パフェくん
ボーイズラブではなかったのですが、書いていたら近しい雰囲気になってしまいました……。
示し合わせたわけではないが、僕とパフェくんは同じ大学に通い、同じカラオケ屋でバイトをしている。
僕はパフェくんと中学の時に出会った。なんだかんだで高校も同じなので腐れ縁である。
パフェくんは転校生だった。そんな彼に話をかけて仲良くなった。なんて事はなくて、遠くから見ているだけだった。それは今でも変わらない。
パフェくんが僕の人生のページに存在をしているのは間違いないが、交流はない。日常の一部。小鳥の囀り、通り雨、自動販売機のようにあるものだ。
パフェくんのパフェは、アイスクリームにイチゴやチョコを乗せるパフェではなく、パーフェクトのパフェと誰かが言っていた。
パーフェクト、完璧。
彼は容姿、人柄、学力に運動まで、全てがパーフェクトなのだ。僕が知る限り、彼に勝るものはいない。天は二物を与えずという言葉が嘘だと証明する存在だ。
カラオケ屋のバイトは、僕の方が少し早く入ったのに、あっという間に仕事のレベルが追い越され、レジ業務を任されるのはパフェくんの方が先だった。というか、これからも僕がレジを任されることはないだろう。
一応、やり方を教えてもらったが、パフェくんと僕の選択肢だったら、容姿的にも要領的にもパフェくんが選ばれる。僕もパフェくんの方がいいと思う。そもそもバイトなのだから、お金がもらえれば優劣なんてどうでもいい。
パフェくんはいつもパーフェクトだなと、事実を確認する日々。
僕とパフェくんの距離は変わらないまま、大学の卒業式がやってきた。
今日がパフェくんと会う最後の日だろう。
一度もろくに話したことないなんて、心残りになりそうだから、僕は勇気を出してみることにした。
たくさんの人に囲まれて、談笑しているパフェくん。
僕はその中に飛び込む。
「お話し中すいません、パフェくんと少しお話ししたくて」
白けた空気。
こうなる事は分かっていた。分かっていたけど、一度でいいから話してみたい。嫌な思い出でも、ないよりはましだ。
パフェくんの取り巻きたちが、パフェくんって誰、そもそもコイツは誰だとバカにしたような声色で話し始める。
しまった。パフェくんというのは中学の時のあだ名で、それを今この場で知っているのは僕とパフェくんしかいない。パフェくんも昔のあだ名を覚えているか怪しいが。
パフェくんの本名を言い直すか迷っていると、
「あぁ、俺のことだ」
パフェくんは輪の中から抜けて、僕のところにやってきた。
「二人きりで話そう」
パフェくんは優しい笑みを浮かべていた。この表情は告白しにきた子に向けるものだった。
周りも何かを察したという目配せをして、パフェくん抜きで談笑を再開する。
告白をするわけではないが、告白をするような緊張感が僕の中に誕生した。
パフェくんに片想いをしていて、最後の日に想いを告げる。そんな予定はなかったのに、パフェくんと周りにいた人たち、さらには僕も勘違いをしている。
賑やかな場所から少し離れた木の下。木漏れ日がスポットライトのようで、この状態で告白以外のことをするのは場違いなのではないかと錯覚をする。
ならいっそ。
いやいや、違うだろう。暴走した気持ちを抑えて、本来の目的を果たしたほうがいい。
と、冷静になったが、話してみたいという気持ちだけで、ここまで来てしまったので、何を言ったらいいのか分からない。
パフェくんとの思い出、というか僕が一方的に知っているパフェくんの情報が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
「パフェくんって、パーフェクトだからパフェくんなんだよね?」
最初で最後の言葉がこんな事でいいのか悩ましいが、悪くはない確認だ。パフェくんの由来を噂でしか聞いたことがなかったし。
パフェくんは、目を丸くし、少し黙って、僕を見つめた後、
「いや、パフェが好きだからパフェくんって呼ばれてたんだよ」
パフェくんは無邪気な子どものようにゲラゲラ笑う。初めてパフェくんを見てから、今まで一度も見たことのない表情で、この人も同じ人間なんだと、漠然と思った。
読んでいただき、ありがとうございました!
書きたいものとは少し変わってしまいましたが、気が向いたら長編にして書き直してもいいかもというくらい気に入っているので、これはこれで良し!




