番外編 帰還後
「……ん、戻ってきたのか」
光の粒子となった光一が、次に気がついた時に広がっていたのは、異世界へと飛ばされる寸前と全く同じ光景であった。
ちらりと時計を見れば、その時刻は夜の七時。それは光一からすれば数ヵ月前、この世界からすればついさっき。光一が異世界へと転移させられた時刻であった。
「終わった……のか」
光一は、そう感慨深く呟く。やはり数ヵ月の間いたあの世界は、光一の記憶に強く刻み込まれていた。
特に最後の天川との一戦は、全てを振り絞った闘いなだけあって忘れられそうもない。最初こそ正攻法でねじ伏せようと思ったが、最終的には搦め手に頼り、それでも倒し切れはしなかった。
だからこそ、光一は人知れず誓う。
(もっと強くならないとな。アイツに正面から、そして主人公に勝てるくらいにな)
そうしていると、家の外から光一を呼ぶ声が聞こえてくる。何だ? と思いながらも外へと出ると、
「おーい、光一。こっちこっちー」
そこには、こちらに向けて手をふるリースの姿があった。
「どうした? リース」
「ほら」
光一が呼び出した理由を聞こうとすると、リースは空を指差す。不思議がりながら、光一はその指差す方向を向く。そこには、
「星、きれいだね」
「そうだな」
満天の星空が広がっていた。