光秀の動機
光秀と出過蔵は向かい合う。
「何故あなたほどもあろう方があのような真似をなさったのです?あなたなら、謀反の後何があるかわかりそうなものだが」
光秀は、ため息をついた。
「我にはこうするしかなかった。耐えられなかったのだよ」
光秀は、語りかけるというより、独り言のように続けた。
我は、あの君主を排除しなければならなかった。いつも皆の前でからかわれる事に耐えられなかったのだよ。袂を分ける事も考えたが、自分と同じ目に合う者がでるかもしれん。だから謀反を起こした。後悔の念はない。
光秀は、自分を馬鹿にするようにしめくくった。
「謀反という形でしか意思表示できない我も、外道だなぁ」
出過蔵は、何も言えなかった。目の前の男は、生きる時代、身分を間違えた。光秀は、謀反という武士の禁忌を犯した。その理由も、自分自身の私怨である。しかし、そこまで追い詰められれていたのも事実である。出過蔵は、信長と光秀、悪いのか決められなかった。自分には決められない問題は、上の立場の義元に決めてもらい、それを自分の意見にして無理やりに納得しよう。私にはそれしかできない。
出過蔵は、もやもやしたものを胸に、光秀の城をあとにした。