第五十一話 悪質なスリを見敵必殺
「・・・・・あー。なんか不完全燃焼。」
「エッチいのも少しは我慢しろよ・・・・・ってか、何で肩車されてんの俺?」
次の日の昼近く、街中で友人に何故か肩車をされている俺、シグ・レインフィールドです。
「お前ちびぃから歩くの遅ぇんだよ。」
「うるせえよ、俺だって好きでこんなチビになったわけじゃねえっての。」
と、俺が気にしていることを言ってきた。
ウォル太の身長は多分190はあると思う。
対する俺・・・・・140・・・・・いや、150はある!
「それにしてもお前、130も無いんじゃねえか?」
「気にしてることを言うなぁ!?」
きしゃー。と、俺は腕を振り回してウォル太が全く聞いてないと言わんばかりにゲラゲラ笑うと言う昔懐かしい構図が発生した。
で、そんなごたごたから数分後、
「さーてさて、なんかうまいもん食おうや。臨時収入あったし。」
「それって本当に臨時収入か?どう考えても、窃盗『おい、シグ。』・・・・・ん?」
いきなり俺を肩車から下ろして、両脇を抱えるように持って・・・・・所謂たかいたかい的な持ち方をし、視線がぴったり合う位置に持って来てこう言った。
「世の中にはな・・・・・って言うか、俺がこの世界に来てから信じれるようになった先人の格言があるんだ。」
「何さ?」
「何事もな、バレなきゃ犯罪じゃねえんだよ。」
「・・・・・。」
バレなきゃ別に良いのはイカサマだけです。
イカサマはバレなければタダの技術ですから。
「後、もう一つ。」
「お前の物は俺の物、俺の物は『おい、こっちに来てお前はジャイアニズムに目覚めたか?』・・・・・俺様至上主義ってカッコよくね?」
かっこよくないよ。
ま、彼が臨時収入を手に入れたと経緯については数時間前に遡る・・・・・。
*****
数時間前、って言うか朝食を食べてすぐの事。
「シグ、この町案内とかしてくんねーか?」
「え?何でまた。お前なら一人で行きそうなものだが。」
「・・・・・お前に聞いてねえよ、リンネ。」
「まあ、別にいいか。スカル、店番頼む。」
「え!?ちょ、俺これから・・・・・ッテ、シグサン?ソノフォークハイッタイ・・・・・ギャァァァ!?デコに!?デコに刺さったぁぁぁぁ!?」
「・・・・・お前もあいからわずだな。」
ま、人はそう変わりません。
と言う訳で、行こっか。
で、まあ一通り見て回ったわけだが。
ウォル太いわく、ダンジョンに関しては後日行くとのこと。
「・・・・・見て回るとこ、大体見て回ったな。この後どうするよ?おっとおっさん、すまんな。」
と、ウォル太君前方不注意。
しかし・・・・・。
「きぃつけろやな・・・・・なだ?チビ。何か用か?」
「先ほど彼から取った財布を返してください。」
「あぁ?おま何言ってんだ?ぶっ転がすぞ?」
「・・・・・財布がポケットからはみ出してますよ。それも複数。」
「・・・・・!?」
あわてて見たよこいつ。
ブラフに決まってんのに。
・・・・・しかし俺はブラフで終わらせる気は無い。
先の一瞬で、懐に入れてたのを態々ポケットに移しましたし(笑)。
「・・・・・あれ!?俺の財布がねえ!?」
「・・・・・何であの人、私の財布を・・・・・。」
「まさか・・・・・。」
「・・・・・っちい!?」
周りが事実に気付き始めてチンピラに対して殺気立ち、チンピラ君は逃げ出そうとしますが、
「・・・・・きみ、ちょっとはなし、を!?」
騒ぎを聞きつけて職務質問しようとした衛兵さん、ぶん殴られたよ。
いきなりだから仕方がない、か?
ともあれそこから、
「「「待てやゴラァァァァ!」」」
チンピラ君の大逃走劇である。
数分後・・・・・って言うか、ウォル太君が恐ろしい速度で追っかけたのもあって、あっという間に囲まれましたチンピラ。
「潔く縛に付きなさい。罪が重くなりますよ!?」
「うるせえ!」
言うこと聞かないね、こいつ。
と、あ。
衛兵さんが力づくで押さえようとして、
「あ?なめてんのか?これでも俺はグランガイツじゃ名の知れた拳闘士だったんだぞ?」
・・・・・あぁ、よく世界大会?をやってるあそこね。
それじゃ相手にならんわ、と死屍累々の衛兵を見ながらそう思った。
「ふーん。じゃちったあやりがい有りそうだな。」
おお、ウォル太君やる気です。
ここで俺は・・・・・。
「(必殺、『マインドリード・ザ・サードアイ』!)」
・・・・・要は読心モードです。
さてさて、この二人は何を考えてるのかね・・・・・。
「(雑魚過ぎて話になんねえな、おい!ま、あの髭親父から貰ったもんには感謝しねえとな。)」
「(全力でぶん殴る・・・・・いや、やったら財布の回収めんどくさいしなぁ・・・・・。よし、方針決定。)」
あ、こいつ。
俺が以前転生業務やった時の奴だ。
忘れてたけど。
確かこいつ、読心能力あげてたっけ?
「おい。」
「何だ?」
「今からテメェを右ストレートでぶっとばす。まっすぐ行くから覚悟しとけよ。」
と、ウォル太君指をポキポキ鳴らしながら構えました。
さて、チンピラ君は能力を発動しましたね。
「(馬鹿が、そんなはったりが通じる思ってんのかよ?さて、こいつは何を・・・・・。)」
「(右ストレートでぶっとばす。まっすぐ行ってぶっ飛ばす。右ストレートでぶっとばす。まっすぐ行ってぶっ飛ばす!)」
「(こ、こいつ・・・・・馬鹿だ!楽勝過ぎんじゃねえかよ、おい!)」
・・・・・。
あ・・・・・この展開。
「右ストレートで・・・・・。」
「え?」
ウォル太君5、6メートルはあった距離を瞬き一回の時間で距離を詰め、
「ぶっ飛ばす!」
「ぶふぉあ!?」
チンピラ君、反応できずに約3メートルほど山なりに吹っ飛んで、落下が始まった辺りで、
「まっすぐ行って・・・・・。」
「あ、が・・・・・ひぃ!?」
あぁ、チンピラ君。この辺りでケンカ売ったらダメな奴だったと気づいたようです。
しかし慈悲は無い。
「ぶっ飛ばす!」
ウォル太君の強烈なガゼルフックと共に空中高く吹っ飛ばされ、
「オラオラオラオラオラァ!」
そこから物凄いラッシュです。
・・・・・。
俺が言うのもアレだけど、死んで無い?
「一丁、上りぃ!」
と、今ラッシュの締めの打ち下ろしが決まりました。
「あ・・・・・ご・・・・・。」
満身創痍。
それしか言えねえわ、このボロゾーキン。
「さて、面倒になる前にずらかるぞ、シグ。」
「ん?財布は?」
「元から空だ。別に良いっての。」
と、その場から離れて町はずれに来たのは良いんですが、
「お、あったあった。」
「・・・・・何これ。」
そこに何故か落ちていた硬貨の詰まった袋。
「ん?さっきのチンピラ殴ってる時にあいつが持ってた財布の金全部抜き取ってこれに詰めてここに落ちるようにフィニッシュ決める時に投げただけだけど?」
何やってんだこいつ。
先ほどの場所からは、金が無いだぁ!?お前さっきまで持ってただろーが、とぼけんじゃねえ!・・・・・などと言う怒号が聞こえる。
「・・・・・臨時収入ゲ~ット☆」
・・・・・そして冒頭に戻る。
*****
「・・・・・何か色んな意味で、あのチンピラ終わったな。」
「因果応報、慈悲は不要なり!」
「お前が一番報いを受けろと思うのは俺だけか?」
「死んだら受ける。それだけだっつの。生きてる内は死んでもお断りだがな。」
いや、お前の場合、死んでも報いを受け無さそうだが。
「大体盗賊やら泥棒はな、俺と目があった時点でサンドバック兼カモだから仕方ねえって。」
「趣味、盗賊狩り及びいじめ。」
「イエス。」
「・・・・・。」
何処の黄昏よりも昏い魔法使いだろうね?
そう思いながら、昼飯を取るために店に向かう俺達だった。




