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DoomsDay  作者: 文乃絢千
17/56

17.優しさ

 才華は息を切らしながら大田の後ろを走っている。大田は後ろを振り返ると、走るのを止めた。腕時計を見ながら才華のもとへ歩み寄った。


「歩こうか」


「はい」


「疲れた?」


「はい」


 才華は座りたい気分だった。体中が悲鳴を上げている。しかし、歩みを止めることはなかった。


「人が死ぬところを見たのは初めてか?」


「はい」


 才華は再びあの時を思い出し、気持ちが悪くなった。青白い男の顔が目の裏に焼き付いていた。才華はなるべく考えないようにと空を見た。


 空を眺めていると、才華は少し気分が良くなった。(みんなは今頃、何をしているかな?)(私は家出少女になっているんだろうな)


 才華は笑った。


「お、笑ったな」


「私、やれるのかな? 迷惑じゃないですか?」


 大田は考えた。才華は優しい子だ。だが、問題はそこにある。人を殺せるのか。この子には無理なんじゃないのか。俺は選択を誤ったのか。考えても答えは出なかった。


 大田は無言だった。


「そうですか」


 才華は落ち込んだ。私は邪魔なのかもしれないと思った。


「まぁ、まだ序盤だ。考える時間はある」


「はい」


 才華は上の空だった。


 大田は地図を眺めた。学校までかなりの距離がある。(まだ十七歳の少女だ。どうすれば良い?)(妹のことがなければ、この子は普通に学校へ通っていたはずだ)(俺が十七の時なんか鼻水を垂らしてたぜ)


 大田は悩んだ。


「才華ちゃん。スナイパーライフルの欠点が分かるか?」


「そうですね。大きくて扱いづらいとか?」


「そうだな。女性には扱いづらいかもしれないが、まず一つは連射が利かないことだ。二つ目は、近距離戦では戦いづらいってことだ」


「だが、欠点を補えばとても強い武器になる。三つ練習しよう。一つ、すぐに弾を込める。二つ、常に相手と距離を取る。三つ、風を読む。質問はあるか?」


「私、弓道部なので風読みは得意です」


「弓道部なのか? それは良い話だ。試しにあの建物の窓を狙ってみろ」


「はい」


 才華はスナイパーライフルを構えると、スコープ越しに窓を狙った。ゆっくりと引き金を引いた。タンという音とともに建物の窓が割れた。才華は急いで次の弾を込めた。


「合格だ。でも、才華ちゃんの一番の問題はメンタルだ」


「十七歳の君に人を殺すことができるのか?」


 人の命か。才華は人を殺すのが嫌だった。何を言われようとも、殺すのは嫌だった。しかし、考えを改めないと優勝するのは不可能だった。(大田さんはなぜ簡単に人を殺すんだろう? いや、大田さんも簡単ではないのかも。私には大義名分がある。だけど、そのために人を殺しても良いのだろうか?)


「大田さん、私はどうすれば良いのでしょうか?」


「俺には分からないよ。でも、才華ちゃんは優しいんだ。それは本当のことだ」


 大田は才華から目をそらした。


「ここが分かれ道だ。人を殺せないのなら家に帰るんだ」

>>登場人物

鈴木才華(すずきさいか)17歳


大田六三郎(おおたろくさぶろう)49歳


>>設定資料

L115A3。ボルトアクション式の大口径スナイパーライフル。射程距離は1,500m。弾はマグナム弾。

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