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セカイのオワリ  作者: 澪
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顔を歪めつつ、それでも笑って言った琵琶法師。その横の狂骨が、僅かに動いたような気がした。


『させない……!』


瞬間、沙羅は能力を発動させる。能力…“液体操作”。その力によって、蛇口が破裂し水が漏れ出でる。


それと同じタイミングで、狂骨が慧に向かって攻撃を仕掛けた。彼は、手に持つ白い棒のようなものを慧に振りかぶる。沙羅はその棒と慧の間に、水の膜を作ることで防御した。


パシャン…と、棒と水の膜がぶつかり合う音がする。そのまま沙羅は敵の武器である棒を水で包み込ませ、圧縮させた。すると、思いの外簡単に棒は砕け散った。パラパラと棒の残骸である白い粉が宙を舞う。


『ケケケ……』


自身の武器が破壊されたというのに、楽しそうに狂骨は笑っていた。対して沙羅は無表情のまま、狂骨の一挙一動に注力を払い続ける。

…もう、あんな想いは御免だ。と、“あの時”のことを思いつつ、沙羅は狂骨と対峙する。


『おいおい…ゆっくりと聞かせてくれないのか?』


その横では場にそぐわない軽口で、慧が琵琶法師に向けて非難の言葉を口にしていた。それに対し、琵琶法師は苦笑いを浮かべている。…これまた随分と人間臭い反応だ、と慧は内心眼を見張った。


『えろう、すんまへん。狂骨はんは堪え性がありまへんから。…で、私はどこまで話したやろうか?』


『人間が、自称妖怪のあんたらを何百年も封じていたことまでだったぞ?』


『ああ、せやったなあ。で、あんさんはどう思います?』


『どうもこうも、妖怪なんて存在を真面目に考えたこともねえよ』


『せやろ?じゃあ、神様とかは信じる質で?』


『おいおい…あんたら、どっかの宗教か何かの回し者なのか?』


妙に人間臭いところといい、意味不明な質問といい、カルト信者か何かと言われた方がまだ納得できると思いつつ、ため息交じりで慧は答えた。一瞬、すぐにでも目の前の男を消そうか…と思ったがペラベラ話す貴重な情報源は惜しい。折角だからこのくだらない話だとしても、もう少し付き合うか…それとも無駄と見切りすぐにでも消すか。そんなせめぎ合いを内心慧はしていた。


『ふふふ、期待通りの反応やなあ。あんさんは、例えば…そやなあ、節分に豆撒くのも単なる行事、単なる迷信と思うお人やろ?』


対して何が楽しいのか、琵琶法師は相変わらず笑っている。


『だから何だって言うんだ』


『300年ほど前からでしたやろうか。奇怪なできごと、摩訶不思議なことを人は全て科学で証明しようとしなすった。私らにとっては、その事ほど奇怪なことはございませんでしたわ。何百年かけて作り上げたものを、あんさんらは自ら壊すんですからなあ。私らの存在を忘れるだけならまだしも、あんさんらは自身を守る神や儀式を迷信と忘れ去るか、意味を失わすか』


“丁度、あんさんが私の質問に答えた解答と同じようにね”と琵琶法師は笑みを深めた。


『節分は、単なる豆をまく日ですか?いいえ、ちゃいますよ。あれは悪疫邪気祓いの行事で、平安時代に中国より伝わった“鬼やらい”。桃の木で作った弓と葦〔あし〕の矢で都の四門から鬼を追い払う儀式を、誰もができるように簡易的なものにしたものですよって。ですが最近じゃあ、その意味どころか豆撒きすらされておりまへんでしたしなあ』


琵琶法師が講釈をしているその横で、再び沙羅と狂骨の戦いが始まっていた。

…メキメキ、と狂骨の(アバラの位置から白い棒が出てくる。…骨のようだった。


その光景に、一瞬沙羅は眼を見張る。…あまりに不気味な光景。けれども、沙羅はそれで悲鳴一つもあげずに、変わらず冷静に狂骨と対峙し続けていた。僅かな動きも見逃さない、という気迫が彼女の視線からは伝わってくるほど。


狂骨が、動く。対して、沙羅は空中に浮遊させ待機させていた水の玉を次々と狂骨に向けて放っていた。

骨らしきその白い棒も、彼女に向けて放たれる。それを、彼女は水の玉で捉え圧縮し、砕き続けた。


沙羅が悲鳴を挙げない代わりに、校舎から聞こえてくる悲鳴やざわめきが五月蝿い。


慧と沙羅が飛び降りた時から、その光景を見る為に窓にへばりついていた生徒たちは元より、その他のクラスの生徒たちも校門の前で繰り広げられる非日常の出来事に気づき、同じように窓際にへばりつき始めていた。


誰もが固唾を飲んで沙羅と狂骨の戦いを見ている中、琵琶法師と慧は相も変わらず話を続けている。


生徒たちの中には、能力を使用し戦っている沙羅だけでなく、その光景の中で平然と話す慧に対しても奇異の眼を向けていた。


『この江…今は東京でしたかなあ?ここも随分と変わりましたわ。かつては至る所にあった神社仏閣も取り壊され、今じゃあ観光名所なんて呼ばれるところしか残っておりまへんやろ?つい昨日も、1つ壊してくださって。あれで私らも出てこれたんですよって。ほんまおおきに』






内容を1から全て刷新しています。今まで読んでくださった方、申し訳ございません。

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