18.「渡りに船」殺人事件
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
山並郁夫とは、俺のこと。
俺は、『殺しの請負人』、いや『殺し屋』になる筈だった。
長い間、あちこちに『傭兵』で参加していた俺は、あるコミックを読んで『殺し屋』になることにした。
ところが、人生、思ったようにはいかない。
だが、「闇サイトハンター」になって、俺は変わった。
「影の正義の味方」になるのだ。
大文字伝子様の為に。
闇サイトは、ある程度時間開いて、閉じる。まるでモグラのように。
それに、「年中暇な」若者が引っかかる。まるで「疑似餌」に魚が飛びつくように。
超一流ハッカーの俺は、その「開いて閉じる」サイトの様子を記録するシステムを開発した。年中24時間見張っている訳にはいかないからだ。
俺は、肝を冷やした。
闇サイトで『汝の隣人を殺めたまえ。』ってのが出た時から、嫌な予感がした。
この手のは、リヴァイアサンのお得意の犯罪だが、ChotGPTを使った、闇サイトの『煽り』は、暫く無かった。EITOとの本格闘争に入ったからだ。
まさか、こんな『内職』やっているとは。
今は、『乱世』だ、隣人を殺したい奴は山ほどいる。
一昨日、SNSのやり取りで、このサイトを見て相談している奴らがいた。
本当に行動を起こすかどうか半信半疑だった。
SNSのやり取りは、ざっくり言うと、『相続関係』で揉めている隣人がいる。やり取りしている双方だ。
アリバイでも作って、「漁夫の利」を得よう。段取りはこうだ。
殺して、一番先に疑われるの親族だ。強盗だとは思わない。所謂「タンス預金」は、親族に隠しているに違い無い。預金通帳と判子は、実は足がつきやすい。キャッシュカードは暗証番号を知らないと話にならない。
特殊詐欺に引っかかり易いに違いから、さっと殺して、さっと探し出して、自宅に戻って平然としてればいい。テレビの番組予約でもしておいて、急いで早送りで把握しておけば、いざと言う時、テレビ観ていて気が付かなかったと言い訳出来る。殺し方と軍資金は既にある。失敗しても(殺し損ねても)損はない。
そして、今朝。
西東京と神奈川で同時に高齢者殺人事件発生。片方は、無理心中。片方は、認知症の妻が殺害、そんな記事が夕刊に載ろうとしていた。
俺は、もう迷う暇はなかった。
パラ・リヴァイアサンの仕業なら、伝子様のお役に立てるのだ。
警視庁に、匿名のメールを送った。
だが、内容的に俺だと気づくだろう。
神奈川県警と警視庁は仲が悪い。だから、本来連続あるいは関連した殺人事件でも、犯人が声明を上げない限り、合同捜査なんかしない。
午後7時。
ニュースで殺人事件のことが流れた。一方の事件の当事者は被疑者ではなく、被害者であることが判明した。夫人は、正気を取り戻したのだ。軽度の認知症だったので、ショックで茫然自失の時間が長かったが、事件の詳細を(呆然とするまでの記憶を)語った。
夫人の話では、フィットネスのオンラインレッスンの最中、物音がしたので夫婦で見に行ったら、賊は夫を、放り出していたネクタイで首を絞めた。
正気に返った夫人は、捜査官に強盗に入られたかも知れない、と言い出した。
駆けつけた娘夫婦の立合いの元、『虎の子』の隠し場所に現金はなかった。
鑑識は、改めて調査を開始、小庭の一部から発見した、所謂『ゲソコン』、詰まり、靴の痕跡から、隣人の靴跡と判明。『普段から言い争っていた』と言う、隣人の証言が虚偽であることが判明した。
隣人は、全てを自白した。
夫人を殺さなかったのは、大失敗だった、と呟いたそうだが、既に警察では『防犯カメラ』に隣人の下半身が映っているのを確認していた。
それを告げると、共犯の犯行も自供した。
よくやった、警視庁。よくやった、中津興信所。よくやった、俺。
伝子様は、いつか褒めてくれるかな?
まだ早い時間だったが、俺は、良い夢見たくて布団を被って眠った。
―完―