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贈り物

いつも通りの時刻に葵亥(あおい)は神社に向かった。


鳥居の前にはまだ誰もいなかったので、しばらく待つことにした。

鳥居のすぐ横の木々から落ちた枯れ葉がたまっているのをぼんやり眺めていると、菊守と導仁がやってきた。


三人で社務所まで行くと、椿嬉(つばき)が竹箒で落ち葉を掃き集めているところだった。


「あっ、すみません!掃き掃除に夢中になってしまって」


「いえいえ。急に落ち葉が増えましたね。これは全部燃やすんですか?」

集められた大量の枯れ葉を指さしながら葵亥が聞いた。


「いいえ、農家の方が肥料にするらしいです。残りは燃やします」


「それにしても、これからしばらくは掃除が大変そうですね」


葵亥が枯葉の山を見ながら言うと、椿嬉は満面の笑みを浮かべていた。


「ええ。でも、農家の方から薩摩芋をもらう事になっているんです。

それで焼き芋を作るんですよ」


「焼き芋ですか。秋らしくていいですね」


「農家の方が三日後に来られる予定ですので、その次の日に焚き火で焼き芋をするつもりです。

よろしければ皆さんも一緒に焼き芋食べますか?

お口に合うかはわかりませんけど」


「それはぜひ食べてみたいです」


菊守が言うと椿嬉は少し心配そうに付け加えた。

「ただ、焚き火で煙たいので着物に臭いがうつってしまいますけど大丈夫ですか?」


「まったく問題ないです。焼き芋は始めてなので楽しみです」

菊守は全然気にしていないという風に首を横に振った。


「そうですか。

あっ、そういえば、お二人にお渡しするものがあるんです」


そう言って椿嬉が懐から何か取り出して、葵亥と菊守に渡した。

包紙の中に何か入っている。


「開けてみてください」


葵亥が包みを開けてみると、お守りのようなものが出てきた。


「これは…」


何でしょうか?と葵亥が聞こうとすると菊守が隣でぼそりと呟いた。

「香袋」


「ええ。とってもかわいいですよね。

お二人にぴったりの刺繍を入れてもらったんです。

私のはこれです」


椿嬉は自分の香袋を二人に見せた。

その香袋は緑地に赤い椿の花の刺繍が入っていて椿嬉によく似合っていた。


葵亥は自分の香袋をよく見てみた。

桃色の地に青紫色の葵の花が刺繍してある。


横の菊守を見ると、手のひらに白地に黄色い菊の花の香袋が乗っていた。


「椿嬉殿、ありがとうございます。大切にします」

菊守はそう言って香袋をそっと懐にしまった。


「ありがとうございます」葵亥も礼を言った。


「導仁様の分は、雪姉に頼んでおきました。

ちゃんと買ってくるか分かりませんけど」


「それは楽しみにしておきます」

導仁が嬉しそうに答えたが、葵亥には雪笹が本当に導仁のために香袋を用意してくれるとは残念ながら思えなかった。


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