第十一話 記憶復元
(思った通りだ、どうやら魔力も俺の一部と見なされるされるようだな)
つい先ほど強化魔法を使った光一であったが、魔法の訓練なんてした経験の無い光一が、強化魔法を扱えたのには一つ種がある。
『自身操作』このハズレにも見える能力は¨自分の身を思い通りに動かせる¨と言ったものである。そして魔力が自身の一部として見なされるのなら、それこそ光一は、まるで手足を動かすように魔力を扱うことが出来る。(なお、先ほどのテロリストとの戦闘でも光一は無意識化にこの能力を使っていたが無意識だったので、自分が力を使ったとは気づかなかった。)
「さてと、まずはこれからどうやってあのテロリスト達を倒すのかだが……どうしよっかな」
そう言って光一は柱の影に身を隠し、新校舎の屋上から見られないように智也達の様子を見る。
(相手の数を二十人程度と仮定しても、いきなりあのボス見たいな奴に突撃すれば他の部下も呼ばれ、四面楚歌になる可能性がある……)
光一が、どうやってテロリスト達を倒すかを考えている最中に脳内に声が響く。
「そう言えば、光一はそれを扱えるのかい? 昔聞いた話だと安全装置? とやらがあるみたいだけど」
「ん? ああ、これか。使えるぞ、¨一度見たからな¨」
そう言って光一は、先ほどのテロリストから奪ったサブマシンガンを取り出す。そして特に戸惑うこともなく安全装置を外して見せる。
「一度見た? ……ああ、そういうことね」
「ああ、そういうことだ」
もちろん光一が、銃に詳しいミリタリーオタクだったなんてことは無い。だが光一は先ほどの戦闘でテロリストが安全装置を外したのを見ていた。普通なら、一度見た程度でサブマシンガンの安全装置の解除方法など覚えられる訳がない。しかし光一が持つ『自身操作』はそれを可能とする。
物事を忘れるということは、何も記憶そのものが、無くなる訳では無い。ただその記憶を思い出す方法を忘れてしまう、これが物事を忘れるといったことである。例えるなら電子ファイルにデータを保存したが、そのパスワードを忘れてしまうといったところか。だが光一の自身操作は言うなれば、パスワードのマスターコードのようなものだ、パスワードを忘れようと問答無用でそのファイルを開けて、データを取り出すことがで出来る。
「……やっぱり数人づつ減らしていくしかないか」
光一はしばらく思考したが、やはり数人づつ減らしていく作戦が一番良いと考え、思考を打ち切る。そしてサブマシンガンを肩に担ぎ、先ほど倒した集団のように三人程度で行動しているテロリストを見つけるため、移動を開始する。