降ろし踵落としを決めて最後の一人を無力化する。

 立っている者は光一は一人となり、急に静かになった廊下で、光一は深呼吸をする。そして自身の手を見てみると、小刻みに震えているのが見てとれた。もともと光一は普通の高校生であり、手加減が容易な素手と違い、明確に人を殺す道具である銃を撃った経験などなければ、人を殺した経験もない。

 

 そんな光一だからこそ、初撃をテロリスト達の頭ではなく足に撃った。それは自身を落ち着かせるための言い訳だったが、お陰でとりあえず引き金は引けた。しかし、光一の手カタカタと止まる様子のない震えを起こしている。光一はその手を暫く見つめると


  「止まれ」


 そう一言呟くように言った。すると先ほどまでの震えは嘘のように止まる。精神が震えていても関係はない、思考さえ出来ればその通りに体が動く、これが光一の自身操作の強みである


「さてと、全員無力化したことだし、何か使えそうなものは持っていくか」


 震えを止めた光一は、テロリストから使えそうなものを奪おうとした時、テロリストの懐から一枚の紙が落ちる。


「! やっぱりこういうことか」


 その紙には、今回のテロの目的とその標的が書かれていた。その標的の名は、¨鳳條グループの娘、鳳條灯¨と書かれていた。


(出来ることなら、苗字が同じな他人でいてほしかったな)


 鳳條グループといえば世界でも有数の大企業である。そこの娘を人質にとれば身代金も大量に手に入るだろう。それに、もうひとつの目的でもある人の魂も、金にものを言わせて用意させることも出来るかもしれない。


(それは、置いておくとして。『強化魔法』はやはり強力だな、だが魔力も無限じゃないから節約しないとな。ボス戦で魔力切れなんて起こしたら、目も当てられないことになる)


 光一は、強化魔法の強さとその燃費について確認すると。また、他のテロリストを見つけるために移動を開始する。

 

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