第三十八話 謎の吸血鬼を追え(前編)
もう二、三話はウォルター視点。
「は?吸血鬼退治?」
「違う、確かに吸血鬼絡みではあるが・・・・・。」
あの後ギルドの方に行って、なんかギルドから仕事を貰って来たらしいリンネがそんなことを言ってきた。
「吸血鬼かぁ・・・・・どんだけぶん殴っても耐えるんだろうなぁ・・・・・。」
「もうお前は対峙した気でいるのか?だから言ってるだろう、私が持ってきた仕事はその周辺の調査だ。」
「え?つまんねぇな、おい。景気よく退治しとこうぜ?そうすりゃ・・・・・。」
と、俺が言い終らないうちに・・・・・。
「これ以上私に面倒事を持ってくるな。お前の行動一つ一つの対応が面倒なんだ。これ以上面倒を持ってくる気なら・・・・・。」
と俺に首筋に小太刀を突きつけ、
「物理的に思い知らせるぞ?」
「・・・・・っち。わーったよ。調査だけだろ?」
と、納得(してないが。)して、件の場所に向かう事にした。
「・・・・・とは言った物の、ウォルター。」
「・・・・・何だ?」
「私は馬に乗っているな?」
「だな?それがどうかしたか?」
「何でお前はその隣を徒歩感覚で息切れもせずに併走できる?」
「出来る物は出来るんだ、問題はねぇな?」
「問題しか無いが・・・・・一体どうなってるんだその体は・・・・・。」
と、リンネが不思議そうにしていた。
まあ、俺は前に馬に乗ってちょいイライラしたのもあって、自分で走った方が早いって思ったのもあるがな?
やっぱ自分の足が一番だな。
そんなこんなで二時間ほど走り続け、件の町?村かもしれないが、とりあえず到着した。
が・・・・・。
「ひでぇ・・・・・。」
俺の言葉がこの状況を表していると思える。
荒廃・・・・・いや、まるで攻め滅ぼされたようにボロボロだ。
これじゃあ生きてる人がいるとは思えない。
「おい、どうすんだ?これじゃ確実に生存者ゼロだろ?」
「そうかもしれないが、一応依頼だ。くまなく探す・・・・・ってオイ!?何処に行くつもりだ!?」
「散歩だ。どうせこれで終わりだろ?」
「いや、まだこの後5個ほど回るんだぞ!?・・・・・はぁ、もう居ない。」
いや、まだ俺が聞こえる範囲内には居るぞ?
まあお前からしたらもう居ないって範囲かもしれんが。
で、今俺はこの町の広場に来たわけだが・・・・・。
「辛気臭ぇ・・・・・ついでに誰も居ねぇ・・・・・。」
かつてに活気はどこへやら、そこらじゅう荒れ放題である。
屋台に並べられてたであろう野菜は適当に食い荒らされており、残っている部分は痛み切って異臭を放っている。
その他もろもろも似たような物だ。
燃やされ、斬られ、引き裂かれたりしており、荒れ放題の体を成している。
「?」
不意に、後ろから音がした。
ガタン、と言った音が。
振り向くと、どうやら酒場のドアらしきものが落ちたようだ。
・・・・・ちょっと興味がわいたので、入って見たが・・・・・。
「入んなきゃよかった・・・・・オエッ・・・・・。」
その中には、腐乱死体がこれでもかとあった。
武器や、横倒しにされたテーブルなどを見る限り立てこもって何とかしようとしたようだが、結果は今の状況が物語っている。
その時だった。
「おいおい・・・・・映画の中だけにしてくれよ・・・・・。」
死体が次々起き上がり、
「ニクダ・・・・・。」
「メシダ・・・・・。」
「クイタイクイタイクイタイ・・・・・。」
「キヒ、キヒヒヒ・・・・・。」
と、俺に向かってゆらゆらふらふらと近づいて来たが、
「ま、こんな事になる前の俺だったら逃げて逃げて食われて終わりだったろうな・・・・・でもなお前らの敗因は、よ・・・・・。」
と、ちょっと一人語りしつつ、
「今の俺に楯突いたって事だ!喰らえや腐乱死体共ぉ!」
と、何時通りに俺は、
「ギィ!?」
ゾンビを、
「ガェ!?」
蹴り砕き、
「グゴォ!?」
拳の衝撃で爆散させる。
「ふぅ、ゴミども、が・・・・・!?」
不意に後ろに殺気を(こっちに来てから感じられるようになった。スゲエ。)感じて振り向いたが・・・・・。
「グァァァ!」
何こっちの肩を齧り付こうとするゾンビが。
対処は、まだ可の、う!?
「ゴギャァ!?」
いきなり、銃声と共にゾンビの頭が吹き飛んだ。
「よぉ、危なかったな兄ちゃん。」
音、俺はかなり離れた所にある腐乱死体の一つだと思ってた所から声がした。
そっちの方を向くと、何とも西部劇のガンマン然の男が、銃口から硝煙の出ている銃をこちらに構えたままの奴が居た。
「いや、あれぐらいだったらまだ対処できてたぞ?」
「ん?そりゃ要らねえお節介だったか?」
「感謝してる、で、おっさんは『ウォルター!何だ、今の音は!?』・・・・・今のはこのおっさんと俺が原因だと思う。」
「?・・・・・ともかく、貴方は一体?」
「ん?俺か?そう言うのはまず自分から名乗るもんだろう?嬢ちゃん?」
「・・・・・リンネ・クガミネだ。」
「で、俺はウォルター・ブライアンだ。そう言うおっさんは?」
「トラビス・アーチボルトだ。トレジャーハンターみたいのことやって飯食ってるしがないおっさんだよ。」
「で、トラビスのおっさんはこんなとこで何やってんだ?」
「吸血鬼の居城にあるお宝狙って来たんだけどよ、腹減ってぶっ倒れてたんだよ。・・・・・何か食える物無い?」
「「・・・・・。」」
大丈夫か?このおっさん。
「ともかく、もう暗くなる。食事云々はどうでもいいとして、ウォルター。寝床を探すぞ?」
「ああ、それなら上が使えるぞ、嬢ちゃん。臭いもそんなに気にならんし、結界張ったら十分寝れんことも無いぞ?」
「・・・・・まあ、それでいいか。ウォルター、準備が整うまで周辺をもう一回見れ来てくれ。」
「やだ、めんどい。」
「・・・・・。」
まあ、とりあえず今日はもう寝て・・・・・。
「それにしても、この辺りはもう駄目だな。軒並み食い尽くされてるんでな、早めに殺しとかないと場所変えるかもしれんな。」
「そうなったら勇者の仕事だろう。まあ、今の話を聞く限り、私たちの仕事はもう終わったような『よし、明日吸血鬼の所に殴り込むぞ!』・・・・・お前は何を言ってるんだ!?行かないと言ってるだろう!?」
「えー・・・・・。面白そうじゃねえか、お宝、バトル、探索って三拍子が。」
「・・・・・もういい、行くなら一人で・・・・・。」
・・・・・。
「お前って、もしかして・・・・・お化けだ『私も行くぞ、ウォルター。お化けなど恐くない。』・・・・・。」
あ、こいつお化け駄目なんだ。
弱みゲット。
さて、明日に備えるか。




