光秀編!
光秀は、本能寺の変後、守りを固めるべく動いていた。織田信長を討ち取ったとなれば、周りの国に対して牽制になるだろう。しかし、もし信長が生きていたら?もし、自分を討ち名をあげようという野望を持つ者が現れたら?
光秀は用心深い。そして計算高い。見方を変えれば狡猾だが、光秀の人柄を知る者は狡猾な男とは評しないだろう。
いつも最悪の事態に備え、立ち回っていた結果、大きな戦果をあげる事はなかったが、大きな過ちを犯す事もなかった。
燃え上がる野望を持ち、ひたすらに突き進む男と、いつも2手3手先を読む男は、相性はいいが、それはお互いに妥協できる立場にあった時のみだ。その歯車が完全に外れた瞬間、最悪の事態になるのだ。光秀はそのように考える。
光秀は、守りを固め、武田氏を訪れるつもりだ。先の長篠合戦で力を落としたとはいえ、敵対するのは得策ではない。同盟は無理でも、不可侵に持ち込めばこちらのものだ…。
光秀は振り返った。誰かがいる。
「我の兵士の格好をしているそなた…、誰じゃ?我に変装など効かぬ」
「失礼。あなたに近づくにはこうするしかなかった。」
出過蔵は答える。光秀、話に聞いた通り穏やかな雰囲気だ。このような男が何故信長に謀反を企てたのか。鬼が出るか蛇が出るか、出過蔵は腹をくくった。