姫と悪魔と魔法 ~悪魔の愛~
俺の名前はルカ。
ただの悪魔だ。
いつの頃からか、感情をもつ生物を見てきた。
そして、いつの頃からか気づいた。
“感情”の全ての根源の正体を。
それは“愛”。
俺たち悪魔が持ちえないモノ。
興味があった。
“感情”“愛”を知ってみたくなった。
ある日の夜明け、強い邪念を感じた。
俺はそこへ行った。
少年がいた。
力を欲していた。
俺は力を与えた。
“愛”を代価に。
飽きたら捨て去るつもりだった。
しばらく、“愛”はどうやったら発動するのかと歩き回っていた時だった。
闇を感じた。
闇を放つ存在を俺は見た。
愛する者の屍の傍らで、涙すら流れる暇のない少女がいた。
少女の出す闇は、今まで見てきたモノとはまるで違う。
美しい。
いわゆる夜空のような、黒真珠のような、美しい闇。
俺は“心”を揺さぶられた。
気がつくと俺は、少女に契約を持ちかけていた。
「貴女の側に、置いてください」と
俺は主君を持った。
その日の晩に、あり得ないことも言った。
「護ります」と。
しかも、“心”から。
俺はルカ・セントルイス。
ただの悪魔です。
“愛”を持ってるだけの普通の悪魔。
レバンという悪魔がいますが、ソイツは俺を
「馬鹿」
と言いました。
バカですか?俺は
いや、やっぱりバカです。
だって、こんな“気持ち”は持ったことがありません。
こんなにも何かを大切にしたことはありません。
不思議です。
この前は姫様(俺の主のことです)に求婚者が来ました。
国王と一緒になって、使者をボコボコにしました。
今思い返しても腹が立ちます。
姫様が転んでケガをなされた時は、凄く騒いで引かれました。
そんな俺は、姫様が“大好き”です。
それを自覚したのはついさっきでした。
柊から生まれた精霊のホーリーに
「ルカは本当にアリア(姫様のことです)が大好きですね」
と言われて発覚しました。
コレが“愛”なのでしょう。
ただ、この“愛”はかなり複雑のようです。
屋敷には、竜王というコもいて、俺は彼と仲良しです。
竜王のことも大好きです。
ですが…
姫様を「大好き」な愛と、竜王を「大好き」な愛は何だか違います。
竜王の時にはないものが、姫様の時にはあります。
一応存在している心臓が、何故かドキドキと脈打つのです。
何だか苦しくなります。
でも、何だか心地よいのです。
その症状は、姫様の青い瞳に見つめられた時に多くやってきます。
ドキドキの後、たまにふわふわした感じになることもあります。
気持ちがいいので治すつもりはありません。
しかし、この感情は何なのでしょうか。
国王に聞いたこともありますが、何故か笑うばかりでした。
姫様を思い返すだけで、ドキドキします。
おや、そうこうしているうちにお客様がお見えになりました。
この邪心、姫様を狙う奴らですね。
主には指一本足りとも触れさせません。
こうして俺は、お客様のお出迎えに向かいました。
俺の名前はルカ・セントルイス。
ただの悪魔です。
ただ他と違うのは、“愛”を知っている事でしょう。
あ、あと、一国の王女、アリア姫に仕えている事。
姫様を護ろうと奮闘していること。
ホラ、こんな風に。
俺の大切な姫様に触ろうとしていた手を……。
それにしても、この感情は何でしょう。
ドキドキするこの“愛”。
これは、どういう意味の“愛”なのでしょう。
誰か、教えてくださいな。
ルカが芽生えた感情に気づく日は来るのでしょうか。
気づきますよね。きっと。
皆さんの中で、ルカと似た感情をもつ方がいらっしゃるとすればそれは…
心臓病です。
精神科か内科へgo。