【超短編小説】ネックハンギング制服ファンタジー
スクリーンに映ったプロ野球選手が大きく振りかぶって白球を投げた。
シュルシュルと滑空する音が聞こえる。
しかし振り回したバットは球を捕えられなかった。
何度だって振り回す。
何度だって空振る。
「金を払ってんだ、気持ちよく打たせろよ」
気持ち良くなるのに技術が必要だなんてな。
バットを短く持って白球を待つ。
幾つか先のバッティングボックスで高校生達が遊んでいる。
学校はクソだ。
少なくとも俺の学校生活はクソだった。
俺たちは中高生だった時分に制服セックスと言う原風景を超越できなかったからだ。
それは永遠のセックスファンタジーとなって人生に立ちはだかる。
存在が認められなかった俺はチンコの皮がその学校と言うクソに縫い付けられたまま生きている様なもんだ。
シュルシュル。
金属バットを振り回す。
掠りもしない。
「青春プレイファック」
セーラー服、ローファー、紺ソックス。
放課後の部室。揺れるカーテン。
校庭から聞こえる運動部の声。
チャイムと足音の中で心臓が飛び跳ねる。
そんな春。
でもそれは逃げ水みたいに遠ざかる。
シュルシュル。
金属バットを振り回す。
かちん、と小さな音で白球が軌道を変える。
ファール。
隣のバッティングボックスで裸の女が微笑んでいる。
「これ、着て欲しいの?」
ホームベースの上にあるスクール水着。
または白いブラウスとチェックのスカート、白いルーズソックス。
夢を見ている。
「あぁ、コンプレックスなんだ」
「奇遇ね、私もよ」
「俺は存在を認められなかった」
「私にはこれしかなかった」
だが俺たちは分かり合えない。
名前も知らないインスタントなフィジカル恋愛だから何度繰り返しても助からない。
何度繰り返しても救いにならない。
シュルシュル。
金属バットを振り回す。
ガィンと音がきて白球が真下に叩きつけられる。
手が痺れる。
高校生たちのバッティングボックスが盛り上がる。
大きなビニール袋を下げてきた制服が遅いと蹴り回されている。
学校はクソだ。
蹴られた制服の愛想笑い。
見ているセーラー服の嘲笑。
周囲の大人の愛想笑い。
クソのサンドイッチ。
シュルシュル。
俺は金属バットを長く持ち直す。
ゴキン、と音がする。
学校はクソだ。
人生はさらにクソだ。
俺はクソだった。クソ以外の何者でも無かったし、これからもクソだろう。
あいつらは制服ファックをしていたのか?
俺が制服おばさんのエロ本でオナニーしてた頃に?
シュルシュル。
金属バットを振り下ろす。
ゴキン。
「いいから行けよ」
蹴り回されていた制服が逃げるようにして消えた。
「いいから脱げよ」
笑っていたセーラー服がションベンを漏らしながら泣いている。
「それでいいの?」
隣のバッティングボックスで全裸の女が俺に訊く。
「どうだっていいだろ、そんなの」
人生はクソなんだ。
夢くらいクソじゃないのを頼む。
プロ野球選手の映像は白球を投げ続ける。
球は闇に消える。
シュルシュル。
カキン!!




