16.命の値段
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※このエピソードは、「大文字伝子の冒険375」のエピソードに関連しています。
山並郁夫とは、俺のこと。
俺は、『殺しの請負人』、いや『殺し屋』になる筈だった。
長い間、あちこちに『傭兵』で参加していた俺は、あるコミックを読んで『殺し屋』になることにした。
ところが、人生、思ったようにはいかない。
だが、「闇サイトハンター」になって、俺は変わった。
「影の正義の味方」になるのだ。
大文字伝子様の為に。
闇サイトは、ある程度時間開いて、閉じる。まるでモグラのように。
それに、「年中暇な」若者が引っかかる。まるで「疑似餌」に魚が飛びつくように。
超一流ハッカーの俺は、その「開いて閉じる」サイトの様子を記録するシステムを開発した。年中24時間見張っている訳にはいかないからだ。
あるサイトが、高額で学生アルバイトを募集した。
場所は日比谷公園。三輪バイクを使った「戦闘ゲーム」。
一日10万円。生徒手帳とお名前カード、原付の運転免許証のコピー送れば、運が良ければ『抽選』で先着50名にチャンスが巡ってくる。当選者には、誰にも内緒。防弾チョッキと三輪バイクとモデルガン、それに前金の5万円が送られる。戦闘服は、いつも着る学生服。モデルガンだから、音は鳴っても誰も気づかれない。対戦チームは、今話題の「エマージェンシーガールズ」のコスプレをしている。試合終了後は、三輪バイクとモデルガンは返さなくていい。後金の5万円は後日、振り込まれる。
俺は興奮してきた。罠だ。現役の学生を巻き込んだ罠だ。
エマージェンシーガールズのコスプレ?伝子様のチーム、詰まり、本物に違い無い。
闇サイトで募集したバイトは、「後金」は存在しないのが定番だ。
俺は、防弾チョッキと三輪バイクの購入で不審な大量購入がないか、調べた。
あった、潰れた筈の『半グレ』の会社名を使っている。しかも2つ。
日時は、あまりズレていなかった。
その元会社に一時保管して、送ったらしい。
時期は、前のダークレインボウの『幹』の闘いに割り込んだ時だ。
その時、もう手を打ってあったのか。
モデルガンと三輪バイクが返却不要?モデルガンはともかく、三輪バイクは『アシ』が付くぞ。
もっと情報がないかな?と秋葉原の通信販売を探していたら、同じ時期に防犯カメラと通信用部品を購入した奴がいる。これは個人か。
でも、怪しいな。
伝子様に、ご注進だ。現場に行ってみたいが、ケンに注意されたからな。
『死の商人』の中心グループも、密かに何かを画策しているのなら、俺は迂闊に姿を見せる訳にはいかない。その割りには姉貴に甘えに行ったりしているが。
これでよし、と。幸い、『決行日』と思しき日時には充分間に合う。
敵の「パラ・リヴァイアサン」の声明文もまだ現れてはいない。
姉貴の顔が浮かんだ。
当分、「立ち寄り」は止めよう。再会時は手土産でも持って行けば許してくれるだろう。
義理の姉とは言え、もう俺には身内は姉貴しかいないのだから。
守り切れなくても守らなくては、な。
CDプレーヤーに、好きな曲をセットする。
夜は、まだまだ長い。
―完―