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セカイのオワリ  作者: 澪
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慧と沙羅は、街中を駆ける。目的地は、勿論朔夜と桜月の住まう家。


随分暴れまわったのであろう…街中は、見るも無残な姿になっていた。その荒れた地に、一人朔夜が呆然と座り込んできた。


『朔夜。来るのが遅くなってすまない』


慧の言葉に、朔月はぼんやりとしたまま。


『……一旦この場から離れるぞ』


けれどもその言葉に、朔夜の目に焔が灯る。勢いよく慧の方を向いたかと思えば、朔月は彼の胸元を掴んだ。


『だけど、桜月が…!』


『分かってる。…分かっているが、この場にいるのはマズイ』


そこで、ハッと我に返ったような表情を浮かべ、力無く慧の胸元から手を離す。


…考えてみれば、大っぴらに人の前で能力を使ってしまったのだ。街を破壊した奴らと一緒くたにされてしまうのは、目に見えている。自分のせいで、仲間まで危険に晒してしまったと申し訳ない気持ちで朔夜は項垂れた。


『………ごめん』


『気にするな。俺たちも敵と遭遇して、能力を使って殺りあってる。お前だけじゃない』


『だけど…』


『それに、俺がお前の立場でも同じことをしたさ。…今は一旦身を隠し、体制を整える。そして、必ず桜月を取り戻すぞ』


力強い慧の言葉に、朔夜は弱々しく頷く。


『………うん』


話がまとまったところで、3人は“ホーム”へとむかった。


ホーム…それは、皆にとっての拠点。何か不測の事態に陥った時の為の場所。


日頃皆は近くに住んでいるものの、基本バラバラに住んでいる。それは、1人暮らし…ないし2人暮らしの高校生が同じ建物に集まっていては不審がられるという理由で。


ホームと銘打っているが、場所はテナント募集という紙がデカデカと張られたビルの一室。今回区画整理から僅かに外れたものの、いつそうなってもおかしくないような、うらぶれたビルだった。


扉を開けると、先に到着し待機していた男女1組が部屋の中央に座していた。


男はツンツンとたてられた金髪が特徴的な、ガタイの良い筋肉質の男。顔は整っているが、どこか野性味を帯びていて、見る者に少し威圧感を与える。


女は茶髪のくるくるとウェーブ状になった長い髪が特徴的。顔はアンティーク人形のような西洋風な美しさを持つ。


『それじゃ、彩羽。頼んだ。才牙は護衛としてついて行ってくれ』


『うん、分かったぁ』


『おう、任せておけ』


慧の言葉に、2人は異口同音で了承すると、入れ違いでホームから出て行った。


『……彩羽に“読み”に行って貰っている間、俺らは待機だな』


彩羽の能力は“思念使い”。琵琶法師との戦闘前に慧にしたように、思念を飛ばすこともできれば思念を読み取ったり、他者の思念を操ることができる。ただし、思念を飛ばすにも読むにしても距離があり過ぎるとできなかったりと勿論欠点もあるが。

今も、より情報を読み取るべく先ほどまで3人がいた桜月と朔夜の家へとむかっていた。


慧は、先ほどまで2人が座っていた部屋の中央の椅子に座る。


殺風景な室内だった。元々住む為ではないとはいえ、部屋の中にあるのは幾つかの机と椅子だけ。後は隅の方に、年代物の壊れかけた本棚があるぐらいだ。どれも少し力を加えて触れるだけで崩れそうな、そんなボロボロのモノばかり。


沙羅は、机の上に置かれた端末を手に取る。それは、先ほどまでいた2人が使用していたモノだった。


スイッチをオンにすると、立体映像が流れ出す。チャンネルを変えても、どれも同じニュースが流れていた。


3人は、無言でそれを見続ける。…幸いな事に、自分達が能力を使った映像はまだ映し出されていない。…とはいえ、既にあの戦闘の光景を目撃した人たちによって、ネット上で拡散されているだろうが。


『特に敵方は、何も声明を出してないみたいだね』


『そうだな。…まあ、出したところで信憑性がなさ過ぎて、こんな公のテレビにはまず出てこないだろう』


『それもそうね』


『この地域以外でも…こりゃ、全国的にか?出没しているな』


『大分良いようにやられているわね 』


『近年はロボット兵士が主流だが、肝心のそのロボットが敵方に操られているようじゃな…』


ロボット工学の発展により、命の危険のある仕事というのはロボットに担わす流れが進んでいた。

特に戦争…兵士の機械化というの一番に進められている。というよりも、戦争の“おかげで”ロボット工学は飛躍的な発展を遂げた。皮肉かな、第一次世界大戦や第二次世界大戦の前後で科学・工学・医学というのは飛躍的に発展している。…それと同じだ。


これにより、現在の戦争とはそのまま経済力…製造力や物資の保有量というのが物言うようになっている。


それは兎も角、肝心のそのロボットは敵によってコントロールを奪われ、人に牙を剥いている状態。

後に残っているのは、戦力とならない“人”のみ。

頼りになる戦力が使えず、尚且つ有効な手立てが見つからずの現状では良いように蹂躙されるのも仕方のないことだ…と慧と沙羅は内心全く同じことを考えていた。


暫く無言でその映像を見ていると、やがて才牙と彩羽が戻ってきた。


『どうだった?』


それまでの意気消沈していた様子から一変、勢いよく朔夜は彩羽に問いただす。


『分かったのは、朔夜が戦った男に捕らえられたということだけぇ…。ぼんやりと存在は感知できるんだけどぉ、何処にいるのか特定はできない…』


『……そう、か…』


『だが不確かとは言え、それが唯一の手掛かり。それを追っていく他ないだろうな』


『そうね。時間が経てば経つほど、桜月の危険は増すわ』


『今読める方角は?』


『距離は分からない…けどぉ、西の方からぼんやりと気配は感じられるよぉ』


彩羽の答えに、皆が慧を見る。全員、次の指示を待っていた。


『行くぞ。…ここには、戻って来ないかもしれないから必要なものは、全て持って行く。それと、敵と遭遇した場合は捕獲。それが無理であれば殲滅だ』


慧の指示に、全員が頷く。


『よし、今から30分後ここを出るぞ!』






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