第一章 第一話 普通の朝
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ジリジリとうるさく鳴る目覚まし時計と、カーテンの隙間から差し込んでくる朝日に、少年は睡眠から意識を覚醒させられる。寝起きでぼやける視界の中、手探りで目覚まし時計を止めると、ベッドから少年は身体を起こす。
眠い目を擦りながら洗面所まで行き、冷たい水で顔を洗って目を覚ます。そして、そのまま台所へと行くが、そこには朝食を作る母も、新聞を読む父も居ない。
しかし、少年に両親が早くに他界してしまった。なんて物語のような重い理由は存在しない。ただ、両親が共働きで家を開ける事が多い、それだけだ。
少年は手早くトーストと珈琲を用意すると、十分ほどの時間をかけて食べる。それと同時にテレビを付けて朝のニュースを見ながら天気を今日の確認する。
「今日は傘は要らないな」
天気予報のアナウンサーが快晴を伝えていた頃、少年は朝食を食べ終える。そして、テレビの電源を切り、洗面所に向かい歯磨きをする。
少年は朝の全ての支度を終えてから、一度時計を見る。そして十分な余裕があることを確認すると、
「いってきます」
特に返されることのない一言を行ってから玄関の扉をくぐる。これが、少年こと谷中光一のいつもの朝の風景である。
通学路を通り、横目で自身の通う高校の壁に取り付けられている時計を確認しながら、正門をくぐろうとしたその時。
「オッス、光一」
後ろから肩を叩かれると同時に、男らしい声の挨拶が聞こえてくる。
「おう、おはよう。健司」
今、光一に挨拶してきた身長百八十八センチはあろうかというガタイの良い男は、齊藤健司という男だ。
光一自身、百七十五はあるのだが、目の前にいる健司は、ガタイの良さも合わさって、数字以上に大きく見える。
「なあ、光一。ちょっと頼みたいことがあるんだが」
そんな事を考えていると、健司がそう言ってくる。それに対して光一は、
「数学の課題なら写させないぞ」
「な、なんで分かった!」
先に健司が言うであろう頼みをを否定する。なぜ健司の頼み事を看破できたかというと、健司と光一は小学校からの付き合いであり、こんな朝からしてくる頼みごとなど、大抵課題関連ということが、お互いに長い付き合いから分かっていただけである。
しかし、このまま頼みを突っぱねるのも忍びない。そう思った光一は、ある条件を出す。
「だけど、購買でなんか奢ってくれるのなら考えてやってもいいぞ」
「うっ、ま、まぁ仕方ないな。その条件を呑もう」
そんな感じで、光一は健司と会話しながら自分の教室へと向かう。途中で何を奢ってもらおうかなどを考えながら、教室へと到着し、扉に手をかけようとしたその時。
「邪魔」
ガラリと勢いよく扉が内側から開き、教室から出てきたのは光一より頭一つと半分ほど小さく、顔を赤らめた女生徒、名は山崎詞乃。
光一は、光一と健司の間を通って、教室から出ていく山崎の後ろ姿を少しだけ見ていたが、
(ま、どうせアイツがいつものをやらかしたんだろうな)
そう結論づけると、再び教室へと歩を進める。
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