第三十九話 謎の吸血鬼を追え(中編)
で、夜。
簡単に飯を済ませ、就寝。
なんだが・・・・・。
「あおーん、あおーん。」
ガリガリガリ・・・・・。
窓を何かが引っ掻いてえらい音を立ててる。
・・・・・。
正直うっとおしい。
こっちは眠いってのにお前は・・・・・あれか?
俺等を眠らせないために現れた刺客か?
・・・・・。
他の二人はこの音に気付かずに寝てるし・・・・。
何かむかつく。
で、俺は。
「てめえは・・・・・。」
と、俺は窓を開ける。
「ウガァァァ!」
「この野郎・・・・・。」
窓を開けると、、待ってましたとばかりに、狼っぽいのが襲い掛かって来た。
「罪に溺れし業の魂・・・・・。」
「ウォォォン!」
「・・・・・一辺ヘル廻れやゴラァ!」
「ギャィィィン!?」
と、俺は怒りに任せてぶん殴った。
ドッガァァァン、ガシャン、パリーンと、非常の小気味いい音と共に飛んでいった。
「ふぅ、静かになった。」
と、窓を閉めて後ろを見ると。
「「うるさいぞ、ウォルター。」」
「あ、すまん。」
二人して寝惚け眼で怒鳴った後、また寝てしまった。
・・・・・。
つーか、あの轟音でそれってお前ら・・・・・。
随分太い根性してるよ・・・・・。
*****
「おはよう、ウォルター。昨日のアレは何だったんだ?」
「何か窓引っ掻いてた馬鹿ぶん殴っただけだけど?」
「で、あれか?」
と、トラビスのおっさんが指差した方向には・・・・・。
うん、夜中だからわかんなかったけど、こ れ は ひ ど い 。
ぶん殴って穴が開いた程度だろうと思ってたけど、実際そんなことは無かった。
昨日、ぼろぼろの家などが並んでいた場所は・・・・・。
何と言う事でしょう、辺り一面が薙ぎ倒され、まるで10メートル単位の砲弾でもぶち込まれたように荒れ果てている。
そして、肝心の砲弾はと言うと、なんかミンチよりひでぇ状態になっている。
「一体何があったらああなるんだ・・・・・?」
「ぶん殴ったらああなったぞ?リンネ。」
「どんな腕力してんだ兄ちゃん・・・・・。」
こんな腕力よ?と言わんばかりにおっさんにポージングしてみた。
「・・・・・。」
「ま、もう誰も住んで無いあばら家だから問題無いだろ?で、おっさん?件の吸血鬼ってどこにいるんだ?」
「お前・・・・・あれをどうでもいいとか・・・・・ま、ちょっと高台の方に行かないとアレだがな。」
「?」
どう言うこっちゃ?
まっすぐ行きゃー良いのに。
「ヒント、吸血鬼。」
「ああ、なるほど。」
「?」
だからなんなんだ?
「行くぞ、ウォルター。」
「何処に?」
「どうも、場所が不確かな上に夜しか現れんようだ。吸血鬼の城は・・・・・。」
「え?今のでわかんの?」
「分からないお前が分からないが・・・・・ともあれ、高台に行けば大方の場所は把握できる。」
「ほうほう、で?」
「で?ってお前・・・・・そっから突入してかっぱらうんだよ。お宝。」
リンネにその辺を聞いてたら、おっさんに割り込まれた。
「ダイナミックお邪魔しますはしねえのか?」
「・・・・・突入自体がダイナミックお邪魔しますな気もしないでもないが・・・・・。」
「やり合う気か?兄ちゃん、若いねぇ~。」
と、そんな談笑をしつつ、それらしき高台まで来た。
「後は日没まで・・・・・もうちょいってとこだな。」
「夕日が何とも・・・・・。」
「おい、黄昏てないで今後の方針を話してくれ。」
「嬢ちゃん・・・・・ちょっとは空気読もうや・・・・・。」
こういう時って、女の人ってわかんないよね。
「そろそろか・・・・・。」
と、おっさんが言った後、日が完全に沈んだ。
その直後、
「おい、あっち!」
「「ん!?」」
膨大な量の蝙蝠?が空に向かって飛び立ち、暗雲を形成する。
そして、ズゴゴゴゴ・・・・・とそんな地響きとともに、廃墟じみた古城が現れた。
「おぉ、お出ましだな。行くぞ!」
「ちょっと遠い様な気が・・・・・。」
「ま、そんなもんじゃね?」
と、俺達は出現した城に向かって・・・・・。
「おいっちに、いっちにっと。」
「・・・・・なぁ、兄ちゃん?」
「やめとけ、突っ込むだけ疲れるぞ?」
「・・・・・いや、ほんとに突っ込まなくていいのか?これ・・・・・。」
「分からなくないが、自分で走った方が早いとのことだ。」
と何かわけの分からない事を話し合っている。
「お、見えてきた。」
「しっかしまあ、何と言うか・・・・・こういう城って堀やら断崖絶壁に建てるかな?」
と、俺は思ったことをそのまま口にした。
吸血鬼が居るらしい?城は、地上2、30メートルくらい上の所に存在し、100メートルはあるんじゃないかと思う石橋の先に建ってた。
いつも思うけど、ファンタジーってこう、建築基準ぶっちで無視した感じの建築物が多いんだろうか?
「外敵から身を守ると言うのもあるだろうな。主に篭城で。」
「籠城って・・・・・吸血鬼は侵略メインだろ?嬢ちゃん・・・・・。」
また何か話してる。
「ま、良いだろ?いざ、突撃!」
「ついて来い、兄ちゃん!」
「ちょ、仕切ってんの俺だろ!?」
「ふざけた事にこだわるな・・・・・?何だ?」
「どうかしたか?」
適当に話しつつ移動し、橋の半分辺りまで来たところで、リンネが後ろを気にし始めた。
「ああ、後ろから何か変な音が・・・・・?」
「後ろ・・・・・?」
と、俺は後ろを見た。
「おい・・・・・。」
見てしまった。
石橋が、こっちに向かって物凄い勢いで崩れているのを。
「走れ!?」
「何だ、いきなり!?」
「後ろ見ろ!?後ろ!?」
「「・・・・・は?・・・・・なぁ!?」」
そっからがもう大変。
全員ダッシュで城まで駆け込もうとするけど、
「ちょ、橋が!?」
追い打ちと言わんばかりに城に大体つきもののあの橋を閉め始めていた。
「お前ら・・・・・。」
「「何だ、ウォルター(兄ちゃん)。」」
「投げるぞ。どおりゃぁぁぁ!」
「「うぉわぁぁ!?」」
と、俺は力任せに二人を城の中に投げ込み、
「間に合えぇぇぇ!」
よし、入った!
「「ぐえっ!?」」
何か変な声聞こえたけど気にしない!
俺は限界まで助走をつけて、
「秘儀!対城粉砕キック!」
閉まってしまった橋(もう壁だが)に対し、ライダーキックを敢行する。
ゴシャァァ!
と、あっけなく橋は橋だった物にクラスチェンジ。
うん、完璧。
ダイナミックお邪魔します成功!
「ウォルター・・・・・。」
「ん?どうしたリンネ?」
と、侵入してちょっと浮かれてた俺に、リンネが話しかけて来た。
何か、虚ろと言うか、幽鬼的と言うか・・・・・怒ってる?
「手加減せずに投げるな!ドアに激突して鼻血が出たぞ!?」
「あ~そりゃすまんことをした。」
と、見る限り結構な量の鼻血が出ている。
ま、いいや。
無事に侵入できただけましだろうし。
「コレでましな方か、兄ちゃん・・・・・。」
うん、ましな方。




