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セカイのオワリ  作者: 澪
7/8

『皆、ありがとう』


『おいおい、何言ってんだよ。家族なんだ、当たり前のことだろ』


朔夜の礼に、才牙が照れ臭そうに声をあげる。


『才牙の言う通りよ。私たちは、それぞれ桜月が大切だと思うから…私たちがそうしたいから動くのよ』


『そうだよぉ。だから、お礼は不要だよー』


『うん……でも、ありがとう』


『ほら、礼を言うのは後だ。さっさと支度をしろよ』


このままだといつまでも進まないと、慧が会話をぶった切った。それもそうだと、皆が支度を始める。とは言っても鞄に詰め込むという作業はない。というのも、各自がはめている腕輪の中に必要なものは殆ど入っているからだ。腕輪型荷物収容異次元空間…通称“ポータル”。この発明により、現在では鞄というのはアクセサリーと同じ分類となっている。


そのため、全員制服から私服に着替えるのみで支度は完了。後は教科書類を取り出して代わりにホームに溜め込んでいた保存食や飲料水をポータルに詰め込むぐらいだった。


『…時間もあることだし、ちょっと家の処分をしてくるわね』


『ああ、なら俺も行く。皆ももし各自の家に行くのなら、必ず2人で行動してくれ』


荷造りが粗方終わったところで、沙羅と慧はホームを出て一旦家にむかう。2人の目的地は同じ…というのも、沙羅と慧もまた、朔夜と桜月と同じように2人で共に暮らしていたからだ。


2人の暮らしていたマンションは、ホームと学園のちょうど間ぐらいの位置。いつもは必ず何処かしら電気が灯っているその建物も、今は電気どころか人の気配すらない。皆、何処かしらに避難しているのだろう。


『どうする?建物ごと、壊しちゃう?』


『そうだな。その方が、自然だ』


沙羅は、校庭での戦闘の時と同じように水を吹き出させ空中に留める。巨大な水球がマンションの上に出来上がっていた。


そして、ウォーターカッターで建物を粉々に破壊させた。


『これで、証拠隠滅。私たちがここに暮らしていたという形跡は、残らない』


『ああ』


ドォン…ガラガラと、建物が崩れゆく音がする。


『……平穏な時は、ちょっとだったわね…』


遠い目をしつつ、沙羅はポツリと呟いた。


『いつかはこうなると、覚悟していただろ?』


施設の者たちは、皆殺しにした。けれども、彼らの存在を知る者が残っていることを、2人は知っていた。そして、いつ、その者たちが彼らを連れ戻そうとするか。そしてその時が来たら、また、逃亡生活に戻るということを覚悟していた。…覚悟はしていたのだけれども。


『まさか、こんな形になるとは想像もつかなかったわよ。それに、いざその時が来るとなると寂しいものだわ』


沙羅は、弱々しく笑いながら言った。


『……そうだな……』


対する慧も、先ほど皆に指示を出していた時のような力強さは今はない。


『ねえ、慧……』


『……ん?』


『私、朔夜の気持ちは痛いほど分かるわ。だって、“あの時”の私の気持ちと、きっと同じだもの』


『沙羅……』


そっと、沙羅は慧の胸に寄り添う。


『もう、私はあんな想いをしたくないわ。だからね、慧。これから先…全てを1人で抱え込まないでちょうだい』


慧は、彼女の言葉を噛みしめるように目を瞑った。


『……ああ』


そしてその返事と共に目を開けた時、その瞳には強い光が灯っていた。沙羅はふと顔を上げ、その表情を見て…少し安心したように笑う。


『同意したわね?聞いたわよ』


『あの時は、本当に悪かったって。……けど、これから先も…俺はきっと無理を押し通そうとするだろう』


『嫌よ』


『聞けって。だから…その時が来たら、俺はお前を道連れにする』


沙羅は一瞬キョトンと目を丸くして…やがて、嬉しそうに微笑んだ。


『ふふふ…それなら、良いわ』


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